始まりは、ある晴れた日の朝だった 「先生、今度の論述試験の問題、教えてくださいよ。」 「エディンバラの屈辱と、新大陸への遷都。北南戦争についてだ。」 王の力に支配された教師が、本来ならば生徒に教えるはずのない情報を与える。 どうやら力が無くなったわけではないようだ。 「先生、今度の論述試験の問題、教えてくださいよ。」 「冗談言ってないで真面目に勉強しろ!お前はやれば出来るんだからな!」 次に返ってきたのは予想道理の答えで、疑念が確信へと変わる 同じ人間には一度しか効かないってわけか… それさえわかれば使い道は山ほどある。 さてどうするか、そう考えながら校舎へ向かうため後ろを向くと、ススキ色の髪の毛が飛び込んできた。 男はしまったという顔をすると「俺、何も聞いてませんから!!」と焦ったように両手を振る。 それでは聞いたと言ってるのと同じだろう…。 コイツは馬鹿だ、そう思ったが聞かれた以上放っておくわけにはいくまい。 「今見たことは全て忘れろ!!」 絶対遵守の力を発動させる。 男は「はい。」と言い、瞬きをした。次の瞬間には不思議そうに周りを見回している。 よし、これでいいだろう。 コイツが誰かに「ルルーシュ・ランペルージが教師に問題を聞いていた」などと言っても誰も信じないとは思うが、用心するに越したことは無い。 あたかも今会ったかのように「早く行かないと遅刻するぞ」と言って校舎に向かうと、「え、うそ!?」という叫び声と足音が聞こえた。 STAGE 1 はじまり 「笹川了平だー!座右の銘は極限!」 「六道骸です。クフフ、よろしくお願いします。」 「城島犬だびょん!」 「…柿本千種」 教室に行くと、わけのわからない転入生が4人もやってきた。 いや、実際は5人らしい。笹川と名乗った男が「ヒバリはどこだ!?極限にプンスカだぞ!!」などと言っている。 …どういうことだ? 転入生が来るなんて、生徒会にも知らされていなかった。 余程急な決定だったのか。だとしても、こんな中途半端な時期に姓の違う4人…いや、5人が同時に転入だなんて異例にも程がある。 編入試験を受けたという知らせも無ければ、今日はクロヴィスが暗殺された翌日だ。 ブリタニアが送り込んできたスパイか? それならば早々に手を打たなければならない。 だが落ち度は無かったはずだ。俺が犯人だとわからないように偽装工作は完璧だった。 とにかく今は情報が足り無すぎる。コイツ等がブリタニアのスパイだと決まったわけじゃない。 クラブハウスに行って資料を見るのが手っ取り早いか。改ざんされている恐れもあるが、だとしたらどこかに違和感があるはずだ。 それを見つけることなど、俺にとっては造作も無い。 「ルルーシュー?なんかぼっとしてない?」 「ああ…パイナップルって今売ってたっけ?」 「ははっ、確かに思い出すよなー。けど5人も転入生がいて何で女の子が1人もいないんだよー。」 「ヒバリっていうのが女かも知れないだろ」 「下の名前はキョウヤだって。」 「そりゃ残念」 リヴァルの話を流しつつ、ある方向に目を向ける。 カレン・シュタットフェルト 昨日、ゲットーでグラスゴーに乗っていた女。 転入生がただの学生であれ、ブリタニアのスパイであれ、まずはカレンをなんとかしなければならない。 証拠は残していないのだから、ボロが出るとすれば「新宿」という単語を言ってしまったあの女からだ。 転入生がスパイだったとしてもカレンさえ何も言わなければ問題は無いし、俺があの「声」の人物だという疑心も早くとかなければ後々面倒なことになってくる。 「カレンさん、少しいいかな?」 放課後、誰もいないであろうクラブハウスにカレンを誘い、計画の準備をした。 ―同時刻、クラブハウス裏の庭園を六道骸は歩いていた。 「…全く、なんなんですかこの学園は!!」 (全寮制だと言うから、ボンゴレとラブラブ2人部屋ライフを楽しみにしていたというのに、よりによって雲雀恭弥と同室だなんて冗談じゃない!! 学年も違えば、寮の階数まで違うって、これじゃあ何時沢田綱吉と会えばいいんですか!! 大体、クラスにいた黒髪の男。僕を見てパイナップルと言った雲雀恭弥と同じ黒髪の男。許すまじ…!!) ボンゴレに止められていなければ今すぐ殺してやるのに、と物騒なことを考えながら歩いていると、学園では珍しい、制服では無く白い服を来た女とすれ違う。 刹那、鈍器で殴られたような激しい痛みが骸に襲いかかった。 「ぐっ!?」 「あ、あああ!」 思わず頭を押さえると、女も頭を抱えたまま苦しそうに地面に崩れ落ちる。 「これは…一体…っ」 痛みをこらえながら見れば、女のほうは気絶してしまったようで草の上に横たわっている。 すると痛みも引いてきて、同時に頭の中が妙にクリアになった。 「これは…」 左目に六道輪廻とは違う、新しい力が宿っている。 「生徒会って言っても、大して仕事は無いんだ」 にこやかに話かけながらも、頭の中はさっき知った衝撃の事実で一杯だった。 「声」の偽装工作は問題ない。カレンも疑っている様子は無い。それよりも今は転入生だ。 転入生はブリタニアのスパイなどでは無かった。 もっと遡って言えば、転入生は5人ではなかったのだ。 今日この学園に転入してきたのは全部で9人… 皆、イタリアのボンゴレファミリーというマフィアの一員だった。 おかしいとは思った。イタリア人と言いながら、全員日本人の様な名前をしていて。 彼らは人種こそ日本人だが国籍はイタリアで、ボスである沢田綱吉は初代の血を引くボンゴレファミリー正統後継者であるらしい。 マフィアの中で最も強大な権力を持つボンゴレファミリー。 その力によって、彼らはイレヴンでありながらイタリア人としてこの学園に転入でき、なおかつ編入試験も免除となった様だ。 …くそっ!! 沢田綱吉というのは、今朝ギアスをかけたススキ色の髪をした男だった。 強大な力を持つマフィアを仲間に出来れば、ブリタニアをぶっ壊す大きな戦力になったものを…!! ギアスは同じ相手に二度使用することは出来ない。 つまり、あの男をギアスで仲間に引き入れることは不可能なのだ。 「ルルーシュ?」 「っああ、ごめん。イベントっていうのは、男女逆転祭とか絶対無言パーティーとか、水着で授業とか…」 その時だった。 「危ない!」 カレンの叫び声と同時に腕を引かれる。 何かが割れる音とともに、馬に乗った生徒が窓を突き破ってこちらに向かってきたのだ。 引っ張られたおかげでギリギリ避けることが出来たが、まさに間一髪。 「どうしたのですか!?」 「危ないからナナリーは離れて!」 騒ぎを聞いた生徒会メンバーが駆けつける中、元凶の生徒を見る。 馬術部の様で、なにがあったかわかっていないようにあたりをきょろきょろ見回していた。 …おかしい。自分で突っ込んできたくせに、何が起こったか判らないのか? 「おいお前!何故クラブハウスに突っ込んできた!?」 「え?いや、あの?」 ギアスを使っても答えられない。そう、まるで記憶が無いかのように…!? 壊れた壁の向こうに目を向けると、人影が去っていくのが見えた。 後姿で、顔まではわからない。しかし…あの髪型は… 「あ、ちょっとルル!?」 シャーリーが引き止める声が聞こえるが、今はそれどころではない。 六道骸だった。確信は無いが、あんなふざけた髪型の奴はアイツしかいない。 それか、資料で見たクローム・髑髏という転入生…だがあの人影は小柄なクロームのものとは思えない。 「くそっ!見失ったか!!」 もし、あの生徒が操られていたのだとすれば… 六道骸は、ギアス能力者かもしれない 「クフ…クフフ…クハハハハ!!」 校舎裏から、怪しい笑い声が響く。 数分前、左目に六道輪廻とは別の何か新しい力が宿っていると気づいた骸は、近くに居た馬術部の生徒にその力を使って命令を下した。 