「ルルーシュ。いくつ終わった?」
「まだ1つ目だ…」
「俺も…なあ、なんでこんなことしてるんだ?」
「俺に聞くな。会長に聞け」
「会長〜…」
「ええい軟弱どもが!ハロウィンといえばカボチャと相場は決まってるのよ!」



STAGE EX trick or treat?




「ですが会長…俺とリヴァルだけでカボチャを生徒会全員分くり抜くのは無理がありますよ」
「そうですよ〜。これすっごい硬くて手が痺れました」
「ちょっと頑張ってよ、男の子でしょ〜?」

男だからって無理なものは無理だ。
こういう時こそスザクの出番なのだが、生憎と今日は休みなのだ

「大体、ハロウィン用のカボチャならスーパーに売ってるでしょう。どうしてそっちを買わなかったんですか?」
「だって自分達でくり抜いたほうがそれっぽいじゃない?1つ1つ違う顔だからいいのよ!」

なら自分のぶんは自分でくり抜いて欲しい…
はっきり言うが、俺やリヴァルよりも、カレンやシャーリーや会長の方がよっぽど得意そうだと思う。
特にカレンは簡単にやるに違いない。…くそっ、手が痛くなってきた。明日筋肉痛になりそうだ。

「…会長、そろそろ同好会の方に顔を出したいのですが」
「ずるいぞルルーシュ!1人だけ逃げる気か!?」

ずるくない。断じてずるくないぞ。そろそろ行かないと、加減を知らない笹川と山本が備品を破壊しそうだから仕方なくだ。

「ダメよルルーシュ!生徒会が優先!」
「そうだそうだ!」
「直ぐ戻ってきますから…」
「どうしてもって言うなら、カボチャくり抜いてからにしなさい!」

それでは永遠に生徒会室から出られないじゃないか…

「…ははーん。そんなに沢田君に会いたいってか〜?いいわね〜若いって。」
「何々?何の話?」
「…手が止まってるぞリヴァル」

誤魔化すようにカボチャへスプーンを差し込む
勢いが良すぎて、深く刺さって抜けなくなった

「あ〜も〜、何やってんだよ」
「一度に多くくり抜こうとしただけ、だっ…!!」

力任せに引っ張ると、スプーンは手からすり抜け壁へと激突した。


「ルルーシュ…」
「…悪かった。」
「…やっぱり無理があったかしら。手作りカボチャでハロウィンパーティー」

ようやく会長が諦めてくれそうな時、控えめにドアを叩く音が響いた


「はーい?」
「失礼します」
「ツナ?」
「生徒会中すみません。ルルさんに聞きたいことが…?」

そこまで言って、ツナの言葉が止まった。正確には、驚いて言葉を続けられなかったのだが。


「えと…取り込み中でしたか?」
「いいのいいの。カボチャくり抜いてただけだから。」

大量のカボチャに囲まれてスプーン片手に格闘している様は、さぞ異様だったのだろう…

「それより、何かあったのか?ちょうどそっちに行こうとしてたんだ」
「おい、ルルーシュ…」

さぼるなよ、とリヴァルが目で訴えてくるが気づかないふりをする

「実はお兄さんがまたサンドバック壊しちゃって…部費の残りで新しいの買えないか聞いてきて欲しいって。」
「おいおい。この間買ったばかりだろ。どんな使い方してるんだアイツは…」
「すいません…」

しかし困ったな。ただでさえ同好会という立場は部費が少ない。
正式なクラブでないのだから当たり前であり、活動していくには充分な金額を貰っているから特に不満に思うことも無いのだが。

こうも頻繁に備品を壊されるとそうも言ってられなくなる。

「新しいサンドバックを買うと、タオルやドリンクを買う費用がなくなるな…」
「すみません、俺も気をつけて見てるつもりだったんですけど…」

おそらくツナが少し目を離した隙に極限太陽を使ったのだろう。
それでいくつ犠牲になったことか…

「は〜い、ちょっといい?部費が足りないなら、いいバイト紹介するわよ」
「え?」
「会長、まさか…」
「部員全員でカボチャのくり抜き!生徒会と同好会メンバー全員分だから1人ノルマ2個ね。全部くり抜けたらおじいちゃんに頼んでサンドバック代は何とかするわ!」
「いいんですか?」
「ルルーシュとリヴァルじゃ頼りにならないしね〜」
「会長!」
確かにその通りだが…ツナの前で言われると…

「じゃあ俺、皆を呼んできます!」
「ちょっと待って!リヴァル、悪いんだけどスポーツ同好会行って今のこと説明してきてくれない?」
「俺?別にいいですけど…」
「沢田君とルルーシュはこっち!別な仕事を与えます!」




