「ツナ、君に任務を頼みたい。」

そう言われ、驚いたのは俺だけじゃなかった。
怪我が治って、レジスタンスではなく黒の騎士団としての活動に参加してからというもの、ゼロは何かと理由をつけて俺を一度も前線に出してくれなかった。
だから、期待されてないのだと思っていた。運動神経も、頭も悪い俺は足手まといで、邪魔なんだと。
留守番ばかり任されて、それも大切な仕事だとわかってはいるけど、納得は出来なくて。
力がないから、戦力として数えてもらえないのだと、いつも泣きたいのを我慢していた。

「俺に…ですか?」
だが、言われたのは思ってもいない一言だった


「君にしか出来ない任務だ、ツナ」


その言葉に胸が高揚した
そんなことを言われて、嬉しくないはずが無い
ゼロが俺に仕事を任せてくれる。
俺を、信頼してくれている。

「詳しい話をしたい。私の部屋まで来てもらえるか?」
「はい!」
自室へと向かうゼロの背を追うと、みんな口々に「よかったな!」と言ってくれたる
作戦に参加できなくて、任されるのは誰でも出来る雑用ばかりで。
ずっと不安だったことに、みんなも気づいていたんだろう
「俺、頑張るよ!」
駆け出すような勢いで、ゼロの後を追った





「君には、私立アッシュフォード学園に生徒として潜入してもらいたい。任務内容は枢木スザクの監視及び勧誘だ」
「!スザクさんの?」
「そうだ。対象は軍に所属している。疑われない程度に軍の情報を聞き出して欲しい。それと同時に、ブリタニアに反感を持たせ、黒の騎士団に入るよう誘導するんだ。」

それは、思った以上に高度な任務だということがわかった
軍の情報なんて、簡単に話すはずが無い。それにカレンは、彼は黒の騎士団を否定しているといっていた。
そんな相手から、重要な情報を聞きだせるまでに信頼を得て、心変わりさせる。
自分が騎士団に所属しているとわかれば、即アウト。任務失敗だけでなく、命も危険にさらされる。
でも、成功すれば軍の情報だけでなく、日本最後の首相の息子というカリスマが手に入る。
そうなれば、民衆の支持を得るだけでなく、キョウトからの支援も一層増えることになるはずだ。

そんな重要な任務を任せてもらえたことに、緊張すると同時に胸が躍る
だが、一つ気になることがあった
「あの、どうして俺なんですか?アッシュフォード学園には、既にカレンがいるはずです。」
「カレンは作戦で休みがちだから、学園では病弱ということになっているらしい。そんな相手に軍やテロリストなんて物騒な話はしずらいだろう。
 それに、こういった話は同姓のほうがしやすい」
確かに。ゼロのいうことには一理あった。
「この任務は長期で行ってもらう。最初の数ヶ月は不自然じゃない程度に対象に近づき、信頼を得ることだけを考えろ。私がいいと言うまで、軍や騎士団のことは一切口にするな。」
「わかりました。」
「任務のことは忘れるくらい、学園生活を楽しんで欲しい。そのほうが相手も君が黒の騎士団だとは思わないはずだ」
「学園生活を…」

学校なんて、何年ぶりだろう。上手くできるか不安になるが、そんなことは言ってられない。
これは任務だ。出来る出来ないじゃない、やるんだ。

「必要な手続きは済んでいる。カレンもサポートにつくから心配しなくていい。」
「はい!」

渡された資料を握り締めて、返事をした


「任せてくださりありがとうございます!必ず成功させてみせます!!」

勢い良く頭を下げながらそう言うと、少しゼロの雰囲気がやわらかくなったように感じた







ツナ・スペイサー
ブリタニア人と中華連邦のハーフ。東洋系の顔立ちはそのためである。
家は中華連邦で貿易関係の仕事をしている。跡取りであるツナは、最大の貿易相手であるブリタニアのことを学ぶため単身で留学してきた

これが任務のために用意された俺の肩書きだ。
絶対に忘れないように何度も資料をチェックする。アッシュフォード学園2年に転入。
学園へはゼロが用意してくれたマンションから向かう。人間関係は円滑に。対象以外とも交流を持ち、学園に溶け込むこと。
人間関係を築く上で、友人が家に来ることもあるかもしれないから騎士団と繋がりがわかるものはなるべく持ち込まないこと。
持ち込んだ場合は金庫にしまい鍵をかけておことく。
近所の住人に怪しまれる為夜は出歩かないこと。戸締りもしっかりすること。
任務中は他の作戦は団員に任せ、自分は任務に専念すること。報告は週一でレポートにまとめゼロに提出。
何かあった場合は直ぐにゼロの端末に連絡すること。

大丈夫だ。何度も見直して、設定も注意事項もばっちり頭に入っている。
偽造されたIDカードもちゃんとある。
与えられた部屋を見回すと軽くめまいがした。
疎開では一般的なマンションなのだろうが、自分の家と比べて立派過ぎるのだ。
広くて綺麗な部屋、調度品。制服のほかにも、服や生活用品など全て完璧にそろえられている。
ゲットーのアパートとは大違いだ。
だが、ブリタニア人ンにはこれが普通なのだろう。こうじゃないとおかしくて、不振がられる。
改めて格差を思い知らされて、嫌な気持ちになる。でも凹んでなんていられない。俺達が、変えていけば良いのだから。
それよりも、転入や生活の手配にはきっと凄い手間とお金がかかったことだろう。
ここまでするんだから、これは俺の考えている以上にく重要な任務なのかもしれない。
ますます気合が入る。絶対に、絶対に成功させるんだ!!

スザクさんを騙すことに、抵抗がないわけじゃない。
罪悪感だって感じる。だけど、それ以上に、ゼロの期待に応えたいという気持ちが俺の心を占めていた。
そして、スザクさんと話せることの嬉しさ。
俺が沢田綱吉だと知られるわけにはいかないから、ルルーシュとナナリーの話をすることはできないけれど。
それでも二人の友達だった彼と話せるのは嬉しかった