べったりとマントに着いた赤い塊 むせかえるような血の臭い 「ツナっ…」 ツナがあそこまで重症をおったのは俺のせいだ ギアスを使うタイミングを完全に間違ってしまった あの男に髪を掴まれているツナを見たら、いてもたってもいられなくなった だから思わず言ってしまったのだ 離せと。それもギアスを使って。 「…くそっ!」 どうせ使うなら死ねと命じればぬかった。 そうすればツナが傷だらけの身体で戦うことも無かったのに。 怪しまれた。当たり前だ、あの状況でゼロの言うことを聞くのはおかしい。 そこまでのリスクを犯したのに助けられなかった。 それどころか、ツナはゼロを守るために戦った。 結局俺は足を引っ張っただけだ 「っ…」 脳裏に血だらけのツナが浮かぶ 笹川が何か変わった方法で治療をしていたから無事なのはわかっている。 だけどどうしても、心配で堪らなかった STAGE 9 とらぶる 音の無い場所を真っ直ぐに歩く 他の生徒の姿は見えない 当たり前だ 今は授業中で、ここは寮の廊下なのだから ツナが風邪で休むと連絡があったと教師から聞いたのは少し前のことで、 直ぐにクラブハウスに戻ると部屋にあった果物と雑誌、そして救急箱を持ち今に至る 「風邪、か…」 そんなものではないことは明らかで だけど風邪ならば、見舞いに行っても不思議じゃない 病院に行っていないことには驚いたがツナはマフィアだ そういう場所に出入り出来ない事情があるのかもしれない ならせめてもと、救急箱には沢山の包帯と傷薬、そして申し訳程度に風邪薬を入れてきた さすがに風邪の見舞いに持ってきた救急箱に風邪薬がないのはおかしいからな ツナの部屋の前につくと端末を弄る あの怪我ではインターフォンを鳴らしても出るのは困難だろう ハッキングをして暗証番号を突き止めるとドアを開けた 「ツナ。ルルーシュだが、風邪は…」 視界が開ける 一番に目に入ったのは、ツナの裸だった 「え?ルルさん!?」 「わ、悪い!!」 急いで後ろを向き、パネルを叩くようにしてドアを閉める な、なにをしているんだ俺は!! ただ着替えの現場に遭遇しただけじゃないか! 相手は男だぞ、照れる理由なんてあるか!! 頭ではそう思っていても、顔の熱はなかなか治まる様子が無い 傷一つ無い、白いツナの肌が頭に焼き付いて離れない だから何を考えている! これでは六道と変わらないじゃないか!! しかし、そこまで考えてハッとした 傷一つ無い…? そうだ。俺の目が確かなら、昨日のあの傷が消えていた 最初から怪我なんてしていなかったように、綺麗に。 どういうことだ? ツナが大怪我を負っていたことは、マントに付いた血からも間違いない なら―治ったというのか? 可能性が無い訳じゃない 笹川の使っていた不思議な炎 そして白蘭が言っていた匣という物の存在… 突如視界が開ける 扉の向こうにツナが見えた 「ルルさん」 「ツナ…!すまない、着替え中だとは思わなかったんだ」 ツナは制服ではなく、Tシャツに27とロゴの入ったパーカーを羽織っていた …可愛いな 「いえ。どうしたんですか?今授業中じゃ…」 「見舞いだよ。風邪だって聞いたから。けど意外と元気そうで安心した」 「もう大丈夫なのに、みんなが大事を取って休めって…」 ツナはバツが悪そうに笑う 「そのほうがいい、この時期の風邪はしつこいからな。廊下にいるのも良くない、ここは冷える。部屋に入った方がいい。」 「大丈夫ですよ、もう全然…」 「その油断がいけないんだ。入ってもいいか?」 「え?はい、どうぞ。」 半場強引に部屋に侵入すると、ツナをベッドに座らせる 「病人は楽にしていろ」 「…ルルさんも過保護なんですね」 みんなと同じで、と楽しそうにツナは笑う 「そう言うな。せっかくだからリンゴでも食べるか?持ってきたんだ、剥いてやるから」 「俺、病人じゃないですよ?」 「別に良いだろ?雑誌でも読んで待っててくれ。他の見舞い品も入ってる。」 そう言って見舞い品の入った袋をツナに渡す 「…救急箱?」 「転入して来たばかりだから、持ってないかと思って入れておいた。よかったら使ってくれ」 「すみません、何から何まで…」 「気にするな。