このときの会長の笑顔に、なんとなく嫌な予感がした。







「どういうことですか、会長…」
「あら、ハロウィンなんだから仮装は当たり前でしょう?」
「仮装なんですか?これは」

連れてこられた先は案の定衣裳部屋で、ああ、とうとうこれが始まったかと思ったのだが…


実際更衣室に押し込められたのはツナだけで、俺はといえば何故か制服のジャケットを脱がされている


「この季節にシャツ1枚は寒いですよ」
「我慢しなさい!それにしても沢田君遅いわね」

確かにツナが更衣室に入ってからもう10分が経過している

どんな服でもそれだけあれば着替えられると思うが…

「…会長。ツナに何の服着せたんですか?」
「それは見てのお楽しみよ。沢田君!着替え終わったー!?」

会長は扉に近づくと大声で叫ぶ。
小さな声で返事が聞こえるが、ここからでは何を言ってるのかわからない。

「何言ってるの!いいから着替え終わったなら出て来なさい!」
「うわあ!ちょ、待ってください!」

会長が無理矢理扉を開け、ツナの腕を引く

「…!!」
「うー…これ、喋りづらいです」
「よいではないかよいではないか!うん、可愛いわよ沢田君!」

ツナは下こそ制服のままだったが、黒いマントに身をつつみ、恥ずかしそうに現れた
おそらく偽物であろうが、口からは八重歯が覗いている

「ちょっとルルーシュ、真っ赤になってないで何か言いなさい!」
「いや、その…すごく、かわいい…」

まずい、目をあわせられない。
ほんの少し、ただマントと八重歯をプラスしただけなのに可愛すぎだろう!!

「ルルさん…無理しなくていいですよ…」
「無理などしていない!!」

いや、実際はしている。ものすごくしている。正直、直視できない。


「じゃあ沢田君。さっき私が教えた台詞!」
「えと…trick or treat?」
「ん?ちょっと待ってくれ。確かここに…」

昼にシャーリーに貰った(というか押し付けられた)飴があったのを思い出し、ポケットから取り出すとツナの手に乗せる

「あ、ありがとうございます」
「いや。」
「……沢田君。もう一回。」
「え?」
「もう一回ルルーシュに同じ台詞を言いなさい!!」
「ト、trick or treat?」
「確かあっちの棚に来客用の菓子が…」
「ストーップ!!!」
「何ですか。」
「ルルーシュ!そこは“お菓子は無いから悪戯されます”でしょ!?」
「はい?」
「あーもう!来客用の菓子はルルーシュのじゃないから駄目!!よって沢田君、ルルーシュに悪戯しなさい!」
「ええ!?」
「会長、何を言って…」
「いいから私に任せなさい!!何の為にジャケット脱がせたと思ってるの!!」

さっきからそれを聞いているのだが…

「でも、悪戯って何をすれば…額に肉とか?」
「それも面白いんだけど…今回はハロウィンにちなんで吸血ツナ君にしましょう!」
「なんですか吸血ツナ君って…」
「見て分らない?吸血鬼よ」

ツナが吸血鬼の仮装をしているのは分かるが、それと悪戯に何の関係が…

「つべこべ言わずにルルーシュはそこに座る!沢田君はその上!」
「ちょっ、会長!?」
「わああ〜!」

会長に勢い良く押され床にダイブするのと、何かが倒れ掛かってくるのはほぼ同時で、衝撃と共にシャツが引っぱられる

「…!?」
「いつつ…」

尻餅をついたことで感じた痛みに顔を上げると、至近距離に信じられないものが飛び込んできた

「…つ、な!?」
「え……?わああ!!」

同じく会長に押されたのであろうツナが、俺の上に跨っていたのだ

「すみませんすぐ退きますか…うわっ!!」
「ツナ!!」

焦って退こうとしたツナがバランスを崩す。急いで引き寄せると、さっきよりずっと近い距離で瞳がぶつかる

「すすすすみません!!!」
「いや、俺のほうこそ!!」

謝るのと同時に、まぶしい光が視界をさえぎった。同時に聞こえてくるシャッター音。

「……会長?」
「いいわよ〜。沢田君、そのままルルーシュの首筋に噛み付いて!」
「はい!?」
「ほら早く!」

会長はカメラを構えたまま意気揚々と指示を出す

「あの…会長?」
「生徒会主催のイベントは全部写真にのこしてるでしょ。せっかく吸血鬼の仮装してるんだから、血を吸ってる画がほしいじゃない。」
「で、でも!」

確かにイベントがあるたびに写真は残している。
だがその殆どは準備風景であったりイベント中の1枚であったりで、こういう風にポーズを決めて撮ったものは少ない。
そもそもシュチエーション設定が恥ずかしすぎるではないか!!

