ナイトオブセブン、枢木卿が復学したと聞いたのは3日前のことだった。 骸たちのクラスにそんな凄い人が…迷惑をかけて無いと良い。無礼なことをしたらと思うと怖すぎる。 骸は興味なさそうにしていたからまだいい。心配なのは了平さんとヒバリさんだ。 了平さんは枢木卿の運動神経を見込んで同好会に入部させたいと言ってるし、ヒバリさんは風紀委員の座を奪うなら咬み殺すと言っていた。 なんでも以前の風紀委員は枢木卿だったらしい。 もしそんなことになったら…ブリタニアに刃向かったとして俺達全員死刑かもしれない。 怖い。怖すぎる。とりあえず了平さんに枢木卿の入部は諦めてもらってなるべく関わらないようにしよう。 何故だか俺はゼロを捕まえたという枢木卿に、いい印象が持てないでいた。 それから3日。今日は生徒会主催の枢木卿歓迎会だ。 開催が決まってからほとんど時間が無かったのにどのクラブの出し物も大掛かりなものばかりで、獄寺君に山本と一緒に楽しく見て回ってる…はずだった。 ついさっきまでは。 「クハハハハ!さあ観念してこれを着なさいボンゴレ!」 「絶対嫌だー!!!」 何故俺はドレスを持った骸に追いかけられているのだろうか。 TURN 5 ナイトオブラウンズ 人がごった返す中、全力疾走する俺達をみんながみんな振り返っていた ある人はなんだ?という様に。ある人は邪魔だという様に。 すみません、本当にすみません!! 「なんで俺がドレスなんか着なきゃなんないんだよ!!」 「今日は最後にダンスがあるんです!僕もタキシード着てるでしょう?」 「俺踊らないし!踊れないし!!」 「僕がリードしますから大丈夫です!」 「しなくていい!踊らないけど、100歩譲って着るなら俺もタキシードがいい!!」 「人には向き不向きがあるんですよ」 「お前さりげなくムカつくな!!」 走りながらの会話は体力を消費する。 このままでは追いつかれると思い、何度か曲がったところで見えた倉庫に飛び込んだ 「ぎゃ!」 前を良く見ていなかったため入り口の段差に躓いて派手に転ぶ かなり痛い、そしてまぬけだ… 誰にも見られてなくてよかっ「綱吉!?」 え、と顔を上げればロロとお兄さんがジャガイモの皮を剥きながら驚いたようにこっちを見ていた そっか、ここは生徒会が準備に使ってたのか。 一緒に回ろうと誘ったとき、仕事があると断られたことを思い出す。 「大丈夫か!?」 お兄さんが血相を変えてやってくる 会うのは2度目、それもバベルタワー崩壊の時叩いてしまって以来だから気まずかったのに、そんなこと気にしないようにお兄さんは俺に手を差し伸べた 「怪我は?」 「大丈夫です…」 長袖でよかった。じかに当たったわけではないので痛いが血は出ていなかった。 最も、明日にはあざができているだろうが。 お兄さんがほっとしたように息を吐く 「…綱吉。どうしてこ…」 「ボンゴレー!!どこに行ったんですかー!?」 「ひい!!」 ロロが言いかけたとき骸の叫び声が響いた。 もう追いついてきちゃったの!? 「こっちだ」 お兄さんに手を引かれて倉庫の奥へと入る 「ここに隠れていろ」 そこはダンボールに囲まれていて、外からは死角になっていた。 「ロロ。続きをするぞ。さっきも言ったけど、手、気をつけろよ」 「う、うん…」 お兄さんは何事も無かったかのように最初の場所に戻って作業を再開して、ロロもそれに応じる 「ここですかボンゴ……」 「六道、ここは関係者以外立ち入り禁止だ」 「…答えろ。何故こんな場所にいる」 聞いたこともないくらい低い声で骸が言った。 ここからじゃダンボール以外何も見えないから、骸がどんな顔をしているのかわからない。 だけどいい雰囲気ではないのは確かで。お兄さんと骸は仲が悪い?そもそも知り合いだったの? 「見てわからないか?仕事中だ。」 「…まあいいです。それより、ボンゴレがここに来ませんでしたか?」 「誰だそれは?」 「……先輩。ここにはずっと僕と兄さんだけでした。綱吉なら今朝、出し物を見て回るって言ってましたよ。」 「…わかりました。君が言うなら信じましょう。」 重苦しい雰囲気を残して骸の気配が遠ざかっていく 驚いた。あんな骸は、もうずっと見てなかったのに。 