今日はキューピットの日。 生徒会長の卒業イベントで、頭の上の帽子を取ったら強制的に恋人になれるって遊びらしい。 だったら頑張らないわけにはいかねーよな。 獄寺の帽子を他の奴に渡すわけにはいかねーし。 つーわけで開始早々に本気を出して獄寺の帽子をゲットした。 口では「くだらねえことしてんじゃねえ!」って怒ってたけど、獄寺もまんざらじゃ無かったよな。 帽子交換したとき赤くなってたし。あー、やっぱ最高!俺の獄寺は世界一なのな! 暫く抱きしめてたんだけど、照れた獄寺が花火使って逃げちまった。 もっと一緒にいたかったんだけどなー。 女子の帽子と違って見ただけじゃ交換したってわかんねーし、追いかけられてないか心配だ。 獄寺は男子にも女子にも人気がある。 「獄寺ー?…ん?」 適当に歩きながら探していると、見知った後姿が見えた。 天に向かって伸びる茶色い髪に、俺や獄寺より小さい背中。けどすっげー頼りになる大事な親友。 「ツナ!」 「山本?あれ?獄寺君は?」 振り向きながら言うツナに逃げられちまったと答えると、優しい笑みが返って来る 「でもその帽子獄寺君のでしょ?」 「よくわかったな!さっき交換したんだ」 よかったねと言ってツナは視線を前に戻した 自然と俺もそっちへ目を向ける 「―…っ!」 そこにはルルーシュ先輩と女の人がいてまわりにたくさんの生徒が集まっていた 二人の被っている帽子の色は、配られた時とは逆のもの。 どう見ても出来立ての恋人同士をからかっているようにしか見えなかった 「大丈夫だよ」 目の前の光景に言葉を失っていると、酷く落ち着いた声が響く 普段のツナとは違う、なんの感情も読み取れない声 悲しみも怒りも喜びも憎しみも何も無く、ただ事実を告げるように 「でも…」 その声に焦る だってツナは、今でもルルーシュ先輩のことが好きなのだから。 本当はルルーシュ先輩はツナと付き合ってて、仲のいい奴らなら誰でも知ってる公認の仲だった。 なのにブラックリベリオンの後、何故かルルーシュ先輩の記憶から俺達は消えていて。 先輩の隣には常に弟と名乗る男がいて、あんなに溺愛していた妹のことも忘れていて。 俺達の存在はまるで無かったことにされていた。 俺はいい。 でも、ツナは。 あんなに大切で、大好きだった相手に忘れられたツナは。 見たことも無いような冷たい瞳で「お前、誰だ?」と言われたとき、ツナは氷のように固まった 今にも泣き出しそうで、必死に嘘だ、冗談だと言ってくださいとすがりつくツナは見ていられなかった。 それでもルルーシュ先輩の態度は変わらなくて。それ以来、ツナと先輩が話しているところは見たことが無い。 だけどツナが今でも先輩を好きなことは明らかで。それは部屋に飾ってある写真とか、薬指に嵌ったままの指輪とか、理由は色々あるのだけれど。 一番はやっぱルルーシュ先輩を見る瞳だった ツナの視線からは悲しくてどうしようもなくて、でも愛しいという思いが伝わってきて。俺と獄寺はいつもどうすることも出来ない自分の無力さが悔しかった。 「俺は大丈夫」 クスクスという笑い声に振り向くと、可笑しそうにとツナが笑っていた まるで馬鹿にするかのように。 「ツ、ナ…?」 得体の知れない違和感が走る こんな笑い方をするツナを俺は知らない 「だって、今だけだもの」 挑発するような声に瞳。 いつも先輩を見る悲しげなものとは全然違う 「ルルさんは最後は俺の元に戻ってくるよ。」 それはやけに確信を持っていて、目の前の状況とあまにり不釣合いな言葉だった。 「山本はさ、これからもずっと獄寺君と一緒にいるよね?」 「当たり前、だろ…?」 「うん。他の答えが帰ってくるはずの無い、当たり前の答えだよね」 ツナは至極当然のように言う 何を思って、こんなことを聞いて来たのかわからない。 「山本が獄寺君のそばにいるように、ルルさんには俺がついてるんだよ」 クスクスと笑い声が響く 「だってそうでしょ?あの人じゃルルさんと一緒にいられない。ううん、あの人だけじゃない。俺以外はみんな、俺だけしかルルさんの傍にいることなんてできないよ」 「ツナ、お前どうし…」 「俺は違う。俺だけがルルさんを護れて、望みをかなえることが出来る。俺だけなんだ。優しい世界を作れるのは」 堰を切ったようにツナが笑い出す 「待っててください。俺が必ず優しい世界を作るから。ルルさんはそれまでこの箱庭にいればいい。」 ツナは楽しそうに叫ぶとそのまま笑い続ける だけど目は笑ってない。ずっと先輩の隣にいる女性を睨みつけたまま。 その目はツナじゃなく、ボンゴレ10代目のもので。 欲しいものはどんなことをしても手に入れる、マフィアのボスだった。 「ロロ!いるんだろ?出て来いよ」 「…何?綱吉」 木の陰から先輩の弟が現れる どうして?ツナとコイツが知り合いなんだ? 気配を感じなかったのに、どうしてコイツがここにいる? 疑問ばかりが浮かび上がり答えは出ない 「見てよロロ。あの人、ルルさんの恋人だって」 「…それが何?あんなのただのイベントでしょ」 クスクスとツナは笑うことをやめない それによって弟の神経を刺激していることに気づいているのかすらわからない 「そう。ただのイベントだよ。でもさ、ただのイベントでルルさんの隣は自分のものだって勘違いされるのもムカつかない?」 「それは…」 「だからさ、協力しようよロロ。」 「協力?」 「そう。あの人が二度と勘違いしないように分からせないと」 それはまるで悪魔の囁き (誰よりもボンゴレ10代目だった君は、誰よりもマフィアのボスらしくなってしまった) |