「いいからちゃっちゃとやっちゃいなさい!男同士でしょ!恥ずかしがることなんて無いわよ!」
「むちゃくちゃな…」

恥ずかしがらないというのは、意識していない間柄だからできることだ。
ツナのことを好きだと自覚してしまった以上、首筋に噛み付かれるなんて、意識しないわけがない。

「ほら、沢田君。ガブッといっちゃいなさい!」
「で、でも、ルルさんも嫌そうですし…」
「なに?嫌なのルルーシュ」
「そんなはずないだろう!!」
「やっぱり恥ずかしいですよ〜!!」
「…!?」
「直ぐ終わるわよ」

恥ずかしい!?恥ずかしいのか!?ツナも!?
つまりそれは俺を意識してると、そういうことなのか!?
いや待て!早まるな。自分に都合の良い考えに持っていこうとしてないか?
ここは冷静になって考えるんだ。

「ルルさん…?」
「!!なんだ?」
「その…え〜と…」

ツナは会長のほうをチラチラ見ながら、恥ずかしそうに頬を染めている。


……これは間違いない!!


「ツナ!」
「はい!?」
「俺はお前が…」

「ルルーシュ!ここにいたのか!」
「かいちょ〜!カボチャ終わりましたよ〜!!凄いんですよ、山本君が刀で一気にいくつも…」
「なあなあ、これ被ったら面白くねー?」
「言ってろ野球馬鹿!」


突然の乱入者に、告白も思考回路も停止せざる得なかった


「お?」
「え?」
「あ?」
「はあ!?」

笹川達は俺とツナを見ると…動きを止める
最初に意識を取り戻したのは獄寺だった

「す、すみません10代目ええ!!!」
「え、あの獄寺君?」
「お取り込み中とは知らず、大変失礼いたしました!!」
「わりーなツナ。でも鍵はかけとけよー?」
「なんだ?なにをしていたのだ?」
「てめーは黙ってろ芝生!!」
「なんだと!?俺にもわかるように説明しろー!!」
「悪いルルーシュ!まさかこんな…てか、会長の前で何やってんだよ〜!!」


そういえば、会長の前で告白しようとしていたのか…だが騒ぎ方がおかしい。
告白現場を目撃したというより、もっと別の…



「ち、違うよ獄寺君!!山本も!!」
「いーからいーから。邪魔して悪かったな。直ぐ消えるから!」
「ルルーシュ・ランペルージ!気に入らねえが10代目が選んだんじゃ仕方ねえ…10代目を満足させなかったら承知しねーからな!!」
「ルルーシュ、もてるのに誰とも付き合わないと思ったらそういう趣味があったんだな…」
「ちょ、違うよみんな!待って!!」

「おい!ツ…」

呼び止める暇も無く、ツナは笹川たちを追って行ってしまった

告白が途中なのに…

「なんだったんだ?あいつらの態度…」
「…どうやら、ルルーシュが襲われてると勘違いされちゃったみたいねー…」
「はい?」

会長が指差す先を見れば、無理矢理裂かれたかのようにシャツが破れ、ボタンが取れていた



「それ、倒れたとき破れてて…ずっと沢田君が教えようとしてたんだけど、面白いからそのまま写真撮影しようとしたの…ごめんルルーシュ!」

倒れたときに破れてた…?
じゃあツナが恥ずかしそうにしてたのは…俺が好きだからではなく…


「俺が、裸だったからか…」
「でも裸って言っても全部見えてるわけじゃないし!」


「フ…ハハハハ」
「…なんかごめん、ほんと…」















―同時刻、クラブハウスにて
「だから、さっきのは違うんです!」
「でもルルーシュのシャツ脱がせたのって沢田君なんだろ?」
「あれは、俺が倒れたとき引っぱちゃって…とにかく、ルルさんと俺はそんなんじゃないんです!事故です!!」
「…まあ、あれは事故だとして、ツナは先輩のことどう思ってんだ?」
「ええ!?」
「…10代目?」
「ルルさんは…すごく優しくて、かっこよくて、素敵な人だと、思う…よ…」
「…沢田君」
「ツナ、お前…」
「10代目…!?」
「???お前ら何の話をしてるのだ?」

真っ赤になって答えるツナに、こりゃ時間の問題だなと山本が思ったのは、また別なお話。