俺が好きでやってるんだから」 「…ありがとうございます」 嬉しそうにツナが笑った途端、心臓が激しく音をたてた 「っ、いや、そうだ、雑誌はどうだ?暇潰しになればと部屋から適当に持ってきたんだ。趣味にあえばいいんだが…」 なんとか動揺を隠しつつ問いかける ツナは気付かなかった様で、袋から雑誌を探していた 雑誌の表紙を見たツナの動きが止まる 「ゼロ…」 「どんなものが好きか分からなかったから、ポピュラーに今話題のゼロにしてみたんだけど、どうかな?」 「…俺もゼロは気になってます」 「面白い連中だよ。会長達も助けてもらったし…ツナはどう思う?」 これは一種の賭けだった ルルーシュ・ランペルージとしてならツナの本音が聞けるかもしれない 入団は断られたけれど、ツナ自身が黒の騎士団をどう思ってるかは聞けなかった 肯定的な意見を持ってるならいくらでも引き込む方法はある いや、たとえ否定的だとしても必ず騎士団に入れてみせる もう昨日のようなことはごめんだ 目の届く範囲にいれば、あんな怪我をさせる前になんとかする自信はある これ以上、マフィアの仕事をさせたくない― 自分の考えが大きく矛盾していることに苦笑する ボンゴレの力が欲しいのに、マフィアの仕事をさせたくないと思っている 「…俺には出来ないことだと思います。」 「確かに、俺も出来ないな」 「それに、悪い人じゃ無いと思う。ゼロはきっと何か目的があって、だから必ずしも正義の味方とは限らないけど…悪い人じゃ…」 「…そうか」 今はそれだけ聞ければ充分だ 否定的で無い、そして俺が考えていた以上にツナはゼロを理解している 「変なことを言って悪かったな。リンゴ剥けたから食べてくれ」 クラブハウスから持ってきた皿にリンゴを乗せる それを見たツナは元から大きな瞳をさらに大きくした 「なんでウサギー!?」 「こういう剥き方があると咲世子さんに教わったんだ。上手くできてるか?」 「凄く上手ですよ!!ルルさん器用なんですね…」 「やってみると案外簡単だよ。よかったら今度教えるが?」 「俺料理とか全然ダメで、リンゴも普通に剥いて芯だけにしちゃったりと…か…」 段々とツナの声が小さくなる どうしたのかと思うと、顔が真っ青になっていた 「どうした!?具合が…」 「無い!!」 「何?」 「鎖が切れてる…ボンゴレリングが無い!!」 ツナは酷く慌ててパニック状態に陥っている 余程大事なものなのだろうか 名前からしてファミリーに関係しているのは間違いない そう考えていると、布団の上にチェーンに巻かれた指輪が落ちているのに気付いた 「もしかしてあれじゃないのか?」 「何処ですか!?」 勢い良く腕を捕まれる 「ほらこれ…うわっ!?」 焦ったツナに引っ張られ、そのまま重力に従って倒れ込んだ 「…っ…ツナ…大丈夫か?」 下がベッドだったため随分と緩和されたが、それでもかなりの衝撃だ 「…はい…すみません…」 目を開けると、至近距離にツナの顔があった 気付けばツナが俺の下にいて、少し動けば触れられる距離まで近づいている それも、俺が押し倒すという形で。 一気に熱が上がる ツナも現状に気付いたのか、真っ赤になって俺を見上げた 「…っ!」 その様子があまりに可愛くて、色っぽくて、思わずツナの頬に手を伸ばす 「え…?」 優しく撫でるとツナがピクリとと反応した 「ルル…さん…?」 顔を背けられない様に手で固定する 「ツナ…」 視線が絡み合う そのまま顔を近づけようとした―その時 空気を切るような音がして、扉が開いた 「…ああ、邪魔したね。これ置いてくから」 空気も何もかも固まった気がした 入ってきたのはクラスメイトでツナの雲の守護者の― 「…ちょっと待て雲雀恭弥!!」 「誤解ですヒバリさん!!」 「確かに渡したから」 「だから待っ…!」 興味が無いというように去っていった雲雀によって、部屋に沈黙が訪れる 「………」 気まずい。果てしなく気まずい。 「…すまない、その…体制を崩して…」 「いえ…俺のほうこそ、引っ張っちゃってすいませんでした」 「………」 「………」 何をやっているんだ俺は!! とにかく今はこの空気をなんとかしなければ。 何か会話を…何か無いのか!?くそっ!!こういうときに限って何も浮かばない…!! 