骸様。




どこにいるの、骸様。




苦しい。




骸様、返事をして。






「骸…様…」






STAGE 36  Cの世界




乱暴に扉が開かれる
ノックも無しに病室に駆け込んできた獄寺隼人を犬と千種が睨んだ。


「おい」
「勝手に入ってくんじゃね〜びょん!」
「ノックくらいしたら?」

獄寺隼人は2人を無視してベットを覗き込む。目があった。

「骸はどこだ?」
「…骸…様?」
「てめぇと骸は繋がってんだろ!!さっさと骸の居場所を吐きやがれ!!」
「痛いっ!」
胸倉をつかまれる。点滴の針が食い込むのを感じた

「離すびょん!」
「それ以上やると…」
「獄寺ストップっ!」

いつの間に入ってきたのだろう。山本武が獄寺隼人を羽交い締めにし、落ち着けようとする。

「山本!?離しやがれ!」
「こいつらはあの場にはいなかったんだろ?八つ当たりするな」
「そうでもしなきゃ収まらねぇんだよ!」
「わかってる。皆悲しいんだ」

悲しい…?

「何の話?」

「ツナが…死んだ」



え…?



「ボスが…死んだ?」
「ボンゴレが…」
「…」

思いもよらない言葉に驚く。


「骸が殺したんだ!!」
「ぇ?」
「骸様が…」
「殺した?」

言葉の意味が飲み込めず、暫く唖然とする。
ボスが死んだということだって信じられないのに。
骸様が、殺した…?

「そんなはずない。骸様はボスを大切に想ってる。」
「俺達もそう思ってたよ。骸は元敵で、無茶苦茶だけど、ツナは傷つけないって」

そう。骸様とボスに近い人間は皆知っている。

「骸様がそんなことするはずねーびょん!」
「事実だ!現にその女の内臓も消えたじゃねーか!アイツは俺たちを裏切ったんだよ!いや、もともと仲間なんかじゃなかったんだ!」
「んだと!?」
「犬!」

「誰が…骸様がボスを殺したって言ったの?」
幻覚が消えたのは、骸様の具合がよくないからだ。だから、ボスのこととは関係ない。
骸様が殺したと言った人間が、嘘をついた可能性もある。

『ヒバリだ』
山本武の胸元から、アルコバレーノの声が響く。通信が繋がっていたようだ。
『正確には、「ルルーシュ・ランペルージに憑依した骸」が殺したと伝えてきた』

普段と違う気配を纏ったアルコバレーノの言葉に、ボスが死んだのは本当だとわかった。だけど。

「雲雀恭弥は…どこ?」
「いねぇんだよ!」
『もう戻って来ねぇだろうな。ヒバリを縛る契約は切れた』


契約…。



『雲雀恭弥はボンゴレの真意には逆らえません。契約によって縛られているからです』
『クフフ。まるで猛獣を繋ぐ絶対的な首輪のようですね』


「何か骸の手掛かりを見つけたら教えろ」

それだけ言うと、獄寺隼人と山本武は出て行った。








「何かわかるか?」
「骸様のまわりを強い力が包んでて、骸様の様子がわからない」
「…」
「でも、骸様は正気じゃない。強い力に汚染されてる」
「どこにいるびょん!?」
「…森…ボス……きゃっ!」
「クローム」
「平気。弾かれただけ」


骸様の精神の深い場所を探ろうとして弾かれた。
私は骸様と繋がっているから、骸様の事が少しわかる。
それ以上を知りたいなら、骸様との繋がりを利用して骸様の精神の深い場所を危険を覚悟で探すしかない。
でも、骸様…骸様を汚染してる力が拒む。



