悪逆皇帝ルルーシュの死後、世界は大きく変わった。

戦争に向けられていた力が、今は飢餓や貧困に振り分けられていて。

世界は優しくなったのだ。


そう、だけど―





「お久しぶりです。ツナさん。―お兄様。」





私にだけは、優しくなかった






AFTER STAGE  のこされたもの






倒れかかった大きな桜の木の前に、お墓が3つ並んでいる。
1つは笹川京子さん、もう1つはツナさんの名前が書かれている。
お兄様が皇帝になって密かに、だけど1番に作らせたものだとジェレミアさんに教えてもらった。


そのお墓の横に、もうひとつ。何も書かれていない墓石が並んでいる。


「京子さんはじめまして。ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。」


私は、ツナさんが亡くなったことも最近まで知らなかった。


「今日は戦後初めて、皇帝として日本に来たんです。扇首相とお会いしましたよ。」


無知で、浅はかで、なんの力もない。


「世界が優しくなるには今後どうすればいいか、一生懸命考えてくださいました」



これは、この世界はあんなにも私が望んだ世界なのに。

お兄様が命と引き換えに、叶えてくださった世界なのに。




「扇さんは、お兄様と一緒に黒の騎士団を率いていたそうですね。お会いできて、嬉しかったです」


憎んでしまう。お兄様を悪く言う扇さんを。お兄様のことを悪くいって、ニ度とあのようなことが起きないようにと高々という姿を。




「わがままを言って、少しだけ自由時間を頂いたんです。どうしてもここに来たくて。」



泣きそうになる。駄目。駄目よ。お兄様に心配かけてはいけない。


私は幸せですと。だからお兄様は天国でツナさんと幸せになってほしいと言いたいのに。


「お兄様。私は…」





「………ナナリー、なのか?」







突然聞こえた声に驚いてふりかえる。どこかで、聞いたことのある声…




「…驚いたな。日本に来てると聞いたから、まさかと思ったが…」




「了平、さん…?」


綺麗なお花とグローブのようなものを持ったTシャツ姿の男の人。姿を見るのは初めてだけど、その声は懐かしいものだった。
まだお兄様もツナさんもいたときに、何度も聞いた声。



了平さんはお花を墓前に供えると、目をつぶって手を合わせた。



「…ルルーシュ。お前のおかげで、俺はボクシング選手になれた。もう夢なんて忘れてたんだ。
 俺は一生、マフィアとして生きていくつもりだったからな。…ありがとう。」




「っ…」




涙が出そうになる。了平さんは、わかっていたんだ。







「ナナリー。」


「っ…はい。」



「これを」



了平さんが手にまいていた白い布を取る。よく見るとスカーフのようだった。




「沢田が怪我をしたとき、ルルーシュに巻いてもらったものだ。その時はゼロとしてだったが…お前が持っていてくれ」




「でも、大切なものなんじゃ…」



「ルルーシュの遺品はすべて管理されて、手元に残ってないのだろう?お前が持っていた方が、ルルーシュも沢田も喜ぶ。」



「ありがとうございます…」





お兄様のスカーフ。お兄様が、ツナさんに巻いた。お兄様が…!




「…おにい、さま…!おにいさま、おにいさま…!!」







大好きな、大好きなお兄様。






貴方は今幸せですか?