「ゼ、ロ…?」 閉鎖された空間にツナの声が響く その姿は酷くボロボロで、遅くなった自分に嫌悪した。 「どういうことだ!何故ゼロがここにいる!!幻騎士!!おい!幻騎士!!」 「探しているのはあの男のことか?」 自らの胸に剣を刺し倒れている男を見せると、入江正一は信じられたいというように目を見開いた 「う、そだ…おい!幻騎士!!」 入江正一。まだエリア11が日本であった頃、数々のロボット大会に出場し多くの賞を受賞。その腕を買われ、大学推薦も決まったいた。 だが日本占領後はその才能故に、ナイトメア開発に手を貸したのではないかとあらぬ疑いをかけられ迫害され、 仕事も住む場所も何もかも無く、死にそうになっていたところを白蘭に拾われた男。 ここに来るまでに入江に関する情報はかなり集めることができた。 哀れだとは思う。入江もブリタニアの…あの男の被害者なのだ。 ―だけど。 銃を向ける。 この男は、ツナを傷つけた 許すことはできない。 「…はっ。何がゼロだ。何が正義の味方だ!イレヴンの救世主と言われている男が、裏ではボンゴレと繋がって守るべきイレヴンに銃を向ける?滑稽だな!!」 「日本人の救世主だと言った覚えはない。私は悪を裁き正義を行う。それだけだ。」 「だったら沢田綱吉を殺せ!!その男は僕から白蘭サンを奪った悪だ!!」 「ならお前は、私の大切な仲間を傷つけた悪だ。」 そう。悪などという曖昧なものは、人によって様々なものへと変わる 「…仲間、か。自らボンゴレとの繋がりを認めるのか。」 「違っ…」 「ああ。白蘭を復讐者に引き渡した時も、私は彼と一緒にいた」 「っ!!ゼロォォォ!!!」 入江の顔が、怒りでひどく歪んでいく。 それでいい。ツナではなく俺を恨むんだ。 恨まれることには慣れている。この仮面を被った時から、いや、それよりもずっと前から、覚悟はしていたのだから。 「違う!!」 刹那。ツナの声が響き、視界にススキ色が映る。 「白蘭は俺がやったんだ!ゼロは関係ない!!」 手を広げ、庇うように。俺の前に立っていた 「なっ・・・」 咄嗟のことに言葉を失う。 「何を言っている!そこをどけっ!私の後ろに・・・」 俺の前に立つツナの肩を掴む。そのまま無理やり後ろに下がらせようとするも、怪我をしたのか痛みで顔を歪ませた為、思わず手を放してしまう。 「ゼロはリフレインの蔓延を止めようとしただけだ!これ以上日本人の被害者を出さないようにって… たまたまゼロが来たときに俺が白蘭を倒しただけで、ゼロは関係ないんだ!!」 「何を言っている!!」 「ゼロこそ何を言ってるんだ!!第一なんでこんな場所に…!!」 「私のことはいい!!怪我をしているのだから、私の後ろに下がっていろ!!」 「嫌だ!!」 「ッ!ツナ!!」 え、とツナが目を見開く。 しまったと思った時には、もう遅かった 「どうして、その呼び方…」 「っ……」 ツナに瞳が、仮面を映す。 じっとみつめられ、まるで金縛りにでもあったかのように、瞳をそらせない なんでもいい。綱吉だからツナだとか、山本武がそう呼んでいたのを聞いたとか、なんとでも言える筈なのに。 「…ゼロ……?」 「…そ、れは……」 その時。視界の片隅で、何かが動いた 入江が指輪に火を灯し、匣から出てきた銃。 「っ!!ツナッ!!!」 咄嗟にツナを突き飛ばす。背中を向けていたから、気付いてなかったはずだ。 「ゼロ!?」 銃声とともに、ツナが俺を…ゼロを呼ぶ声が聞こえた 額への強い衝撃。痛みもある。けれど、致命傷には至らない。 …いや、ある意味これは、俺にとって最大の致命傷となるかもしれない。 弾は仮面に当たり…音をたてて、真っ二つに割れてしまった 髪が風になびく それは顔がさらされていることを意味していて。 開けた視界。そこに映るのは、病的なまでに白で統一された部屋と、入江と、ツナ。 「ル、ルさん…?」 信じられないというように目を見開いて、俺を見詰めている 嗚呼、今の銃がツナに当たらなくてよかったと、そんなことを考えた 「どう、し…」 「ブリタニア人…ははは!