最近ずっと気になっていた男の視線。 ボンゴレに当てられるそれは僕にとって不愉快でしかなかった 殺気とも恋愛感情とも違う何かが含まれているそれはボンゴレを狙ったマフィアのものか、 それともルルーシュ・ランペルージのように邪な想いのたけをせめて視線にこめようとしたものなのか判断が付かなかったが、 ボンゴレを盗み見ているという事実こそが万死に値する為、僕は幾度と無く相手の殺害を試みた。もちろん、ボンゴレには秘密で。 けれど追い詰めようと、相手を特定しようとするたびに、ソイツは姿をくらませる。 六道輪廻を使おうにも、相手が見つからないのでは話にならない。 視線を感じさせるような見方しかできない相手を何故捕まえられない? 何か、嫌な予感がする。 本来ならばここで守護者と相談しボンゴレを護るべきなのだろうが、生憎と僕はそんなことをする気はさらさら無かった。 ボンゴレをじっと見ている男。僕が殺さなければ気がすまない。 だから時間の許す限り、それこそボンゴレが部屋に帰るまでずっと行動を共にしていた。 ボンゴレはいつもの悪い癖が始まったくらいにしか思ってなかったが、今はその勘違いがありがたい。 さすがに同じ部屋に2人きりでいて手を出さない自信はそれこそ全く無かったので、彼が部屋に入った後から起きるまでは匣の能力で結界を張った。 起き出すころにそれを解く。そうやってボンゴレに気づかれないように彼を敵から護り、登校する時偶然を装い共に学園まで行く… それが最近は当たり前になっていて、僕はそれを悪くないと感じていた。 相変わらず視線は気に入らないが、ボンゴレといる時間が確実に増えている。 そして、彼を護っているのは僕だという優越感。 ルルーシュ・ランペルージなどではない。この僕が、ボンゴレの1番近くにいる。 そう、最初からあの男は敵ですらない。だたボンゴレの優しさを勘違いして、良いように解釈して、付け上がってるいわば寄生虫だ。 現に今、彼を護っているのは僕で、あの男は姿を見せることも無い。 姿も、だ。視線を感じるようになって直ぐ、ルルーシュ・ランペルージは学校に来なくなった。 たまに家には帰っているようだが、朝早くに出かけて帰らないこともしょっちゅうのようだ。 …このタイミングで? おかしいんじゃないか。あの男は、視線の人物と何か関係があるのではないか? そしてもう1つ僕にもたらされた情報がそれを確認に変える。 『黒の騎士団がある男を捜している』 もちろん、黒の騎士団を率いているのがルルーシュ・ランペルージだと―つまり、あの男がゼロだと決め付けた上での判断だ。 正体を隠せているつもりなのが馬鹿馬鹿しい。ゼロの出現日とあの男の欠席日を考えれば容易にわかることだ。 何故誰も気づかないのか不思議なくらいに。あの男が何をしようが僕には関係ないが、ボンゴレを巻き込むのならば話は別だ。 ルルーシュ・ランペルージと視線の人物は関係者。 いくら鈍いと言ってもボンゴレはいくつもの死線を潜り抜けているし、家庭教師はあのアルコバレーノ。 そのボンゴレが気づかない視線にルルーシュ・ランペルージが気づくわけが無い。 ゼロとして何度か死線を潜り抜けてるとしても、場数が違う。 なのにこのタイミングで特定の人物を探し出すと言うことは、ルルーシュ・ランペルージが、いやゼロかもしれないがそんなことはどちらでもいい。 とにかくあの男がなにか馬鹿なことをして視線の人物の怒りを買い、ソイツがボンゴレを利用してルルーシュ・ランペルージに何かしようとしていると考えるべきだ。 ムカつく。そんな言葉では収まりきらない。 殺してやりたい ボンゴレを危険な目にあわせるあの男を。邪な想いでボンゴレを見ているあの男を!! だけどそんなことをしてはボンゴレの傍にいられなくなる。 憎しみで一生恨まれるのも悪くは無い。憎しみという感情は、愛情よりもずっと心に残るのだから。 だけどその憎しみがあの男の為に生まれるなんて死んでもごめんだ。 僕のことを考えるたびにあの男への想いが多かれ少なかれボンゴレの中に生まれるなんて冗談じゃない。 そんな時だった。 ある日突然、その視線は消えてなくなった。 そして、ルルーシュ・ランペルージが学園に戻ってきた。 嘘だ、と思った。 僕が倒せなかった人物を、あの男は倒したのか? 傍にいることでなく、離れて行動することでボンゴレの身を守ったと言うのか? 信じない。信じられるわけが無い。 だけど視線を感じなくなったことは確かな事実で、傍にいる理由を失った僕は久しぶりにSOS団の部室に篭った。 1人になりたかった。考えることが山ほどあった。 ルルーシュ・ランペルージは何者なのか。