欲しいものがある

たった1つだけ、どうしても欲しいものが




STAGE 29.5  暴走



「くそっ!10代目!!」
「落ち着け獄寺!」

東京疎開を抜けて、並盛へと走る
獄寺隼人は苛つきを隠そうとしない

ボンゴレがマフィアに襲われたらしいと連絡が入ったのはつい先ほどのことだった

行政特区になる前に見ておきたいという彼自身の希望で、1人並盛に向かったらしい


何故、今更並盛なんか…

クロームを助けに行ったときは何も言ってなかったのに

だからもうすぐだと

もうすぐ、忘れてくれると思っていたのに

いつになったら君は、僕を見てくれるんですか

通信機が使える距離まで近づいたらしく、獄寺隼人がボンゴレと通信を繋ぐ

返ってきたのは一般人の避難と護衛をしろという言葉で、獄寺隼人は泣きそうな顔で切れた通信機を見つめた


「くそっ…おい山本!俺は10代目の元に行く!お前が一般人の…」


三叉槍で獄寺隼人に切りかかるも、山本武の刀がそれを阻む


「骸!なにして…」

「ボンゴレを助けるのは僕です!他の誰にも邪魔はさせない!!」

「今は仲間割れしてる場合じゃないだろ!!」


仲間?

誰のことを言っている


「!来るぞ!!」

笹川了平の声と同時に、ミルフィオーレの制服を着た奴らが襲い掛かる


邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ!!

僕とボンゴレの邪魔をするな!!

匣兵器、ゴーラモスカ、KMF…

利用できるもの全てを使ったミルフィオーレの総攻撃に、なかなか突破することができない

守護者は散り散りになり、今この場には僕とミルフィオーレしかいなかった


「はぁ…はぁ…数…ばかり…!」

おかしい

普段ならこの程度の戦闘で、ここまで体力が削られることはないはずなのに


「もらったっ!」
「…チッ!!」


直ぐそばまで敵が迫る

六道輪廻では間に合わない

「死ね!!」

次の瞬間、敵は自身の頭を打ち抜いて死んでいた

「っぐあああああ!!」

右目に抉るような痛みが走る
視界が歪む
頭が割れそうだ

「テメエ、何しやがった!!」

敵の1人が叫びながら向かってくる

「…死ね」

そのまま円を書くように赤い光が周りを包み、消える


「…」


もう僕の周りに生きている者はいなかった
人間だけじゃない。匣兵器もなにもかも。
円の中にいた者は全て、死んでいる


…暴走


確かに殺すためにギアスを使った


だが、かけたつもりの無い敵にまで力が及んでいる


「っ…」





痛い、痛い、痛い





右目を押さえる



ぬるっとした感覚に、血が出ていることがわかった


…クロームの、内臓だけは維持しなければ…っ…


ギアスは六道輪廻の力を飲み込もうとしている


「っ…ボンゴレ…」


早く、助けに行かなければ


彼はとても弱いから僕が助けてあげなければ


誰かが傷つくのを、たとえそれが敵だとしても酷く怖がるのだから


だから僕が殺さなければ


ボンゴレが傷つく前に、彼の妨げになるものは、全部…





『そこまでだ!』






遠くから、何か聞こえる





『リフレインをばら撒いた奴らが、ここに何の用だ?特区に賛成するわけでは無いが、見過ごすわけにはいかない。黒の騎士団の名の元に全力で排除する!!』




「なっ…」


何故あの男がここにいる!!


渡さない!奪わせない!ボンゴレを助けるのは僕だ!!


「っ…!」



右目が痛い


視界が歪み、地がどこにあるかわからなくなる


「ボンゴレ…ボン、ゴレ…」


どこに…一体どこにいるんですか?



壁に手をついて前に進む





痛みで何も考えられない




早く、早く、ボンゴレを助けなければ





どれくらい時間がたったのかわからない




まだボンゴレは見つからない



「ボンゴ…」



『黒の騎士団総員に告げる。戦闘は終わった。我らの勝利だ』

『みんなありがとう。入江は倒した。もう大丈夫だから、黒の騎士団の人と協力して一般人の…』


「ぇ…?」


ゼロの…ルルーシュ・ランペルージの勝利宣言と、ボンゴレからの通信が入ったのは…ほぼ同時だった




あの男が…ボンゴレを助けた…?



僕でなくあの男が…ボンゴレを…?






僕が、僕は、どうして!!








「クフ…クハ…クハハハハ!!」








痛い、痛い、痛い









もう、痛み以外何も感じられなかった