六道は立ち上がると俺を指差して言い放った

「ボンゴレは僕と同じ部活に入るんです!!」
「骸、目が覚めたんだ。」
「クフフ、あれくらいなんともありませんよ。」

全然なんともないようには見えないのだが。少なくとも脳震盪を起こしてフラフラしている。
まあ、助けようとは微塵も思わないが。

「ふうん、じゃあこの際ゼロ地点突破初代エディションにすればよかったかな。」
「おやおや照れ隠しですか?そんなところも可愛…」
「俺言ったよね?六道輪廻は使用禁止だって。」

ツナが六道の耳元で何か囁く。
…チッ。
ファミリーの機密か何かだろうが、気に入らない

「あの場合仕方が無かったんですよ!いいですかボンゴレ、この男は君を呼び出してあんなことやこんなことをさせようと…!」
「妄想もいい加減にしろ」

六道が叫んだのと同時に、ツナの拳に死ぬ気の炎が燈る
ツナの背で炎は見えないのだが、おそらくそうなのだろう。

「待ってくださいボンゴレ!今回のことはボンゴレの言う非常事態に当てはまります!」
「ああ、非常事態だ。お前が六道輪廻をなんでも無い時に使ったんだからな。」
「僕の話を…!」
「聞きたくない」

ツナは有無を言わさず六道の頭を掴むと、死ぬ気の炎でどす黒いオーラを浄化した。

「ボンゴ…レ…」
力なく呟くと、六道はまた床にダイブする。
だれも受け止めることをしないため、先程と同様、頭を打ち付けたようで鈍い音がクラブハウスに響き渡った。
「すみません、骸がまた暴走したみたいで。話続けましょうか。」
にっこりと笑うツナに、スザクは開いた口がふさがらないようだった。





「なあルルーシュ。ボクシング部が無いなら作ることはできんのか?」

騒動のすぐ後にも関わらず、笹川が何事も無かったかの様にそう言った。
他の者達もさして気にしている様子は無い。それどころかいつもの事だという雰囲気まで漂っている。

「あ、ああ…部員が5人集まれば同好会として設立可能だが、この学園は皆クラブ加入者だからな。こんな中途半端な時期に集めるのは難しいんじゃないか?」

戦うツナを見るのは2度目だが、あの変わりようは何度見ても驚くものだった。
しかしそれをなんとか隠すように問いに答える。ツナのことを知らないと思われたくはない。

「ボクシングは極限なのだ!部員などすぐに集まる!」
「なあなあ、野球部も作りてーんだけど」
「そうは言っても運動の好きな生徒は既に他のクラブに所属しているからな。さすがに8人は…」
「だったら、良い考えがあるわよ。」

会長は語尾にハートが付きそうな口調で「名づけて、スポーツ同好会!」と叫んだ。

「「スポーツ同好会?」」
「そっ。野球にボクシングなど、様々なスポーツを嗜む同好会!それならあと3人でいいし、ここに居るメンバーで適当に決めちゃいなさいよ。」

万事のスポーツ同好会ならいっそ野球やボクシングに拘らず、他のスポーツクラブに入ったほうが良いんじゃないかと思ったが、この2人の意見は違ったらしい。

「おお!それは極限に良いアイディアだな!」
「俺も賛成だ!ツナと獄寺も一緒にやろうぜ!」

「おいちょっと待て!ツナは生徒会に…」

「俺?別に良いよ。獄寺君は?」
「10代目がそう仰るなら勿論自分もお供します!」

獄寺隼人!!お前はツナを生徒会に入れたかったんじゃなかったのか!?
そう叫びたい衝動をなんとか抑える。

「じゃあ後1人だな。誰か…」
「ルルーシュが良いんじゃないかな。」

思わぬ方向からの声に、一斉に視線が集まった。

「スザク!?」
「ルルーシュ運動不足だし、ちょうどいいよ、スポーツ同好会。」
「誰が運動不足だ!そんなことは無い!」
「猫追いかけて息切れしてたじゃないか。」
「あの階段では普通だろ!」
「僕は平気だったよ」
「お前は体力馬鹿だろうが!」

おかしい。普段のスザクならこんなことは言わないはずだ。
何かが…そこまで考えてはっとした。
コイツは、さっきツナを俺の補佐にしようとした様に、今度は俺とツナを同じクラブに入れようとしているのか…!

「遠慮するなルルーシュ!大歓迎だぞ!!これでスポーツ同好会結成だー!!」

最早決定事項のように宣言する笹川に今度こそ焦った。
冗談じゃない、いくらツナと一緒だからって俺はそんな同好会になど…!

「ルルさん」

断りを入れようとしたのと同時に、ツナが俺の名を呼んだ。

「すみません、迷惑なら断って構いませんから。お兄さんには俺から言っておくので…」
「あっ、いや、迷惑というわけじゃ…」
「じゃあ決定だね。」


しまった!!