視線の人物をどうやって倒したのか。 ゼロとルーシュ・ランペルージを結びつける徹底的な証拠は。 いや、結びつけてどうなる。ゼロは世間一般では正義の味方と言われているが、裏では悪逆非道なことをして大勢の人間を殺しているんだとボンゴレに告げる? 馬鹿げてる。そんなことでボンゴレがあの男を見捨てるはずが無い。それを言うなら僕は、あの男よりもきっと何十倍もの人間を殺しているだろう。 多少嫌いになるくらいは効果があるかもしれないが、ゼロの行動によって救われたものがいるのは確かだ。 身近な例が生徒会…ああ、そういえばあの男は副会長だった。仲間を助けたいとでも思ったのか。その思考はボンゴレに似ていて酷く嫌な気持ちになった。 STAGE 22 Tiamo いつもの通りボンゴレが登校する少し前に寮の玄関で待ち伏せる。 視線が消えてからは毎日ではないが、偶然を装い共に登校することにしている。 何から護ると言えば、ルルーシュ・ランペルージからだ。 毎日だと想いを押し付けていると思われたら困るため、せめて2日に1回程度。それも朝だけだ。放課後は自由にしている。 笹川京子を「過去」にするまでは、無理強いはしたくない。 だが今日に限って、ボンゴレが其処を通ることは無かった いくらなんでも遅すぎると思ったのは、いつもの時間を15分ほど過ぎた辺りだった。 寝坊かもしれない。僕のキスで起こしてあげましょうか、なんて冗談めいたことを考えながらも、嫌な予感がして携帯を取り出す 登録NO.000であるボンゴレの番号に電話をかけるも、聞こえてきたのは「この電話は現在―」という機械音で、直ぐに通話を切ると寮に入って階段を駆け上がった。 「走るな」とか「危ねーな!!」と言う戯言が聞こえたが、全て無視してボンゴレの部屋を目指す。 「ボンゴレ!?いるんですか!?ボンゴレ!?」 どんなにドアの前で呼びかけても返事は無い。暗証番号をハッキングするのも面倒でドアに向かって「開け」とギアスを使ってみるが効果は無い。無機物には効果が無いようだ。 舌打ちすると、そのまま三叉槍で切り刻んだ。 「ボンゴレ!!」 いない。誰も。もぬけのからだ。 けれど荒らされた様子も無く、パジャマが綺麗に折りたたんで置いてあった。 「…まさか、」 ルルーシュ・ランペルージのところに行ったのではないかのかという考えが頭をよぎる クラブハウスに行くには正面玄関ではなく、裏門を通ったほうが近道だ。 「まさか、ボンゴレが?あの男に会いに行く?こんな朝早く、何の為に」 そんなはずはない。そうだ、きっと今日は朝練があったんだろう。笹川了平あたりはそういうのが好きそうだ。 早速確かめなければと僕はクラブハウスへと急いだ。嫌な予感は消えないままだった。 「う…うわぁぁぁ!!」 クラブハウスへ向かう途中の出来事だった。森の中からボンゴレの叫び声が響き渡り、ゾクッと背筋が凍りついた。 「ボンゴレ!!!!」 何があったんです、無事ですか、返事をしてください。 それだけが頭を支配して、とにかく体だけは前に進めると、木に囲まれた場所でボンゴレがうずくまっていた。 「ボンゴレ!!」 姿が見えたことにひとまず安心するも、僕が声をかけた途端、ボンゴレの肩が怯えたように上下した。 「む、くろ・・・?」 「大丈夫ですか?一体何が…」 できるだけ優しい声色で尋ねながら、怪我が無いか確認しようと手を伸ばす。 肩に触れそうになったとき「嫌だッ!!」 手を弾かれた。 「ボンゴレ…?」 「ぁ…ちが…おれは…」 目に涙をためながら、触れようとするものを拒絶する 「ボンゴレ…?」 もう一度手を伸ばすと、今度ははっきりと「…っやめろ!!」拒絶された。 「まさか、」 尋常でない怯え方 触れようとするもの全てを拒絶する、この状態は… 「…っ…」 無理矢理、襲われたのではないか 殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!! 「むくろ、俺、は…」 「…僕を許してくれますか?君を護れなかった、愚かな僕を…」 顔も分からぬ相手への抑えようの無い殺意と共に、同じくらい愚かな自分への嫌悪がつのる 「…!いや、だ…そんな、」 「…!!」 鈍器で頭をなぐられたような衝撃が走った。 拒絶。 「クフフ…クハハハハ!!」 笑いが漏れる。だったらもう、それでいい。 僕を恨めば良い。どうして護らなかったんだと僕を責めて。 一生僕のことを恨んでいればいい。そうすれば、君の1番は僕になる。 1番憎い、相手になろう。 「そんなこと、言う、な…俺は、俺は…!!」 「……ボンゴレ?」 「俺は京子ちゃんが好きなんだ!!」 「ツナ!!」 