授業の終わりを告げるベルが鳴る。 それと同時に鞄を持つと、背中に衝撃が走った 「うわっ!」 「ルルーシュ!どこに行こうとしているのだ!!」 「笹川…お前、呼び止めるならもう少し静かにしてくれないか」 笹川は聞いているのかいないのか、ぐわんぐわんと俺の体をつかんだまま手を前後に回す 世界が、回る…!! 「逃がさんぞ!最近お前と沢田2人して部活をさぼっているだろう!!今日こそは参加させると決めたのだ!!」 「そう、言われても、今日は、先約…うぷっ」 「沢田は山本が連れてくる!俺はお前を連れていく!!これで今日は全員参加だ!!」 それは困る…今日は、ツナの部屋に行く、約束、だ…今後のスケジュールを考えても、今日部活に、参加するわけに…は…うぷっ…目が、回る…笹川め…!! 「わかったら早速クラブハウスに行くぞ!」 ようやく動きが止まったと思うと、今度は肩に手を回され、そのまま引きずるように教室から連れ出される 「おい、その前に、手を放せ…」 くそっ…まだ世界が回る… 「そうだ!ルルーシュは携帯を持っているか?」 「…俺の話を聞いているか?」 「連絡網を作ろうと思うのだ!だから番号を教えてくれ!」 …聞いてないな。 「お前たちは寮、俺も学園内に住んでいるんだから別に必要ないだろ。連絡なんて、とろうと思えば簡単に…」 「じゃあ早速だが登録してくれ!俺はやり方がよくわからん!!」 笹川が携帯を差し出す。登録画面すら開いてないということは、本当に分からないらしい。 というか、俺の話を聞く気はないのか? こんなことをしている場合ではない。早くツナのところに行かなければならないんだ。 …そもそもツナは部屋にいるのか?さっき笹川が山本武がツナをクラブハウスに連れてくるといってなかったか? もしそうなら俺もこのままクラブハウスえ行った方が…いや、寮とクラブハウスは正反対の場所にある。 いなかったら余計な時間をくうだけでなく、部活から抜け出すタイミングを半永久的に失うことになる。 行政特区の式典が迫ってる今、1日も無駄には… 「…笹川。携帯なんだが、今部屋にあるんだ。登録するから取りに行ってきてもいいか?」 「む?それは仕方ないな。じゃあ俺はクラブハウスで待ってるから、早くするんだぞ!」 「ああ。悪いな。」 きょっくげーん!と叫びながらクラブハウスに向かう笹川を見届け、今来た道を急いで戻る。 「13分のロスだ…!!」 部屋に戻る暇はなくなった。そもそも俺の部屋のあるクラブハウスと同好会のクラブハウスは隣接している。戻れば笹川に見つかるかもしれない。 用意した菓子が持っていけないが仕方がない。明日ツナが来たとき渡すことにしよう。 そういえば、明日も笹川に捕まるかもしれないな…もっともその前に朝から今日のことで文句を言われるに違いない。 切り抜けるパターンは43通り… 「ええい…!!」 それよりも今は行政特区だ。黒の騎士団の方にも顔を出さなければならない。 全く、ゼロが世界より学園生活のことを考えているなど、ツナ以外はだれも思わないだろうなと思うと、なんだかおかしくなった 「…はぁ…はぁ…」 なんとか約束の時間前に寮へとたどり着く。 来客用チャイムを鳴らそうと手を伸ばしたとき、ボタンに触れる前にドアが開いた これはいつものことで、最初は驚いたが1日おきに訪れている今はすっかり当たり前になっている。 ツナの超直感。人の気配とそれで、誰が来たか、来るとわかってる場合ならなんとなくわかるらしい。 「ど、どうしたんですか!?」 「いや…笹川に捕まって…ツナは大丈夫だったか?」 「山本が張り切ってましたけど、獄寺君を使って逃げました」 「その手があったか…」 最も、笹川相手にそれは通用しないが。 「山本がお兄さんはルルさんを連れていくっていうから、時間を過ぎてこなかったら迎えに行こうと思ってたんです。」 「今頃、極限に逃げられたとか騒いでそうだな」 「ほんと。明日が怖いです」 ツナに促されて部屋へと入る。 ドアが閉まった時。それまで浮かべていた笑みが消え、真剣な表情に変わる。 「…じゃあ、始めよう。ゼロ」 それは沢田綱吉ではなく、ボンゴレ10代目の顔で。 