「じゃあ他の部員は転入してきたばっかだし、生徒会副会長で色々分かってるルルーシュが部長ってことで良いわね?」
「俺は構わんぞ!」
「よっしゃ!早速部室とか作ろうぜ!」

俺の呟きを聞き逃さなかったスザクの言葉で、どうやら本当にスポーツ同好会への入会は決定してしまったようだ。

「いいんですか?」というツナの問いかけに、仕方なく了承の返事をする。

こうなったら、腹をくくってやる。スポーツが苦手だとかそんなことは関係ない。
これはチャンスだ。ツナと共に居る時間を増やすというのは当初の計画通り、さらに他のファミリーとも多くつながりが持てたのだ。
これを利用しない手は無い。そうだ、プラス思考だ。この関係をうまく利用してコイツ等を黒の騎士団に…

「良くありませんんんんん!!!」

またしても、世界で2番目に聞きたくない男の声が思考を妨げた。







「この男と同じクラブなんて僕は認めません!ボンゴレは僕の作るクラブに入るんですから!!」

本日2度目の奇跡の生還を果たした六道は、今度は頭から血を流しながらそう叫んだ。
どうやら打ち所が悪かったらしい。床から釘が飛び出していたようだ。後で直しておかないとナナリーが危ないなと、血を流す変態ではなくあくまで妹の心配をする。
対する六道は、傷などどうでも良いようにツナの方を向き手を伸ばした。

「さあボンゴレ!僕と一緒にSOS団を結成しましょう!!」
「SOS団?なんだそれは?」

笹川が答えたことで六道は顔をしかめる

「ボンゴレに言っているのに何故笹川了平が答えるんですか!…ふん、まあ良いでしょう。
 この崇高な団体は君の様なボクシング馬鹿には分からないでしょうから教えてあげます。
 SOS団とは、沢田綱吉にお願いされたい団、略してSOS団です!!」

周りの温度が下がったのは言うまでも無かった。本人は全く気づいて居ないようだが。

「団長は僕、副団長もとい妻がボンゴレ、後は犬と千種とクロームです!」
「骸様、俺達が入ってるのが前提条件なんですか」
「勿論です!嬉しいでしょう、もっと喜んで構いませんよ」
「骸しゃん、俺食べる専門でクッキングクラブとかがいいびょん」
「ちなみに拒否権はありません。5人揃わないといけないんですから。」

なんともいえない雰囲気が漂う。
殆ど全員が、可哀想なものを見るような目で六道を見つめた

「さあボンゴレ!設立記念に『お願い』と言ってもらえませんか?ピンクの帽子を被ったうさぎみたいに首もかしげて!」
「骸…」
「ああでもルルーシュ・ランペルージに見られるのは癪ですね。会長さん、悪いんですが今すぐ部室を用意してくれませんか?」
「3倍ボム!!」

一瞬の間に六道の周囲がダイナマイトで埋め尽くされていた。

大量の出血と2度に渡るツナの攻撃で判断力も戦闘力もかなり削られていたらしい六道はそれに気づかず、爆発音と共に真っ黒な姿となりまたしても床に頭をぶつけた。

「ありがとう獄寺君。」
「右腕として当然のことをしたまでです。」
「…まあ、とにかく4人はクラブ決めちゃってくれる?それと獄寺君、壊れたとこなおしておくように。」

会長は驚きながらも冷静に対処する。

「すみません」と言って、ツナは携帯でどこかに電話をかけた。少し話すとすぐ切って、今から業者が来るので大丈夫です、と続けた。
慣れている。こんな騒ぎも彼らには日常茶飯事の様だ。

「じゃあ城嶋君はクッキングクラブだっけ?クロームちゃんや柿本君は?」
「待ってください!!」

そう言って立ち上がったのは、言わずもがな六道だ。
3倍ボムで特徴的な髪型がチリチリになってる為、六道と判別することは難しくなっているが。

「犬も千種もクロームもSOS団の団員です!それ以外は認めません!!」
「…けどね六道君、5人居なければ同窓会としても設立できないの。沢田君は入らないみたいだし、4人じゃ…ねえ。」
「くっ!照れてるんですねボンゴレ!!なら僕は、貴方の照れが納まるまで団長として待っていましょう!」

ああなんて優しいんですかね僕って…!と身体をくねらせる六道を止められるものなど最早いなかった。

「けどね、4人じゃ設立は…」
「クフフ、僕に考えがあります。雲雀恭弥を団員にいれてあげましょう。」
「ヒバリ!?それはやめといたほうが…」
「おや、君も入りたかったんですか?残念ながらもう店員オーバーですよ。」
「いや、入りてーわけじゃねーけど…」
「そんなこといってボンゴレの『お願い』見たいんでしょう!見せませんよ!
 ああよかった、雲雀恭弥なら絶対部活動になど参加しないでしょうから、名前だけいれとけばいいですし数合わせにはぴったりです。」
「まあ…私としては全員のクラブが決まるんでそれで良いなら別に構わないんだけど…良いの?」

会長が六道ではなくツナを見て問いかける…が、そんなこと気づきもしない六道は、「勿論です!これで結成ですね!!」と意気揚々と答えた




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