「森とボンゴレ?」
「何の関係が…犬」
「んぁ?」
「ボンゴレと骸様が出会ったのは森だって…」
「そうらった!でも、あれはココじゃないびょん」



犬と千種が知っている骸様の過去。
私は知らない。
私が出来るのは…。



「たしかに、あれはこの国じゃない」
「骸様、答えて……ゴホッ」
「!」
「クローム!」
「ゲホッ…ゴホッ…に…」
「ぇ?」
「骸さ…並中…裏…森…」



激しい拒絶にあい、幻覚が汚染される。
それでも、少しだけ骸様が教えてくれた気がする。




「旧並盛中裏の森は…ここだね」
「はぁ…はぁ…」

並中に…骸様に近づくほど、幻覚の内臓が汚染されていく。

「クローム、行ける?」
「行く」

だけど私は、骸様にボスの事を聞きたい。

「犬」
「わかってるびょん!」
「…行くよ」







木に囲まれた森の中。光もなにもあたらない場所に、骸様はいた。

「骸しゃんっ!」
「骸様…」
「骸様、ボンゴレを殺したって本当ですか?」

血まみれで立つ骸様は威圧的で…怖い。

「骸さ…犬っ!」
「ぎゃんっ!」

骸様に近付こうとした犬が三叉槍で切りつけられる。

「犬っ!骸様っ!?」
「うっ…骸様は…」
「クフッ」
「もう…骸様じゃない」
「クフフフフ」

骸様の笑いが…響いた。


「骸…様…」

愕然とする。
骸様が犬に本気で攻撃した事に。
私達に向けられた殺気に。

「何でれすか…」
「っ…ぐっ…」
「何なんらよ!!」
「骸様の意識が感じ…っ…られない…」
「どういう事?」
「はぁ…はぁ…右目…」

骸様の幻覚の汚染が拡大している。
内臓が…保てない。

「右目?」
「強い力…骸様の力と反発してる。王の意志…孤独…」

何?
これはダレ?
ここは…ナニ?

「…」

骸様?

「骸様の意識をのっと…うっ!」
「お前は厄介ですね」


首を締め上げられて、呼吸が更に苦しくなる。
でも、骸様に直接触れてるから、わかる。
骸様は苦しんで、悲しんで、痛がってる。


「クローム!」
「ここで殺しましょうか」




頭に流れ込んでくる。
これは…骸様の過去?
優しい骸様。
ボスにしか見せない優しい笑み。
骸様は本当にボスが大切だった。




「うっ…」
「骸様っ!」





ギアス。
絶対遵守の王の力。
だけど、その力の持ち主は骸様じゃない。
契約を交わしていない力を得て、その力と骸様の力が反発した。





「やめるびょん!」




骸様は必死に抵抗していた…。
だけど、骸様に生まれた負の感情に…つけ込まれた。




「むくっ…!」
「しぶといですね」






ナニ?
ルルーシュと…ボス?
ルルーシュが…ゼロ?
そして、骸様は…。







「…ルル…ュと…ボス…」


「っ…」



首を絞めていた手が離される





「げほっげほ…」

「沢田…綱吉…」

「骸様?」
「骸さん?」

「ルルーシュ・ランペルージ…僕の…」

「げほっ…骸様…」




混乱している。
骸様の感情が不安定。





「僕は…」

「ボンゴレの奴らが、骸様がルルーシュ・ランペルージに憑依して、ボンゴレを殺したと言っていました」
「嘘れすよね?」

「僕が殺した?沢田綱吉を…?」

「骸さ…うっ…」
「クローム?」





ダメ。
骸様、思い出しちゃ…今意識を保っちゃダメ。





「…殺し…」

「ぁ…だめ…むくっ…」
「嘘ですよね?」

「綱吉君を…殺し…」

「ダメ。止めて…ダメ…」
「沢田綱吉を殺したなんて嘘れすよねっ!?」

「僕が…」

「骸様っ!」
「骸さんっ!」


「ダメーっ!」




「僕が…ボクガコロシ…っー!!」






骸様の意識が…消えていく。
浸食される。
Cの…世界…。





骸様が、三叉槍で私たちをなぎ払う。
最期に見たのは、紅い世界。
大切な人が、大切な人に殺される。
ごめんなさい、ごめんなさい。
骸様の苦しみに、気付いてあげられなくて。


「骸…様…」


薄れゆく意識の中で、骸様に手を伸ばす

骸様は無表情のまま、三叉槍で私の胸を突き刺した