標的2 夢


魔方陣の真ん中に現れた男の人は何が起こったかわからないように辺りを見回す

そうだよね、わけわかんないよね!!

「どーすんだよリボーン!!」
「お前が呼び出したんだ。ファミリーにしてこい」
「ぎゃっ!!」

リボーンに蹴られて男の人の前に飛び出してしまった

「あの…えーと…こ、こんばんは…」

とりあえず挨拶をしてみると、男の人の目が信じられないものを見たかの様に見開かれる

『…Tsu…na…?』
「え?」

どうして俺の名前…

『とうとう幻覚まで見えてくるとはな…』
「え!?ちょ、英語ー!?」

日本語じゃない答え返ってきたー!!!

「どうしようリボーン!!」
「英語じゃねーぞ。俺も聞いたことの無い言葉だ」
「うそっ!!」

じゃあどうすればいんだよ!!

「身振り手振りでなんとかしろ」
「無茶振りきたー!!」

貴方は異世界から来たんですなんてジェスチャーできるわけないから!!

「えーと…ドゥーユースピークジャパニーズ…?」
「せめて英語で言え」
「言ってるよ!!」
「お前の発音じゃ英語に聞こえねえ」

そんなこと言ったって…
そうだ!獄寺君なら英語ペラペラじゃん!
英語じゃなくてもイタリア語できるし!!

「獄で…」
「大丈夫だ、日本語も話せる」
「え…」

流暢な日本語に振り向けば、男の人が凄く優しい顔でこっちを見ていた

「日本語で話すのは初めてだな。学園ではいつも、ブリタニア語を使っていたから…今思えば、2人きりの時くらい日本語を使えばよかった」
「え、あれ?」

よかった、日本語できたんだ。
ほっとして男の人をちゃんと見る
うわぁ…よく見ると凄い綺麗な人だな…
男の人なのに、かっこいいより綺麗という言葉が似合う気がする

「お前ツナのこと知ってんのか?」
「ああ。」
「え、俺のこと知ってんの!?」
「だがお前の知るツナと、このツナは同じであって同じじゃない。別人だぞ。」
「だろうな。これは俺の心が作り出した幻だ…」
「幻じゃねーぞ。」
「何…?」
「お前は異世界から来たんだ」
「さらっと言っちゃったー!!」
「俗に言うパラレルワールドだな。」
「ありえない。理論的な可能性を言えばパラレルワールドの存在は否定できないが、それにより別次元に行くなど不可能だ」
「普通はな。だが出来ちまったんだから仕方ねーだろ」
「適当だなおい!!」
「とにかくここはお前のいた世界とは別の世界なんだぞ。」
「…俺は都合のいい夢を見てるらしいな」
「夢じゃねえ」
「信じられない」
「信じろ」
「無理だ」

なんか言い争ってるー!!
でもあの人の言うこともっともだよな…普通信じられないって…

「まあいい。夢なら醒めないで欲しいからな…ツナ。こっちへ来てくれないか」
「はあ…」

男の人の前に立つ
向こうは座ってるから見上げられる形になった

「夢の中でもいい。逢いたかった…」
そっと俺の頬に手を添えながら言う
綺麗な顔がすぐ近くにあって、顔をのぞきこまれて。
「あ、あの!?」
「ツナ…すまない、俺のせいでお前は…」

「10代目を放しやがれ!!2倍ボム!!」
「え゛」

嫌な予感とともに声に顔を上げると、案の定無数のダイナマイトが迫っていた。

「ひい!!!」
「ツナ!!」

獄寺君やりすぎだー!!
衝撃に備えて目を瞑った時、身体を引っ張られて力強い腕の中に捕らわれた

直ぐ近くで聞こえる爆発音
それは鼓膜が破れるくらい大きいのに、どこにも痛みを感じない

「っ…」
「え…?」
恐る恐る目をあけると、あの人が俺を護るように抱きかかえたまま倒れていた

「怪我はないか…?」
「俺より君は!?大丈夫なの!?」
「俺は平気だ…それよりツナは…」
「平気って、背中火傷してるじゃん!!」
「このくらい…」

嘘だ。火傷のほかにもところどころ血が出てて全然大丈夫そうじゃない。

「早く病院に!」
「いいんだ。すぐ治る…」
「そんなわけないだろ!!」
「本当に大丈夫だ…」
「嘘!だってこんな…に…」

傷を見て唖然とした
さっきまであんなに重症だったのに…もう何事もなかったかのように完治していたから

「なるほど。それがお前の能力ってことか」
「!リボーン…どういうことだよ!」
「初代異界人も特殊な能力を持っていたらしいからなもっともどんな能力かまでは伝わってないが」
「それ1番重要なことなんじゃ…」
「10代目!!すみません!すみません!!」

獄寺君が駆け寄ってきて何度も頭を下げる

「俺はいいから、謝るならあの人に…」
「俺山本武っつーんだ。あんたも今日から俺たちのファミリーなんだろ?よろしくな!」
「勝手に話進めてるー!!」

もしかして山本、今の入ファミリー試験だと思ってんのー!?

「ファミリー?俺が?」
「10代目を護ったんだ。ファミリーとして認めないわけにはいかねえ…だが右腕の座は渡さねーぞ!!」
「いつぞやと同じこと言ってるー!!!」

ていうかこの人全然状況把握してないし!
まだ異世界のこと信じてないし俺も信じられないし!!

「この人たちの言うことは気にし」
「喜んで参加させてもらう」
「いきなり了承したー!?」

ちょ、え、なにこの人なに考えてるの?
山本みたいにマフィアごっこだと思ってるの?
でも普通遊びでダイナマイト使わないよねわかるよね?
少なくとも危険だってことくらいはさ

「ちょっと待った!さっきの怪我でわかったでしょ!?危険だからやめたほうがいいって!!」
「大丈夫だ。…夢とはいえ、俺がファミリーか。本当に夢だな…」
「夢じゃないから!現実を見て!!」

どうしようこの人夢だと思ってるー!!

「決まりだな。お前名前は?」
「L.L.だ」
「えるつー…?」

変わった名前だ。異世界の名前だからかな…

「ていうか夢じゃないから!君もなんとか言わないとこのままじゃほんとにマフィアだよ!?」
「…俺がファミリーになるのは嫌か?無理強いはしない。そう思われて当然だからな。」
「そうじゃなくて!俺はマフィアになる気なんかないし誰かを巻き込みたくもないの!!」
L.L.が驚いたように俺を見る
「どうした?」
「いや…ずいぶんとイメージが違ったから。まあ夢だからな」
「だから夢じゃないからー!!!」
「お前の知ってるツナはどんなだったんだ?」
「もっと落ち着いていて…マフィアのボスになることも受け入れていた…」
「はあ!?」
それ誰ですかー!?
「ツナも見習え」
「いででで!ギブ!ギブ!!」
腕をひねりあげられて涙目になる

「とにかく詳しい話は家でするぞ。L.L.、おめーも来い」
「ちょ、ほんとにこの人ファミリーにするつもりなのかよ!?」
「たりめーだ。なんのために呼び出したと思ってんだ」
「L.L.は元の世界に帰りたいと思わないの!?」
「ああ。できればずっと醒めないで欲しい」
「だから夢じゃないからあああああ!!!」