「出てきていいぞ」 そう言われてダンボールの山から出る ロロが複雑そうな瞳で俺とお兄さんを見ていた 「ごめんなさい、迷惑をかけてしまって…」 「気にしなくていい」 「ロロもごめん。変なことに巻き込んで。」 「…綱吉は六道先輩のことどう思ってるの?」 突然の質問に驚く 「どうって…」 「付き合わないの?」 そんなこと…考えたことも無かった。 だって、骸は 「骸は大切な仲間だけど…付き合うとか、そういうことは無いよ」 「どうして?他に好きな人でもいるの?」 「そうじゃないけど…」 ほんとうにどうしてだろう。骸は変だけど、優しいし大切にしてくれてる。それは本当にわかってる。 だけど違う。何故かわからないけど、違うって思う。 「ロロ、もういいだろ。…友達が、困ってるぞ」 またお兄さんに助けられる。 どうしてお兄さんは俺なんかを助けてくれるんだろう。 「お兄さん」 「っ!…ああ、なんだ?」 「この間はすみませんでした。感情に任せて叩いたりして…」 「気にしなくていい。…ロロを心配してくれたんだろ?…それだけ弟のことを想ってくれる友達がいて嬉しいよ」 そうか、お兄さんがよくしてくれるのは俺がロロの友達だから… お兄さんとロロは、本当に仲がいいんだ。 なのに俺は…あの時なんてことをいってしまったんだろう。 お兄さんだって、心配だったはずなのに。 「…ありがとございます。」 俺の中でお兄さんへの印象が変わった。 弟思いの、優しいお兄さん。 「そうだ、お礼とお詫びに手伝います」 ジャガイモを手に取ると、ぎょっとロロの目が見開かれた 「危ないよ綱吉!!」 「大丈夫だよ。皮むきくらい俺だって……」 軽く包丁を入れたつもりだったのに切れ味の良い包丁はジャガイモの中に入り込み、指にあたる寸前で止まった。 「あ、あれ?」 「綱吉!」 いつの間にかロロが手を掴んでいて、そのおかげで怪我をしなかったことに気づく 「だから言ったでしょ!?綱吉は調理実習のときも先生に包丁禁止されたんだから!」 「ごめん…」 「大丈夫か!?」 これくらいなら出来ると思ったのに…情け無い。 去年教えてもらって簡単な料理なら出来るようになったはずなのに、いつのまにか包丁すら使えなくなってる。 あれ?誰に教えてもらったんだっけ?思い出せない。 「お前、料理苦手だったのか?」 お兄さんが信じられないように言う うん、俺もこのダメダメっぷりは信じたくない。 今日は2人に恥をさらしてばかりだ 「とにかく、ここはもういい。よかったらトマトの方を手伝ってくれないか?」 「わかりました。」 「じゃあ行こう。ロロ、ここは任せてもいいか?」 「!僕が綱吉と一緒に…」 「俺じゃなきゃわからないことなんだ。頼むよ」 「…わかった。兄さん、綱吉をよろしくね。僕の大切な友達なんだから。」 「……ああ、わかってるさ。」 お兄さんに付いて倉庫を出る。 ロロがじっとこっちを見ていて、なんだか余計なことをしてしまったような気がした 「あの、邪魔なら俺友達のところに…」 「そんなことない!」 突然大きな声を出されて驚く 「あ…すまない。人手が足りなかったからありがたいよ。」 「…ならよかったです」 「ああ、それよ…!?」 「?お兄さん?」 かつて無いほどお兄さんの目が見開かれる 「あのピザ女…!!」 「え?」 肩が震えていて、怒ってるのがありありと伝わってくる 急に何!?どうしたんですか!?でも聞けない怖い!ひい!! 「…すまない、急用を思い出した。手伝いはいいから好きにまわって来てくれ。」 「わ、わかりました…」 そういうとお兄さんはダッシュでどこかに行ってしまった。 ピザ女…?なんだったんだろう…考えないでおこう…うん。 これからどうしようかな。ロロのところに戻っても包丁の使えない俺は邪魔になってしまうだろう。 獄寺君たちと合流しようかな… 「ねえ君、ちょっといいかな?」 「はい?」 振り向いた先にいたのは金髪の男の人とピンク色の髪をした少女だった。 私服なところを見るとどうやら一般の人らしい。 「庶民の学校に来てみたはいいんだけどよくわかんなくてさ。よかったら案内してくれないか?」 庶民って…アッシュフォード学園はそれなりにレベルの高い名門校なのだが。 なんか金銭感覚狂いそうな人だなあ… 「案内なら実行委員の人が…」 「みんな急がしそうなんだよ。