「ああ、そうだな」 そして俺もまた、ルルーシュ・ランペルージではなくゼロとして、ツナの前に立つ 「ボンゴレと黒の騎士団の、日本解放について―」 STAGE 32 同盟 「これまで話してある通り、黒の騎士団とボンゴレで同盟を結びたいと思ってる。」 「それはこちらも同じだ。ボンゴレは信用に値する。戦力としても申し分ない。むしろ、戦力はこちらが劣っているだろう。」 「だがボンゴレは日本に手出しできない。EUとしての立場上、ブリタニアに下手なことをしたくはない。」 「黒の騎士団なら、ブリタニアと戦うことができる」 「そして、ブリタニアの植民地である日本出身の俺のことをよく思ってない者も多い。」 「だが、日本を取り戻せばそれは覆せる。それだけでなく、ブリタニアに勝ったということで、10代目として認めざるを得ない。」 「そう。そしてそこに合衆国日本を建国すれば…」 「ナナリーの安全は確保される。もちろん、日本に住む全ての民も。」 「だが、問題は…」 「世評と、内部抗争。」 「俺のことをよく思ってない上層部が、黒の騎士団との同盟を許すわけがない。 だから表だって同盟は結べないし、戦力も俺のファミリーだけになる。ここにいる守護者…それも、何人が協力してくれるかはわからない。」 「だが1人1人の力は圧倒的だ。特に匣や指輪は私たちには使えない。それに、表だって結べないのはこちらも同じだ。正義の味方だからな、黒の騎士団は。」 「マフィアとつながってる正義の味方じゃ、かっこつかないな」 「そういうことだ」 「じゃあ、どうすれば…」 「仕掛けたのが同じタイミングで、敵が同じだから結果的に協力する形になったというのが1番いいだろう」 「そうか。それで協力して、日本を取り戻して…」 「この勝利が互いの力があったからできたものだと言い、その場で合衆国日本を建国する。」 「わかった。じゃあ王座に立つのはゼロ、君だ」 「何故だ?双方の活躍あっての建国だ。私と君、2人が妥当だ。」 「マフィアのボスが王の国なんて…」 「それなら、テロリストが王も可笑しいな」 「…そうか。それもそうだな」 ふっとツナの顔に笑みが戻る 「…休憩にしないか?1度に考えすぎて、頭がパンクしそうだ」 「ああ。私も少し疲れたな」 「じゃあ、お茶入れますね!」 振り返ったツナは、もう普段のツナだった 切り替えが早い。さっきまでとは口調も違う。 「ルルさんは紅茶、コーヒー、緑茶、どれがいいですか?」 「緑茶。手伝うよ。」 「ありがとうございます。じゃあ、カップだしてもらっていいですか?」 「ああ」 カップのある棚へと向かうと、見慣れない箱が置いてあるのに気づく。 シルバーの箱はガラス張りで中が見えるようになっていて。 ところどころ線をつなぐ穴のようなのもが開いている、とても奇妙なコンタクトレンズだった。 「…これも匣の一種なのか?」 「へ?…あっ…それは…その…」 ツナが視線を泳がせる 「言いたくないなら無理には…」 沈黙の掟で守られたものかと思いそう言うと、「あ、いえ違うんです!」と焦ったように手を振った 「実は、X−BURNER用のコンタクトなんですけど…コンタクト入れたことなくて怖くて…」 「X−BURNER用?」 「炎の出力がゲージであらわれてコンタクトに映るらしいです。ミルフィオーレの技術らしくて…」 「ミルフィオーレだと!?危険はないのか!?」 「はい。ボンゴレの技術顧問が安全性は立証済みです」 「そうか…」 だが入れてほしいものではない。 「あの、ルルさんはコンタクトとかしてますか?」 「ああ、昔会長の企画でカラーコンタクトを入れたことがあったけど、そのくらいかな」 「痛くなかったですか!?」 「痛いというより、カラーだったから視界がその色に染まって気分が悪くなった」 「そう、ですか…」 ツナはしばらく何か考えると、思い切ったように顔をあげた 瞳が俺をまっすぐに映す なっ・・・!何故そんな風に見つめる…!? 鼓動が速く、うるさい音を立てる そういえば、今は2人きりなのだ 「ルルさん…」 「な、んだ?」 「あの…こんなこと言っていいか分からないんですけど…」 「なんでも言ってくれ…」 うるさい!!静かにしろ心臓!! 「コンタクトの入れ方教えてもらえませんか!?」 「ああもちろん…って、こんたくと?」 「ありがとうございます!