ゼロが!」 入江が、狂ったように声高にわめき散らす 「滑稽だな!ブリタニアからイレヴンを救う救世主がブリタニア人!?っ・・・は!笑わせるなゼロォォォ!!!」 この男は、病んでいる。 さっきからイレヴン、ブリタニアとそればかり。 もう、昔の夢を純粋に追いかけていたころには戻れないところまで追い詰められている。 「終わらせてやろう。私が…」 左目に力を灯す 本当は、ツナの前で殺すことはしたくなかった だけど素顔を見られてしまった こうなっては、仕方がない。 銃を構える。これはツナへのカモフラージュ。実際は、ギアスを使うのだ。 入江も俺へと銃を向ける 「白蘭サンの仇だ!!」 「死…。」 ギアスをかける直前、どこからか銃声が響いた 入江の体が揺らぐ 「沢、田…!!」 入江が恨みをこめた声でそう呟き、倒れた 「ツナ…?」 「あっ…」 銃を持つ手を震わせながら、ツナはその場に座り込んだ 「ツナっ!!」 間違いない。やはり、今のは。 「何故…!!」 「ルルさん…?」 どうしてあんなことをしたのだと。お前がそんなことする必要は無いから。俺が、お前の苦しみはすべて背負うからとそう言いたかったのに。 瞳いっぱいに涙を溜めて俺を見つめるツナに、何も言えなくなってしまう。 「ルルさん…生き、て…」 「…ああ。大丈夫だ。お前のおかげだ。」 「よかっ…」 涙を流して震える身体を、本当は抱きしめたかった。抱きしめて、俺は生きてると、だから安心しろと伝えたかった。 けれど、かたくなに握りしめた手はずっと銃を掴んでいて。それが罪の証だと言われているようで。どうしてもできなかった。 「ツナ…」 代わりに、そっと手を握りしめる。 包み込むように。ぬくもりが伝わるように。 「大丈夫だ。俺は生きてる。」 「っ…はいっ…」 硬かった手が、だんだんと元に戻ってくる。そっと銃をツナの手から離した。 「…俺っ…ころし…」 「ツナ…」 どうしてあの時、ツナにギアスを使ってしまったんだ 何度も後悔した。初めて出会った時のことを。 そして今、最も強い後悔が俺を襲う。 入江を殺したという記憶を、ツナから取り除いてやれないことを。 「…すまない」 俺のせいだ。俺のせいで、ツナは引き金を引いた。 あんなにも、誰かが死ぬことを恐れていたツナが、自らの手で、命を奪った。 俺を、護るために 「俺が、余計なことを…」 助けたかった。いつだって。リフレインの時も、クロームが攫われた時も、笹川京子のことで苦しんでいる時も。 だけどいつも俺は護られて、ツナを護るどころか足を引っ張って。 今だって。俺がいなくてもツナは入江を倒せていただろう。殺すのでなく、もっと、別な方法で。 ツナが首を横に振る 「違います。ルルさんが来なくても、俺はこの人を、殺してました」 「…気を使わなくていい」 「そんなんじゃないです。この人は、入江は、俺の大切な人を皆殺しにするって言った。 俺は、それが怖くて、許せなくて、殺そうと思って銃を向けました。だから、ルルさんのせいじゃありません」 「…つな」 「大切な人を護るために、俺は、強くなるって決めたんです。だから、そのためには…手を汚すことも、厭いません」 その言葉はとても静かに、だけどどこまでも遠く響き渡った ――「失うのが怖いなら、護ればいい。護るだけの力が今のお前にはあるだろう」 嗚呼 これも 俺のせいか 「ならば私も、共にその道を進もう」 ルルーシュ・ランペルージとしてではなく、ゼロとして。 ボンゴレ10代目と共に 「君は僕たちと同じ世界では生きられない。偽りの姿なら別かもしれませんが」 お前の言う通りだ六道。ルルーシュ・ランペルージでは、ツナと同じ世界では生きられない。 なら、偽りの姿で共に生きれば良い 「俺はゼロで…ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアなのだから」 記号だけの存在、死んだはずの存在 それが今の…ゼロとして生きる俺なのだから |