「…し。…よし…綱吉!」

ぐらぐらと身体を揺さぶられる
目を開けなくちゃと思うけど眠気には勝てなかった

「…あと5分…」
「駄目だ。」
「…Zzz」
「起きろ!!」
「うわあ!」
布団をひっぺがされて、ようやく意識が覚醒する

「全く、綱吉は寝起きが悪いんだな」
「……おはよう、L.L.…」
やけに綺麗な人がいると思ったら、昨日俺が呼び寄せてしまったL.L.だった
獄寺君といい山本といい、なんで俺の周りは美形ばっかなんだろ…

「早く着替えて降りて来い。ご飯できてるぞ」
「うん………って、L.L.!?」
「なんだ?」
「その…服は…?」
「ああ、今日から同じクラスだ。よろしくな?」
「無理あるからー!!!」


標的6 恋


「どういうことだよリボーン!!」

急いで着替えてダイニングへと入る
もうみんな揃っていて、L.L.は母さんの手伝いをしていた。
エプロンもナチュラルに着こなしてる…じゃなくて!!

「手続きは昨日のうちに済ませといたぞ。」
「そういう問題じゃなくて!無理あるだろ!!」
「何がだ?」
「どー見ても高校生だろ!!」

L.L.を指差しながら言うと、「あらあらつっくん、人を指差しちゃ駄目よ〜」なんて母さんのお叱りが飛んでくる
いや、今はそんなこと言ってる場合じゃなくて!!

「細かいこと気にすんな」
「細かくない!全然細かくない!!」

駄目だ、こいつと話していても埒が明かない

「L.L.!リボーンの言うことは気にしなくていいから、高校行きたいよな?今更中学なんて嫌だよな!?」
「いや。俺はこの世界のことは何も知らないから中学から勉強したほうがいいと思う」
「ああそっか…って!それはそうだけど!…そういえばL.L.っていくつなの?」
どう見ても中学生には見えない。どんなに若くても高校1年くらいだろう。

「外見年齢を言うなら18だ」
「それって実年齢は違うってこと?」
「ああ」
「ちなみにおいくつで…」
「秘密だ」

なっ…男のくせに!
18より若いのか老けてるのかさえわかんないじゃんかー!!

「それより、早く食べないと遅刻するぞ?」
時計を見ればもう8時を過ぎていて、急いでご飯をかき込んだ




「……」
「どうした?」
「いや、なんか、もういいや」

結局L.L.は当たり前のように俺と一緒に登校することとなった
あんなに人数が居て、どうして誰も変だと突っ込んでくれないのか…
いや、アイツ等に常識を求めるのは間違いだよな。うん、俺が悪かった。

「綱吉の制服はブレザーなんだな」
「ああ、2種類あるんだようちの学校」

L.L.はワイシャツにベストのタイプの制服を着ていた
ブレザーは1日じゃ手に入らなかったんだろう

「それより綱吉なんて呼んでたっけ?別にツナでいいけど」
そう言うとL.L.は困ったように笑った
「綱吉じゃ駄目か?」
「別に駄目じゃないけどさ。昨日はツナだったからどうしたのかと思って。」
「…それより、綱吉の母さんは料理が上手いな。」
話し逸らした…なんでそんなことするんだろう。
綱吉なんて呼びづらいと思うし、誰も呼んでないのに。

「…綱吉?」
「ツナ君!」
L.L.の声と被って、明るい女の子の声がした

「京子ちゃん!」
「おはようツナ君!」
「お、おはよう!」

京子ちゃんから話しかけてくれたー!
今日の俺ついてる!やった!

「あれ?お友達?」
京子ちゃんの視線がずれるのを感じてはっとする

「初めまして!笹川京子です」
L.L.って顔がいいから京子ちゃんまさか!!
急いで2人のほうを向くと、京子ちゃんはニコニコしていてL.L.はなぜか信じられないものを見たような顔で固まっていた

「…L.L.?」
あまりにも様子がおかしいので名前を呼ぶも効果は無い

「ささがわ…きょう、こ…?」
「はい。あの、私になにか付いてますか?」
「…あ…いや…すまない…なんでもないんだ…少し、驚いただけで…」

なんでもないようには見えない。明らかにうろたえて取り乱している。
L.L.らしくない。いや、俺がL.L.の何を知ってるって言うんだ?L.L.らしさって、なんだ?

「…L.L.だ。綱吉の家で世話になっている。長いこと外国に居たから日本のことは良くわからなくて、中学1年から勉強することになったんだ。よろしく頼む」
「こちらこそ!私、ツナ君と同じクラスなんです。L.L.君も一緒のクラスになれるといいね、ツナ君!」
「え?うん、そうだね!」

突然話題をふられて焦る
俺の馬鹿!せっかく京子ちゃんが話しかけてくれたのに…
それにしてもL.L.、凄い自然な説明だ。
変だおかしいと悩んでた俺馬鹿みたい…

「いけない!私今日日直だったんだ。ツナ君、また教室でね!」
「あっ…」
引き止める間もなく京子ちゃんは走っていってしまった
今日に限って日直なんて!!

「…綱吉は」
「え?」
「笹川京子が好きなのか?」
「なっ!ちょ、いきなり何言うんだよ!!」
突然L.L.の口からとんでも発言が飛び出して、否定しようとしてもうまく出来ない

「…やっぱり、同じなんだな」
「…L.L.?」

L.L.は見たことも無いくらい寂しそうに笑う
その笑顔に胸が痛んだ
どうしてそんな辛そうに笑うんだよ

「…同じって、“ツナ”と?」
そう言うとL.L.は目を見開いて…その後悲しそうに笑った

ああ、そうか。
俺をツナと呼ばないのは、俺がL.L.の世界の俺じゃないから。
L.L.にとってツナは、たった1人だけなんだ

昨日のL.L.を思い出す
まだ夢だと思っていた時の、幸せそうに俺を見るL.L.を

もうあんな瞳で見られることはない
だって俺は、綱吉だから


「っ…」



何故か生まれた胸の痛みに、気づかないふりをした