それにどうせなら、ザ・庶民!って感じの奴に案内して欲しいなって。」 そうかそれなら仕方ない…って、はっきり言うか普通ー!! 「じゃあ行こうぜ!」 「うわっ!ちょ、わかったから離して下さい!!」 肩に腕を回される。重いんですけど!! 横からシャッター音がして振り向けば、女の子が携帯を手にしていた。 「記録…」 なに勝手にとってんのー!? ダメだ、この人たち全然常識通じない!! 「これ何?」 「揚げパンです。」 「こっちは?」 「わたあめです。」 「じゃあこれは?」 「アイスくらいわかるでしょう!」 「まあな!でも知らないもんがいっぱいだ。面白いな庶民の学校は!」 本気で言ってるのが恐ろしい。 この人たちどんな生活してるんだろう。ジノさんにアーニャさん…名前だけ教えてもらったけど。 まあ世の中には考えられないくらいお金持ちっているからな。 「アーニャ、これ見てみろよ」 「記録」 「好きだねーそういうの!」 ああやって写真を撮っている姿は、どこにでもいる普通の女の子なのにな… 常識の無さは普通とかけ離れてる。 「なあ、これは?」 「あ……たこ焼き、です…」 今はもう、殆ど見なくなった日本の食べ物。 こんなこところにあるなんて…枢木卿の影響だろう。 懐かしさに目を奪われていると、目の前に爪楊枝に刺さったたこ焼きが差し出された 「案内の礼だ!」 「あ、ありがとうございます。」 楊枝を受け取ろうとすると、そのまま口に押しこまれる 「んぐっ」 「どうだ?美味いか?」 「あふい!あふいです!」 「そうか美味いか!」 熱いって言ったんです!!涙目で訴えるも効果は無い。 でも…美味しい。すごく久しぶりに食べたソースとかつおぶしの味。 「ほら、全部食べろよ」 「ありがとうございます。」 「おねーさん、あと2つ追加ね!」 ジノさんは自分とアーニャさんの分も買うと、向こうで食べようと出店ゾーンを抜ける 「これ美味いな!何が入ってるんだ?キャビアか?」 「タコの他ならキャベツとか揚げ玉とかですよ」 「へえ。…ん?あれは何だ?」 今度は何だと見てみれば…なにか機械の様なものと、電子版が落ちていた ジノさんが電子版を拾い上げる 「ナイトメアで…巨大ピザ?」 「ああ、生徒会の人が去年のリベンジって…」 ニヤリとジノさんの口が釣り上がった。 「あの…ジノさん?」 「綱吉!私のナイトメアさばきを見せてやろう!」 「ちょー!やめてください!危険です!簡単に乗れるものじゃないってー!!」 「大丈夫。」 「え?」 今まで名前と「記録」しか喋らなかったアーニャさんが口を開いたから少し驚いた 「いつもやってる」 「はい?」 「ナイトオブスリー」 「は?」 「ジノが」 「はいいいいい!?」 「んじゃ、ちょっと行って来る!2人ともゴールで待っとけよ!」 「ちょ、どういうことー!?」 ナイトオブスリー!?今まで話してたのナイトオブスリー!? くいっと制服を引っ張られる 「ゴール…行く。」 「あの…まさかアーニャさんもラウンズなんてことは…」 まさかね。こんな小さな女の子が帝国最強の騎士なんてそんなはず… 「シックス」 「…」 「ゴール、行こう。綱吉。」 「うん…そーだね…」 なんかもう、なにも考えたくないや… 結局、消化ガスの誤作動があったりで世界一のピザはおじゃんになった。 まあ生徒会長がこういうのもありと言っていたから、これはこれでよかったと思う。 でも…どうかんがえても… 「ジノさんのせいですよ!」 「あはは!悪い悪い!でも面白かっただろ?」 「そりゃスリルはありました。ありすぎました。」 「だろ?で、どうだった?私のナイトメアさばきは」 「…凄かったです。自分の手足みたいに動かしててびっくりしました。」 「そっか!」 「記録…」 「お、アーニャ。綱吉とのツーショットか?」 アーニャさんがうなずく。撮るのはいいけど先に言って欲しい…もう慣れたけど。 「ジノ!」 枢木卿が猫を片手に走ってくる 突然、緊張した。どうしてだろう、枢木卿がナイトオブラウンズだから? でも、ジノさんやアーニャさんもラウンズなのに… 「スザク!勝手に動かして悪かったな。まあ許してくれ!」 「僕はいいけど会長には謝ってよ。