「あそこにいる黒髪の男に突っ込んできなさい」と。 案の定その男はルルーシュに突っ込み、クラブハウスはめちゃくちゃ。 残念ながら怪我をさせることは出来なかったが、女性に助けられるという恥をさらしたのだ。まあいいだろうと骸は考える。 「これはいい力を手に入れましたよ!!」 先程試したところ、これは“絶対遵守の力”と見て間違いなさそうだ。 つまり、相手にどんな命令でも従わせることが出来る。 「この力と六道輪廻があれば僕は無敵です…クフフ」 骸は顔を歪ませると、怪しい笑みを浮かべた。 そうだ、この力で 「僕はマフィアをぶっ壊す!!」 (その為には、まず沢田綱吉を手に入れましょう。 結婚してしまえばいいですね。日本には亭主関白と言う言葉があるくらいですから、妻にしてしまえば夫である僕に従うはずです。 クフフフフ…ボンゴレが僕の妻ですか。クフフフフ、クハハハハ!! いいですね、最高です。本当になんていい力を手に入れたんでしょうか!) そうと決まれば膳は急げですと、骸は校舎へと駆け出す。 ツナがどこにいるかわからない為、しらみつぶしに探し出そうとしたときだった。 散歩だろうか。一人でツナが歩いていたのだ。 (なんということでしょう!!まさに運命ですね!!) 「ボンゴレ〜!!」 ぶんぶんと手を振ると、骸に気付いたツナは嫌そうに顔をしかめた 「げっ、骸…」 (クフフ、照れ屋さんですね僕の奥さんは!!) 「こっちに来てください。話をしましょう。」 ツナが照れて逃げないように、あくまて“照れて”逃げないように今度はギアスを使って言う。 (おとなしく僕のほうに歩いてきましたよ!いつもと違って新鮮ですね!) 「話って…。」 「僕たちの今後についてです。ボンゴレは何か希望とかありますか?」 「…ヒバリさんと揉めないでくれ。」 「ぐっ!難しいことを言いますね…」 そこで初めて、ツナの目が赤くなっていることに気がついた。 (まるでウサギみたいじゃないですか。) 「ボンゴレ、その目はどうしたんですか?」 「目?別にどうもしていないが・・・。」 (となると…もしかしてこれもギアスの影響でしょうか…。赤目のボンゴレも可愛いですが、いつものほうがいいですね。) 「そうですか…わかりました。」 (では世間話は終わりにして、本題に移りましょうか!) 「それでですねボンゴレ。ここからが本題です。」 「…骸?」 「くすり指のサイズは11号でしたよね。デザインはどんなものがいいですか?」 「…は?お前何言ってんの。頭大丈夫?」 (…ん?何かおかしいですね。そういえば、ボンゴレの目が元に戻っているじゃないですか!) もう一度ギアスを作動させ、今度はもっとストレートに言ってみる。 「挙式はいつがいいですか?やっぱりジューンブライドですかね?」 「沸いてるのはその髪型だけにしてください」 心底嫌そうな目で骸を見た後、ツナは振り向かずに去って行った。 「ちょ、ボンゴレエェ!?」 (どういうことですかこれは!!まさか、あの力が無くなったと!?) 「ちょっとそこの君!校舎まで全速力で行って戻ってきなさい!!」 急いでそこを通りかかった生徒を実験台にする。 何人か試してみたところ、同じ人間には一度しか効果が無いことがわかった。 「そんな…馬鹿なことが…」 骸は力なくその場に崩れ落ちる (大切な、大切な1回をなんてくだらないことに使ってしまったんですか!!) …いや、まだだ。諦めるのはまだ早い。 幸い他のファミリーには、まだ一人も使用していない。 ―ならば、周りを利用するまで 「俺は」 「僕は」 「「必ず彼を手に入れる!!」」 同じ時、同じ場所に2人のギアス能力者が存在したのは運命なのか 求めるものと条件は同じ そちらが有利にコマを進め、彼の者を手中に収めることが出来るのか 今はまだ、誰も知らない |