「ロロはさ、ゼロってどう思う?」

脈絡も無く発せられた問いは、僕と兄さんを凍りつかせるには充分なものだった

どうして綱吉がそんなことを聞くの?
ゼロの正体を、覚えてるはずは無いのに

「どうって?」

どくどくと心臓が嫌な音を立てる
答えによっては殺さなきゃ。でも、綱吉を殺したくない。
だけど僕にとって一番大切なのは兄さんだから。兄さんの元にしか僕の居場所は無いのだから。
震える手でナイフを取り出して、綱吉からは見えないように構える。
その手は兄さんに無言で押さえらつけられる。
わかってる。兄さんにとって、綱吉がどんなに大切かって事くらい。
僕にとっても綱吉は大好きで、大切な人だから。
でも、仕方ないんだ。秘密を知られたのなら、生かしておくには…

「誰も突っ込まないから言いづらかったんだけど、あの格好は無いよ!ぱっと見銀行強盗か変質者じゃない?」
「え゛…」
「な゛っ…」

「声も変声期使ってるからますます変質者っぽいし。顔隠すにしてももっと別の…あれ?二人ともどうしたの?」

兄さんの落ち込みぶりは激しくて、それからしばらくゼロの格好にはならなかった。