リフレインという薬物が蔓延しているらしいという情報が入ったのは、ごく最近のことだった。 「マフィアが関わってるなら放ってはおけねーぞ。ちょうどそっちにいるお前達がなんとかしろ。」 今は遠くにいる家庭教師によると、どうやら薬を流しているのはここ数年で急激に力を付けたボンゴレとは非同盟関係の…むしろ敵対しているファミリーらしい。 「昔に戻った気になる、か…」 売れそうだと思った。 だって俺はこんなにも、あのころに戻りたいと思ってるのだから。 STAGE 8 リフレイン 放課後、学園を出て疎開のできるだけ人の多い場所を探して歩いていた。 ボンゴレの情報網を使ってもリフレインの密売所は分からなかったため、実際に外に出て情報を集めることにしたのだ。 むしろこういうことは権力を使って調べるよりも、現地でそれっぽい人物を見張るほうが結果が出ることが多い。 本当はゲットーに行く方が情報が手に入りやすいが、それは獄寺君や骸にかなりきつく止められてしまった。 思わずため息が出る。 2人の気持ちがわからないわけじゃない。 心配してくれるのは嬉しいし、ボスである俺が倒れたらまずいから、危険にさらす可能性を少しでも低くしようという気持ちもわかる。 だけど、俺だってみんなを守りたい。危険なことがあるなら、みんなで乗り越えて生きたいのに。 それに、ゲットーの治安が悪いといっても租界に比べればという程度だ。 心配するほどのものではない。なら何故あんなにも反対されてしまったのか。 ゲットーを見ると昔住んでいたあの場所を、イヤでも思い出してしまうから? …ダメだ、こんなんじゃ。仕事に支障が出るような精神状態だと思わせてしまうなんて。 7年もたった今、エリア11に―日本に戻ってきた意味がなくなってしまう。 とにかく、今は麻薬の密売場所を特定しなければ。 そう思って疎開の日本人が多く働いているという公園に向かった時だった。 「ルルさん?」 公園のすぐ近くのベンチに、よく知る人物が腰掛けていた。 「ツナか。どうしたんだ?買い物か?」 「はい、ルルさんは…」 そこまで言って、言葉を失う。 「ルルさん、頬どうしたんですか!?」 「ちょっと喧嘩して。」 頬を押さえるルルさんは、喧嘩したというのに怒っている様子は無かった。 誰かに絡まれたということでは無さそうだ。 「少し待ってて下さい」 本当は水道が良かったが、この辺りにあるか分からない為ベンチの前にあった噴水でハンカチを濡らしてルルさんの隣に座る。 そのまま赤くなっている部分にハンカチを当てると、ルルさんが驚いたように俺を見た。 「すみません、水道があれば良かったんですけど…」 「っいや、それは別にかまわないんだが…」 心なしルルさんの顔が赤いような気がする。 「もしかして、喧嘩の相手って女の子ですか?」 「っえ?ああ、そうだが…」 やっぱりそうだ。なら顔が赤い理由も説明が付く。 「ちゃんと仲直りしなきゃダメですよ。彼女さんも今頃きっと後悔…」 「ちょっと待て!彼女じゃない!!」 「え?すみません俺てっきり…」 彼女と喧嘩したというのが恥ずかしいのか、はたまた喧嘩の理由が恥ずかしいのか。 どの道ルルさんが彼女と喧嘩したものだとばかり思っていたから、そうでない事実に驚いた。 どうやらルルさんの片想いらしい。 「…告白しないんですか?」 「だから違う!!相手にそういう感情は持っていない!!」 普段のルルさんのイメージとは違う、必死に否定する姿に本気で好きなんだなと感じる。 だって、それはきっと照れ隠し。 「…いいなぁ」 「…?何か言ったか?」 「!いいえ、、あ、ハンカチ温くなっちゃったんで濡らしてきますね!」 誤魔化す様に立ち上がると、ルルさんに背を向けて噴水まで走る。 無意識だった。声に出したつもりはなかった。 だけど純粋に、羨ましいと思ってしまった。 