…それより、彼は?」 心臓が嫌な音を立てる。嫌だ、ここに、いたくない。 「綱吉。庶民の学校を案内してもらってたんだ。」 「そう…」 枢木卿の視線が痛い。嫌だ、嫌だ、嫌っ… 「スザク君の知り合い〜?」 「会長!」 会長さんが来たことで視線が外れる。安心した。枢木卿は苦手だ。 何故か彼が俺の大切なものを奪っていく、そんな気がして。 「ガニメデを操縦してたのって貴方?」 「ナイトオブスリー、ジノ・ヴァイン・ベルグです」 「うそっ!」 「で、こっちがナイトオブシックスのアーニャ」 「え?え?スザク君どういうこと!?」 「色々あって…」 「あ、じゃあ俺はこれで…」 ラウンズ同士で話があるのかもしれないから、部外者な俺はいないほうがいいと思ってそう言った 「え?何か予定があるのか?」 「ないですけど、俺がいると邪魔になるんじゃ…」 「そんなわけないだろ。予定が無いなら一緒に回るぞ。今度は校舎だ!スザクと会長さんもどうだ?」 ぎくり。背筋が凍った。枢木卿をちらりと見る 「僕は遠慮しておくよ。少しやることがあるんだ」 「私は行くわよ!ねえ、せっかく男女が2人づついるんだからダンスパーティに出ましょうよ!」 「お!いいね〜。君が私の相手をしてくれるか?」 「もちろん!アーニャちゃんは、えっと…名前なんだっけ?」 え、なんで俺のこと見てんの!? 「沢田綱吉です」 「沢田君ね!この2組でダンスを盛り上げるのよー!」 「ちょ、俺ダンスなんかできませんよ!」 「なに謙遜してるんだ?ダンスが出来ない奴なんていないだろ?」 常識通じないの忘れてたー!! 「…ごめん、俺のせいで…」 「いい。ダンス好きじゃないから」 ジノさんと会長さんのダンスを眺めながら言う アーニャさんは携帯でさっきから写真を撮っていた 「写真好きなの?」 「これが私の記憶。何を見て、何を思ったか。」 「…だったら、君も一緒に写らないと」 アーニャさんが驚いたように俺を見る。 今日初めて見た表情だ。 「貸して」 アーニャさんの肩に手を回して携帯のカメラを向ける。 シャッター音が響き、画面に写真が映し出された 「ね?一緒にいた記憶だよ」 「…っ」 アーニャさんは保存ボタンを押して携帯をぎゅっと抱きしめて…笑ったんだ 初めて、笑った。 「もっと、記録」 「うん。いっぱい撮ろう」 俺も嬉しくなっていっぱい撮った。ダンスが終わったらジノさんや会長さんも一緒に。 「今日はありがとな!凄く楽しかった。私も庶民の学校に通いたくなったぞ!」 「あはは…」 ジノさんが来たら凄いことになりそうだ。今日も騒ぎを起こして以降は女の子の目がすさまじかった。 「私も…楽しかった」 「俺もだよ」 「また記録しにくる」 それは叶うとは思えないけど、そう言ってもらえたのが嬉しかった 「気をつけて」 「ああ。綱吉もな!」 「何で俺?」 「何でって、一緒に回ってるとき色んな奴から殺気を感じたから。モテるんだろ?」 「それ違うからー!!」 多分アーニャさんと一緒に歩いてたからだよ。 あとジノさんがかっこいいからひがみだよ!! 「とにかく夜道は背後に気をつけろよ。じゃあまた来るから!」 「バイバイ」 「うん…また…」 背中が見えなくなるまで手を振った 今日は…色々あったなあ。 ロロとお兄さんに助けられて、ジノさんとアーニャさんと学園を回って…あれ、なんか忘れてるような… 「ボンゴレーーー!!!」 「げえ!!」 そうだ、骸だ… 「なんでナイトオブラウンズなんかと一緒だったんですか!?おかげで声がかけられなかったじゃないですか!!」 「お前でも遠慮とかするんだな」 あれ?なんで2人がラウンズだって知ってるんだろう。 「遠慮じゃありません。皇帝の犬なんかと話したくないだけです」 「…そういう言い方はないだろ」 「ああすみませんね。ですが今日1日君を独占されたとあっては苛々も募りますよ!!」 「骸、お前うざい」 「ツンデレですか!?」 「言ってろ。ていうか、なんで2人がラウンズだって知ってるんだよ」 「公表されてるじゃないですか。見ればわかりますよ」 「……」 骸との言い合いで、もうすっかり忘れてたんだ 彼らも骸並に常識が通じないって事… ナイトオブスリーとシックスの転入を聞いたとき、激しくそう思った。 |