登校してきた生徒達が立ち止まり、ポスターを見ている。

その様子を部屋から眺めていた。


この学園の生徒会長のイベント好きには本当に敬服しますよ。

マラソン大会、男女逆転祭り、乙女の日、メガネ祭り、スポコン祭、和装祭り、小学生の日…他にもありましたね。

毎月…下手をすればそれ以上何かをやっていることになり、今回はコレになりましたか。

風紀委員長争奪戦。

賛成したとはいえ、争奪するほどのものではないと思うのは僕だけではないはずですし、雲雀恭弥以外に乗り気な人間がいるのかが疑問です。

多分いないでしょうけど。

ポスターに書かれた日程は今日から5日後。

昨日の放課後に突発的に実施が決まったのだから、告知までに12時間かからず、実施に1週間かかっていない事になる。

その場にいたルルーシュ・ランペルージが嫌そうな顔をしていた理由がわかった気がしますよ。

おそらくあの後生徒会長に企画の詳細や、備品関係についてやらされたんでしょうね。

ご愁傷様です。
別に同情なんてしませんが。

「っ…」

唐突に右目が痛む。

違和感を感じたのはクロームが攫われてから暫く経った頃だった。

初めは目が疲れたのだろうとしか思っていなかったが、日がたつにつれ痛みが増していった

メガネ祭りの日にとうとう耐え切れず…数分間、あるいは数十秒間、力の制御を失った。


「ギアス…」


右目に本来宿っていた六道輪廻の能力とは異なる能力…ギアス。

他人を意のままに操るほど強力な能力が偶然、何の代償も無しに手に入るはずが無い。

恐らくこれは…副作用

あの時のように力を制御できなくなるほどの強烈な痛みは今の所無い

だが、痛みを感じる頻度が増えていると同時に、痛みが増している気がする。

そんな時部屋の扉が開いた。


「あぁ、いたの」

「…ご機嫌ですね」

「やっとこの学園を僕の物に出来るからね」

珍しく話しかけてくる雲雀恭弥に、よほど機嫌が良いことがわかる

あくまで今回は風紀委員長争奪戦なんですが。

つき合わされている枢木スザクにほんの少しだけ同情しますよ。

「この学園は生徒会長の物のような気がしますけど?」

「…」

「クフフ…っ」

いきなり右目が痛みだす。

それを悟られないように、笑う。

「ねぇ、その目…」

「なんですか?」

「…何でもない」

あっさりと引き、雲雀恭弥は学ランを翻しながら部屋を出て行った。

「はぁ…」

雲雀恭弥は侮れない。

「面倒な…」

右目が痛む。

「イラつきますね…」

その痛みをやり過ごすように、ベットへと身を投げた。







STAGE  31 異変








「はぁ…」

授業をサボるのはいつもの事だから、誰も気にとめてなどいないだろう。

「…はぁ」

でも、どうせならストーキングされるよりもする方が良い。

勿論ボンゴレ限定で。

ここで戦うわけにはいかない。

わざと敵が追いつける速さで歩きながら、ゲットーへ向かう。

アッシュフォード学園は自由が売りのようだが、部外者を…不審者を簡単に校内に入れてしまうのはもう自由とかそういうレベルの問題じゃない。

一度生徒会長に言った方が良いですかね…彼女が僕の言う事を聞くとは思えませんが。

雲雀恭弥が生徒会長を苦手としているように、僕も彼女が苦手だ。

勿論雲雀恭弥ほど苦手でもないし、露骨に態度に出すような真似はしない。

「はぁ…」

『溜息ついてると幸せがにげるぞ』

ボンゴレの言葉を思い出す。

幸せなど…とっくに逃げている。


「…はぁ」


もう何度目かわからない溜息をついた。


「出てきなさい。」

ゲットーの廃墟の中の広い空間で、足を止めて言った。

その一言をきっかけに、僕を取り囲むように現れた奴ら。

「匣ですか…」
「お前はボンゴレ10代目の霧の守護者だな?10代目はどこだ?」
「クフフ…やはり狙いは彼ですか」
「答えろ!!」

雷の炎を纏った蟷螂の匣兵器を壊し、素早くその持ち主の背後に回る。

「なっ…」
「終わりです」

躊躇無く首に三叉槍の矛を埋め込めば、簡単に相手は死ぬ。


「っ…」

突如、鋭い痛みが右眼に走る。


『あの時の…』
『骸様っ!!』
『どうしてこんな事!!』
『骸さん!!』
『ろ…む、骸?』
『お前は大切な仲間だ』
『俺に憑依する事が目的なら…それでも良いよ』
『骸しゃん』
『霧の守護者に…』
『お前の気持ちには答えられない』
『骸』


「クフ…クフフフフ…」

今更こんな事を思い出すとは…


苛々する


全てボンゴレのせいだ。

…ボンゴレの…せい?

何故僕はボンゴレのせいだなんて思った?

ボンゴレは何も悪くない。

そう、ボンゴレは何も悪くないはずだ。

全てはルルーシュ・ランペルージのせいだ。

あの男が現れてから、僕の計画が狂いだした。

「死ね、六道むく…」
「君が死になさい」

修羅道のスキルを発動させようとした瞬間、抉り取られるような激痛が右目に走り、血が流れて視界が赤に染まる。

…血…海に…

―――この醜い俗界を 純粋で美しい血の海に変える―――

そうだ、それが僕の目的。

沢田綱吉の身体を乗っ取り、世界を壊す。


「っ!」


痛みに注意力が散漫になる。
気が付いた時には遅かった。

「終わりだ、霧の守護者!」
「くっ…」
「死ね、六道骸っ!!」

終わってなどなるものか!

終わってなど…


ジュンスイ デ ウツクシイ 血  ノ  ウミ  ニ







「治まりましたか…」

記憶が飛んで、何が起こったのかよく覚えていない。

ただ、頭の中で誰かが話しかけてきたような気がした。

殺せ…と。

「…」


眼下に広がる光景は無数の死体と…血の海だけだった