好きな人が、すぐ傍にいるルルさんが。 「っ…」 想い浮かぶのは、たった一人の大切な女の子。 それを振り切るように頭を横に振ると、ハンカチを濡らして絞る。 ダメだ、泣くな。ルルさんに、心配はかけたくない。 何度か深呼吸をして気分を落ち着かせると、笑顔を作ってベンチへと戻った。 「遅くなってすみません。」 「いや…ツナ?」 「俺、そろそろ行きますね。ハンカチ使ってください。」 「!まっ…!」 静止の声を、聞こえないふりをして走った。 これ以上いたらばれてしまう。直感でそう思った。 この前、桜の木のことで迷惑をかけたばかりなのに。 「京子ちゃんっ…」 頭に浮かぶ愛しい笑顔は、いつまでも褪せること無く、またいつまでも少女のままだった 「…こんなに引き連れなくても、僕一人で充分なんだけど」 不機嫌さを隠そうともせずに雲雀さんが言う 「まあそう言わずに…みんなで行けってリボーンの命令なんですよ」 疎開とゲットーの狭間に位置する倉庫街で、リフレインの販売は行われていた。 人気の無いこの場所はまさにそういうことをするにはうってつけで 売買が行われている倉庫はまるで何事もないように夜の静かな街に溶け込んでいる…はずだった 「…ねえ、なんなのあれは」 雲雀さんの言い分は最もだ。 倉庫から、なにやら音が聞こえてくる。 カタンといった可愛らしいものじゃなく、明らかに銃声や爆発音だ。 「警察か?」 「だとしたらやばくねーか?リング持ってない警察が敵うわけ…」 完全なイレギュラーだ。もし警察だとしたら俺達の姿を見られるのは得策ではない。だからと言って、放っておいたらやられてしまう。 「赤ん坊は片付けろって言ってるんでしょ。」 「ですが僕達の顔を見られるのはまずいですよ。クフフ、どうしますか?ボンゴレ」 「…私利私欲で協力していた奴等は警察に任せて、俺達は主犯のファミリーを狙う。奴等さえ復讐者に差し出せば、あとは警察の仕事だからむしろ手間が省ける。」 そう言うと納得したようにファミリーが散らばっていく。 皆、戦闘体制に入ったのだ 息を吸い込む 死ぬ気丸を飲んで、炎を一点に集めた 「突入!!」 まず始めに目についたのは、テレビで何度も見た黒い服。 次に見えたのは、ナイトポリスと戦う赤いナイトメアで。 明らかに薬を庇っているナイトポリスと、それに立ち向かう黒の騎士団では、どちらが敵かは明らかだった。 『どうしますか?10代目』 無線から獄寺の声がする。 全員別々の場所から入ったために、連絡手段は此れだけだった 「目的は変わらない。続行だ」 『了解です!』 無線が切れると同時に、一番奥の扉を突き破る 飛び散る破片とともに、跳ねた銀髪が目に入った 「いらっしゃい。よくここが解ったね、沢田綱吉クン。」 ミルフィオーレホワイトスペル、そしてボスの座についている人物 「…白蘭。」 「あれ?僕の名前知ってたんだ?」 それは光栄だなと言う素振りは、全くそうは思ってはいないようだった 「まさか本人がいるとは思わなかったがな。」 「それはお互い様でしょ?で、何の様かな?ボンゴレ10代目?」 「解ってるだろ?」 「全然。」 白蘭はニコニコと笑いながらマシュマロを食べている こちらはいつでも攻撃できる状態だというのに、焦る様子も無くむしろそれがどうしたという感じだ 「ボンゴレ10代目として、リフレインをばら蒔くお前を排除する」 拳に炎を宿す しかし相手は匣を出すどころか、リングに炎を灯そうともしなかった 「本当に君はボンゴレ10代目としてここに来たの?」 「…何が言いたい」 「自分と同じ、イレヴンを救いにきたとかじゃなくて?ああ、それとも…」 あらかじめ用意してあったかのように、懐からビンを取り出す 白蘭は、酷く楽しそうだった 「君もこれが欲しいとか?」 