俺怖くて1人じゃ出来なくて・・・」 「ちょっと待て!入れるのか!?あれを!?」 「はい。作戦までにX−BURNERを完成させないと」 「だが、あれは…」 「あ、お茶入りました。飲み終わったら教えてもらってもいいですか?」 完璧に断るタイミングを逃してしまった そもそもツナのお願いを断れるわけないのだが…本当に安全性は確かなのか!? 「まず手を石鹸で洗って」 「はい」 結局、コンタクト講座は始まってしまった 部屋の洗面台は狭くて2人は入れなかったため、廊下にある共用の大きな水場に移動した。 正直、それがありがたかった。すぐ横でツナが必死に手を洗っていて、その姿があまりに可愛くて、好きという思いが暴走しそうになる。 抱きしめて、キスをして、腕の中に閉じ込めてしまいたい。 そんな邪念ばかりの状態で部屋で2人きりだったら、我慢するにも限界がある 「コンタクトを指の腹に乗せて」 「こうですか?あれ、うまくできな・・」 「もっとバランスとるようにこうやって…」 後ろから腕をまわして、ツナの手に触れる。 コンタクトの付け方を教えてるだけなのに。触れた場所が熱くて仕方ない 邪念を振り払うように目をつぶり、手を離した 「そしてそれを目に入れる」 「うっ・・・」 「大丈夫か?」 「大丈夫、ですっ…」 おそるおそる、コンタクトを目に近づける だがうまく入らず、コンタクトは瞳にのらないまま目に当たった 「痛っ…」 「大丈夫か?」 「大丈夫です…」 「怖がっていては入らない。思い切って入れないと」 「はい…」 「やめるか?」 「いえ!絶対入れます!入れないと!!」 その瞳はまっすぐで、何を言っても考えを変える気がないことがわかる 「…わかった。じゃあ俺が入れてやるから、ツナは目を開けていてくれ」 「え?ルルさんが…ですか?」 「人に入れられる方が怖くないと会長もリヴァルも言ってたからな」 「じゃあお願いします」 ツナが恐怖と期待を込めて、俺を見る コンタクトを入れるのだから当たり前だけど、あまりにまっすぐ見られてまた心臓が早鐘を打った コンタクトを受け取り、ツナの顔に触れる 「ツナ、目を瞑ったままでは…」 「す、すみません…」 顔が近づく。入れるのが、こんなに近い距離だったなんて思わなかった すぐ近くにツナの顔があり、鼓動が速くなる 駄目だ駄目だ駄目だ集中しろ!!! そっと優しく、ツナの目にコンタクトを入れた 「んっ・・・」 異物感からか、涙目で見上げてくるツナに、いいようのない感情が襲ってくる しっかりしろ!! 「大丈夫か?もう片方も今入れるから・・・」 「はい…」 今度は余計なことを考えないようにツナの瞳にコンタクトを入れる …全く考えなかったと言えば、嘘になるけれど 「うー…」 「大丈夫か?変なところはないか?」 「目がごろごろします…」 「これ。コンタクト用じゃないけどツナの部屋から持っていておいたから。」 「すみません…」 「させるか?」 「俺目薬苦手で…寝転がらないと…」 「じゃあ、さすから貸してみろ」 「なにからなにまですみません…」 「!いや、いいからとにかく上を向いて」 涙目で見るな!頼むから!! 「ありがとうございます。」 「気にするな。そりょりょり、明日笹がりをどうまくきゃ」 「ルルさん?どうしたんですか?」 「な、なんでもない!!」 可愛くて、うまくしゃべれなくなったなんて言えるわけがあるか!! ふふっとツナが笑った 「1人で入れられるように特訓しなきゃ」 「付き合うよ。明日持ってきたらどうだ?」 「ありがとうございます。1人じゃ無理そうだし、お言葉に甘えちゃいます。」 「それと夕飯。明日はナナリーがおにぎりを作るって張り切ってるんだ。ツナに食べてほしいって」 「ナナリーが!?嬉しいな。でもいいんですか?毎回ごちそうになっちゃって…」 「3人分も4人分も変わらないさ。それに、ツナがいるとナナリーも喜ぶ」 「もしそうなら嬉しいです」 「もちろん俺も、ツナが一緒だと嬉しいしな」 「ありがとうございます」 幸せだった 本当の俺を知っても、傍にいてくれて 今まで以上に近づけた気がした だから思いもしなかった これが、今この時が、ツナといられる最期になるなんて ―思いも、しなかったんだ |