ボンゴレの声に被って、突然この場に似つかわしくない声が響いた 「ルル、さん…?」 ボンゴレが、あの男の名を呼ぶ声が聞こえる 「どうしたんだ!?叫び声が、聞こえて…ッ…急いで…ッ…一体…」 全速力で走ってきたのか、息も絶え絶えにルルーシュ・ランペルージは言う 殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい 「ルルさん!!」 衣擦れの音と共に、黒い影が眼下を横切る 一瞬、何が起きたのか分からなかった 「ルルさん!ナナリーが…ナナリーが!!」 「なっ…つ、ツナ!?」 ボンゴレが、あの男に抱きついた 目の前の光景がとてもじゃないが信じられなくて、僕は呆然と見たくも無い姿を見つめてしまう 「ナナリーが!攫われ…!!」 「!ナナリーが!?」 僕は触っただけで拒絶したのに、この男には自ら抱きつくのか そんなに僕よりも、この男のほうがいいのか こんなことなら、1番最初に会ったときに殺しておくべきだった 僕がこの男を直ぐに殺しておけば、こんな事にはならなかったのに 「サングラスの男に…俺、止められなくて…!!」 「サングラスの男だと!?」 視線を下に向けると、ボンゴレのうずくまっていた近くに縛られた車椅子の少女の写真が落ちていた ルルーシュ・ランペルージの首元をひっぱって後方へと投げ飛ばす 「!ルルさん!!」 「君は早く妹を助けに行きなさい。」 自分でも驚くほど、出てきた声は低かった 「!だが、ツナが…!!」 「ボンゴレは僕が護ります。これは僕の『役割』です。君のじゃない。」 そう、守護者としての役割。一生傍にいると、護ると、そう誓って認められたものだけがなれる彼の守護者の。 「ルルさん、お願いです。ナナリーを・・・!!」 「…っ、わかった。六道、ツナを…」 「そんなこと君に言われたくありません。」 ルルーシュ・ランペルージは眉を寄せるが、最もだという顔をするとボンゴレのほうを振り返り優しい声で話しかける。 「すまないツナ、俺はナナリーを探す。助けようとしてくれて本当にありがとう。あとは俺に任せてくれ。」 「ルルさん…」 苛々する。 なにが任せてくれだ。仮面をつけない君に、一体どれだけの力があるというんです。 ルルーシュ・ランペルージは写真を拾うと校舎のほうへ走り出した ボンゴレはじっとその方向を見つめている 苛々する 「どうしてです?」 地を這うような声にボンゴレが振り向く ああ、怯えられるのも悪くは無い そんなことを考える僕はもう狂ってるのだろうか 「そんなにあの男がいいですか?」 「む、くろ…?」 「僕の気持ちを知っていながらずっと知らないふりを決め込んできた君が。あの男に恋ですか?冗談じゃない。笑い話にもなりませんよ。」 ボンゴレの瞳が揺れた。体は震え、涙が零れ落ちて地面にしみを作る。 ああ、やっぱり悪くない。 「むくろ、おれは、きょうこちゃんが、」 ボンゴレを睨みつける 一瞬びくつくも、決心したように声を張り上げた 「きょうこちゃんが、すきなんだ」 「笹川京子?ルルーシュ・ランペルージの間違いじゃなく?」 「む、くろ・・・?」 「今更信じられるわけ無いでしょう?」 ボンゴレの腕を掴み、そのまま乱暴に地面に叩きつける 「っ・・・!?」 何が起きたのか分かっていない状態のまま、両手を拘束し頭の上で一まとめにする 「…っ!」 きつく締め上げると、痛みから小さな呻き声が漏れる ああ、悪くない 「愛してます」 僕の下で怯えたように体を震わす 「好きです。愛してます。」 「っ!いやだ!ききたくない!!」 「そういうと思いましたよ…」 暴れだすボンゴレに乱暴に口付ける 「っ!…っ!!」 右手は拘束するのに使っているため、左手だけを制服の中に進入させる さっきまでとは違う意味で彼の身体が跳ねた ああ、本当に悪くない 「…っ…ふっ…」 息が苦しくなったのか、酸素を求めるためうっすらと開いた唇に舌を滑り込ませ 「…!っん…!…っ…!!」 必死に逃げ惑うそれをいとも簡単に捕まえるとねっとりと絡ませる 「…!?っ…!ふっ…!!」 今、ボンゴレは僕の腕のなかにいる …!? 突然、浮遊感に襲われる。少し遅れて、腹部への痛み 油断していたのだろう、僕の身体は勢い良く空中に吹き飛ばされる 視界の隅で、透き通るようなオレンジ色の炎が見えた 死ぬ気丸は飲み込めなかったはずだ 自力でハイパーモードになるほど、僕のキスは嫌でしたか 長い片想いもこれで終わりか 嫌われるならいっそ、殺してしまえばよかった 君を僕のものにするには、もうそれしかないんでしょう 様々な思いを巡らせながら、僕はゆっくりと堕ちていった |