掲げられたのは、リフレイン 「ふざけるのもいい加減に…」 「沢田綱吉クンはさ、どうしてボンゴレ10代目になったの?」 まるで世間話でもするように、マシュマロを食べながら白蘭は続ける 「僕が調べた限りでは、君は随分とマフィアになるのを嫌がってたようだけど?」 心臓が嫌な音を立てる 「それがあるときから急に進んで後継者になろうとしたとか。そう、7年前にね。」 鼓動が大きくなっていく。 白蘭の声と、心臓の音しか聞こえないほどに。 「7年前って行ったら、ちょうどブリタニアが日本に侵略してきた時期だよね。 けどおかしいな。 日本がエリア11となったのと、君が後継者になると決めた時期には少しズレがある。 そう、ボンゴレ10代目になると決めたのは君の大切な―」 「やめろっ!!」 弱くなっていた炎を拳に集中させて白蘭に襲い掛かった。 やめろ、やめろ、やめろ!! それ以上は聞きたくない!! 「君さ、本当はマフィアなんてやりたくないんでしょ?」 「そんなこと…!」 「なのに今こうしているのは何故か。答えは簡単。贖罪だ。今更そんなこと、意味ないってわかってるのに。」 「っ…!!」 意味が無い、その言葉が重くのしかかる。 「“あの時”大切な人を死なせてしまったから。“あの時”護れなかったから。違う?」 俺のやっていることは全て自己満足で。そんなことしても彼女が喜ぶはず無いって、わかってるのに。 「戻りたくない?“あの時”をやり直したくない?僕なら出来るよ。君を過去に飛ばすことができる。」 再び眼前に差し出されたのは、リフレイン 違うのは、それを欲しいと思っている自分 「過去を、やり直せる…?」 「うん。君が望む時間に。幸せな“あの頃”に。戻ってからやり直せば良い。今度は守りたかったあの子を守れるよ。」 嘘だ。リフレインは過去に戻った気分になるだけ。 実際に過去にいけるわけじゃない。やり直せるわけじゃない。わかってる。 だけど 体が熱くなる。戻りたい。幸せだった、あのころに。 白蘭がビンを差し出す。手が震えた。少し伸ばせば、それを手にすることができる。 『ツナくん』 …っ!! 音を立ててビンが割れる。 白蘭はつまらなそうに目を細めた。 「いらないの?つまらないな」 「…っ!俺は、薬に逃げたりしない!!」 逃げるなんて、逃げる資格なんて俺には無い。 嫌気が刺す。 敵の言葉にのせられて、目的を見失ったことに。 そして何より、逃げようとした俺自身に。 あの時俺はマフィアになることを選んだ 彼女を守れなかった分、ファミリーのみんなを守ろうとした。 血に濡れた道を進むと決めた。それが彼女を守れなかった俺が負うべき罪だと思ったから。 それなのに、俺は今何をした? 「っ…俺には逃げる資格なんて無い。だから…!」 睨むように白蘭を見据える。 「白蘭、お前を倒す!」 「やれやれ。無傷でボンゴレリングを手に入れたかったんだけどね。」 仕方なさそうに、白蘭は匣を取り出した。 ボンゴレファミリーが戦闘中の倉庫より、少し離れた一角― 「母親、だったのか…」 ナイトポリスを倒し、真っ先に女性に駆け寄るカレンを見て、ゼロはそう呟いた。 仮面の下に隠れて表情を伺うことはできないが、その声からは悲哀を感じとることができる。 皆がカレンをそっと見つめる中、扇の声がそれを打ち壊した。 「ゼロ!!」 「どうした?」 「リフレインの流通ルートがわかったんだよ!こいつらはただの販売員!薬を流してたのはマフィアで、今奥の倉庫に来てるらしい!!」 「何!?」 ゼロ地点突破、初代エディション!! 白蘭めがけて技を発動させる。だが致命傷を与えるには至らない。 それどころか本人に当たることもなく、地面と近くにあったマシュマロとリフレインを凍らせるだけに終わってしまった。 「これでおしまい?たいしたこと無いね、君。」 「っ、まだだ!!」 「いつまでも付き合う気は無いよ。