話題を探して視線を彷徨わせると、何かの光が目に入った 「!そうだ、これだろ?探してた指輪って」 ベットに落ちていた指輪を拾うとツナは安心したように息を吐いた 「あ、それです!ありがとうございます!!」 手渡す際一瞬だけ手が触れる それだけで一度落ち付いたはずの心臓が激しく音を立てはじめた 「わ、悪い!!」 「俺こそすみません!!」 調子が狂う いつもの様に接することができない 「大切なものなのか?随分と慌てていた様だが…」 なんとか平静を保ってそう言うと、驚くべき答えが帰ってきた 「大切というか、無くしたらリボーンに殺されるっていうか…」 「殺されるだと!?」 「あ、いやそのくらい大切ってことです」 殺される ツナは上手く誤魔化したつもりだろうが、それほど重要なものなのか!? 黒の騎士団の情報網を使っても、ボンゴレのことは基本的なもの以外殆どわからなかった。 守護者、死ぬ気、六道輪廻…それ以上のことは「沈黙の掟」で守られていて、どんな手段を使っても知ることはできない。 だから俺はボンゴレリングがどんなものか知らないが、あれがツナの命に係わっていることは確かだ それをあんなチェーンで首から下げているなど…!! 下手にどこかに隠すより自分で持っていた方が安全ということか? だが、今みたいなケースもある 「…放課後までに切れないチェーンを用意しておく。 此れからはそれに指輪を通して服の中に仕舞っておけ。いいな、引っ張られたりしないよう服の中に仕舞うんだ。」 「大丈夫ですよ、チェーンなら直せば…」 「駄目だ!それではまた切れる可能性がある!!」 「そんなに心配しなくても…」 「万が一ということもある!俺は今から買い物に行ってくるから、それまでツナは寝てるんだ」 「…え?」 「雲雀恭弥が薬を持ってきただろ。まだ治ってないからじゃないのか?飲みたくないならせめて寝ていろ」 「あれは風邪薬じゃ…」 「いいから無理をするな。俺が戻るまで大人しくしていろ」 半場無理やりにベットへ寝かせると、布団をかぶせて起きれない様にする 「ルルさん、授業は…」 「今の最優先事項は切れないチェーンを手に入れることだ」 ギアスを使って絶対に切れないチェーンを作らせなければ 「なら俺も行きます。元々俺のですし…」 「っ!駄目だ!!病人を連れていくわけにはいかない!!」 ツナがいてはギアスを使えない いや、あくまで然り気無くすれば可能か? だが治ったようだとはいえ、あんな大怪我をしたばかりだし… 「ちょっと待ってて下さい。今着替えますか…」 「なっ、おい馬鹿!人前で着替えるやつがあるか!!」 服に手をかけたツナに焦って後ろを向く 「…?すみません、すぐですから…」 ああもう何をしているんだ俺は!! シュルシュルという衣擦れの音がやけに耳につく 同じ部屋でC.C.が着替えていようと何ともなかったのに、今は居たたまれなくて仕方無かった 頼むから早く着替えてくれ…!! 「お待たせしました。どの辺に売ってるか分かりますか?」 「っ、ああ、候補はいくつかあるから大丈夫だ」 「じゃあ行きましょう。俺まだこの辺よく分からないので、案内してもらえますか?」 「それは構わないが…本当にお前も行くのか?」 「迷惑ですか?」 「そんなことは無い!!だが体調が悪くなったら必ず言うんだ、いいな」 「はい!ありがとうございます」 っ!そんな可愛い顔で笑うなっ!! 「じ、じゃあ行こうか。その前にクラブハウス寄ってもいいかな、制服のままで来てしまって…」 「良いですよ」 そういえばこれはまさか… いや、違う!ただの… 「デートだな」 「違う!ただの買い出しだ!!」 ピザをくわえたまま魔女が言う 「ほう、お前はただの買い出しの為にクローゼットの服を全て広げて選ぶのか?お前がそんなにお洒落さんだとは知らなかったぞ」 「黙れ!!この服にあうネクタイは…」 「早くしたほうがいいぞ。お前がこの部屋に来て既に5分。女じゃあるまいし準備に時間がかかりすぎだ」 「そんなことは分かってる!…おい、C.C.」 「なんだ?」 「お前はこの服にどちらのベルトがいいと思う?」 「…勝手にしろ」 C.C.は呆れたように呟いた |