ボンゴレリングにしか用は無いからね。」 白蘭はマーレリングに炎を灯すと匣を邂逅する 刹那、匣兵器がまっすぐに向かってきた 「バイバイ」 「くっ!」 なんとかそれを避けるが、腕を掠ってしまい血が噴き出した 赤い血が手を染める 「利き腕だね、痛いんじゃない?」 「この位っ…」 多量の出血はまずいと傷口を押さえようとする。 だが、ぬるっという感覚に、思わず手を離してしまった。 手のひらが、赤く赤く染まっていく。 「っ…!!」 脳裏に、あの子の姿が浮かぶ 血だらけで倒れている、変わり果てた彼女の姿が。 「どうしたの?顔が真っ青だよ?」 やめろやめろやめろ違うそんな、違う!!! いやだいやだ死なないで俺が守るんだ守りたかったんだなのになんで俺は俺のせいで 「…ぐあっ!!」 次に感じたのは衝撃だった。 体に、腕に、足に、匣兵器が襲い掛かってくる。 「油断大敵。敵の前でそんな無防備になっていいと思ってるの?」 熱い。全身が熱かった。痛みが感じられないほどに。 白蘭は俺の髪の毛を掴んで持ち上げると匣兵器を向ける。 まずい、と本能がそう告げる この距離でくらったら、おそらく助からないだろう。 「っ…」 「さよな「待てっ!!」 刹那、第三者の声が白蘭の言葉をさえぎった。 「ボンゴレファミリーじゃなさそうだね、君は…」 視線を向けた先には、テレビで何度も見たゼロの姿があった。 だめだ、こんなとこにきては。黒の騎士団に人たちがこれないように何か対策をしておくんだった。 逃げろ、リングを持たない人間が敵う筈が無い。 伝えたいことは山ほどあるのに、言葉にならず喉の奥に消えていく。思ったより、傷が深い。 「その男を放せ!!!!」 「ダメだ、逃げっ…!!」 なんとか力を振り絞って叫ぶ。 離せといって離すわけないことなどゼロもわかっているはずだ。 だが、そんな考えとは裏腹に、白蘭は手を離した。 「…え?」 突如離された体は重力にしたがって崩れ落ちる。 床に叩きつけられると頭の片隅で考えるが、ゼロが受け止めてくれたようでそれは間逃れた。 「大丈夫か?…くそっ!血だらけではないか!!」 ゼロはマントを脱ぐと、俺の体に巻きつける。 「今救護班を呼ぶ!だからっ…」 「どうして…」 「喋るな!!」 白蘭が、ゼロの言うことを聞いた? それに何故、ゼロはこんなにも俺のことを心配しているのだろう。 「…なにをやってるのかな?二人で」 突如、酷く冷たい声が部屋に響いた。 「どういうことかな?いつの間にか世間で噂のゼロはきてるし、掴んでたはずのボンゴレ10代目は取られちゃってるし。」 「くっ!!」 「…え?」 どういうことだ? 自分で離したにも関わらず、白蘭は不可解だというように佇んでいる 何かが変だ 「どんな手品を使ったの?それとも匣の能力かな。だとしたら、かなりのレア物には違いないね」 「匣、だと…?」 「違うの?まあいいよ。君もボンゴレ10代目も殺すことに代わりはないから」 再び匣が向けられる 「っ…!」 ゼロが俺を守るように、抱いている腕に力を込めた …どうして、そんなにも俺を守ろうとするの? わからない。ただひとつわかるのは、俺のせいでゼロが殺されそうだということ。 駄目だ 死なせない もう、誰も!! 「バイバイ」 言うと同時に匣兵器が放たれる ゼロが息を呑むのがわかった 俺がやるべきことは、ただひとつ 視界が霧で覆われる 身体中が悲鳴をあげる だけど足は踏ん張って、なんとか倒れないようにする ゼロが巻いてくれたマントが落ちた 「ツナ!?」 ゼロが何か叫んでいる けれど、言葉までは読み取れなかった 「…ゼロ地点突破改。まだそんなこと出来る力が残ってたとはね」 視界が霞む。血を流しすぎた。 だけど、倒れるわけには行かない。 「カレン!今すぐ奥の「呼ぶな!!」 仲間を呼ぼうとするゼロの声を遮る 「普通の人間じゃ敵わない。ナイトメアでも無理だ」 「だがこのままではお前が…!!」 あくまで俺の心配をするゼロに、状況に合わない暖かな感情が生まれる 「ありがとうゼロ。けど大丈夫だ。」 「馬鹿!その傷のどこが…!!」 「大丈夫。だから誰もここには近づけさせるな。」 すっと白蘭に視線を送る 「その方がお前も都合がいいだろ?」 「別に君を殺したあとにみんな始末する予定だからどうでもいいよ。けどそんな身体でまともに戦えるの?それともゼロが結構な戦力になるとでも?」 「答える義務は無いな」 額に炎を灯す もう殆んど力は残ってない。攻撃出来るとしたら、きっとこれが最後の一撃。 …本当は、まだ使いたくなかった 未完成な技を使うのは相応のリスクを伴う 不発かもしれないし、相手にダメージを与えられないかもしれない けれど今白蘭に勝てるとしたらこれしかない 炎を集めた 右手には剛の炎 左手には柔の炎を 「最後の足掻き?」 「最後かどうかは、お前の目で確かめるんだな」 白蘭は匣を手にとる リングに死ぬ気の炎が灯った 今だ!! 地面を蹴って、右手を奴に向けると思い切り炎を放った X−BURNER!! 剛の炎の勢いで身体が吹き飛ばされそうになる それを左手から出す柔の炎で支えるのがX−BURNERの完成形。 だが、それをするのはまだ炎の分量が掴めてない。 さらに今の負傷した状態では満足に力を出すことができない。 案の定柔の炎が足りなかったらしく、後ろの壁に叩きつけられた。 だけど同時に、白蘭が倒れるのが目に入る。 「カハッ…」 「ツっ…沢田!!」 ゼロが焦って駆け寄る 「馬鹿!この傷で戦うなど…!!」 「ゼロ…白蘭は?」 「…暫くは起きないだろう。それより、早く手当てを…!!」 突如、もう壊れているドアを開けるものがいた。 復讐者だ。まるで見計らったかのようなタイミングに、ゼロが警戒して俺の前に立つ。 「誰だっ!!」 「ゼロ…この人たちは…敵じゃない…」 味方でも無いけれど。 復讐者は白蘭を鎖で縛ると、俺達を気にすること無く連れて出ていった 「今のは…法で裁けない罪人を裁くマフィアの番人みたいなものだから… 連れて行かれたら戻ってこない。だから白蘭を警察や軍に引き渡すのは無理なんだ…」 「そんなことはどうでもいいから喋るな!くそっ!何故いつまでも救護班がこない!!」 きっと状況に気付いたファミリーの誰かが、戦いに巻き込まれないよう結界を張ったんだろう 「俺なら、大丈夫…」 「そんなわけ無いだろ!!」 「本当に…」 『10代目!ここにいたミルフィオーレの奴等は全員片付けました!!』 突如無線から連絡が入った 作戦完了、ということになる ゼロに視線を送ってから獄寺君に応える 「こっちも終わったよ…。」 『さすが10代目!白蘭なんか敵じゃないっすね!!』 「いや実は結構やられちゃ、っ…動けない、んだ…悪いんだけど、お兄さん、呼んで…」 『今すぐ参ります!!』 それを最後に無線は切れてしまった。 獄寺君じゃなくて、晴れの属性で回復術を使えるお兄さん呼んできて欲しかったんだけど… 「仲間が来るのか?」 「うん…」 「そうか…」 「ならそれまでの応急処置だ」と、ゼロはスカーフをとって傷の深い俺の腕に巻いていく 先程落としたマントを拾って床に敷き、その上に寝転がらされた 「どうして、俺を、かばった…?手当てまで…ゼロ、君は…」 「それはお互い様だろう。実際は助けに来たつもりの私が守られてしまった。手当てはその礼だ。」 …本当にそうなんだろうか。 何度も俺を庇うように立つ姿は、お礼なんかではなく、もっと純粋な何かを感じた 「…じゃあ、なんで助けに来た?」 「…頼みがあるからだ、ボンゴレ10代目である君に。」 「頼、み…?」 「ああ。君には、黒の騎士団に入ってもらいたい。」 その言葉に、少なからず驚いた。 「でも俺は、日本人じゃ…」 「人種は関係無い。だが気にするというなら、国籍がイタリアというだけで君に流れる血は日本のものだと言っておこうか。」 「…よく調べてあるな」 「仲間にする者のことだ。知りたいと思うのは当然だろう?」 まるで入団が決定しているかのようにゼロは言う。 「俺の意見は無視か…?」 「君にも悪い話じゃないだろう。私と君が力をあわせれば、ブリタニアから日本を取り戻すことができる。」 「…俺、は「10代目ー!!」」 第三者の声が部屋に響く 獄寺君は横たわる俺と傍にいるゼロを見ると表情を一変させた 「てめえ!!10代目から離れやがれ!!」 獄寺君が素早くダイナマイトを構える 「違うんだ、獄寺君。ゼロには助けてもらったから。」 「うむ。これで大丈夫だぞ」 「ありがとうございます」 お兄さんに晴れの炎で回復力を活性化してもらう まだ動くことは出来ないが、明日には何事も無かったように治るだろう 「気にするな。それより…」 お兄さんは立ち上がり、ゼロの方を向いた 「沢田を助けてくれたんだってな。極限に礼を言うぞ、ゼロ!」 「いや、私はむしろ足手まといになってしまったようだ。礼を言うのは此方のほうだろう」 「だが手当てもしてくれたようだしな。とにかく礼は有りがたく受け取っておけ!」 「…そうさせて貰おう」 「うむ。では帰るぞ沢田!!」 ひょいっと身体を横抱きにされる。 「重ね重ねすみません…」 動けないため、帰る手段は連れていってもらう他ない 「この位なんともないぞ?タコ頭が見たら自分がやると言い出しそうだがな。」 「ははは…」 「沢田綱吉!先程の話、いい返事を期待している」 ゼロの声に、お兄さんの足が止まる。 なんの話だ?という視線に誤魔化すよう微笑んだ 「…ゼロ。悪いけど、それを受けることは出来ない」 「理由は?」 理由。頭にあ彼女の姿が浮かんで、無意識にお兄さんの裾をぎゅっと掴んだ 「俺は…騎士にはなれないから」 そう言うと、お兄さんが悲しそうな顔をした (ごめんなさい、ごめんなさい) 「10代目!!」 霧のカモフラージュの中から獄寺君が出てくる。みんな外で待っていてくれた様だった。 「大丈夫ですか!?」 「うん。直ぐ動けるようになるよ」 「そうですか」 安心したように獄寺君が息を吐く 心配してくれたことに嬉しくなるが、まだ仕事中だと気付き気を引きしめた 「状況は?どうなった?」 「ミルフィオーレの奴等は一人残らず復讐者に引き渡しました。それ以外の協力者は黒の騎士団が軍に引き渡す様です。」 「わかった。そっちの対応は彼等に任せる」 「ですが10代目、それでは手柄が奴等に…」 「いいよ、元々そういうことのためにしたんじゃないし。それに俺達は表舞台に出れないんだから」 キッパリとそう言うと、獄寺君はわかりましたと引き下がった 「それと中毒状態の患者が何人か倉庫に残っていたようで、全員黒の騎士団が保護するみたいっす」 「中毒患者…!?」 そういう人がいるだろうことは予想がついていた だけど実際にそれを聞くと、ずしりと心が重くなる 「俺達がもっと早く対応出来てれば…」 中毒状態までは避けられたかもしれない。 そう思うと申し訳無くて、助けられなかったことが悔しくて仕方なかった。 「薬に逃げるなんて、弱い草食動物のすることだ」 「ヒバリさん…」 「弱い奴には興味無いよ」 それだけ言うと、制服を翻して闇に消える これ以上群れる気は無いらしい 「弱い、か…」 一瞬でも俺が薬を欲したことを知ったら、雲雀さんは俺を軽蔑するだろうか それとも、やっぱりって呆れられる? 「…沢田」 「何ですか?お兄さん」 「お前は、まだ京子のことを…」 心臓が音をたてる 名前を聞くだけで、涙が溢れそうになるなんて 俺は返事の変わりに、精一杯の笑顔を作った ちゃんと笑えていたかは、わからないけど |