「ユニ様、電光のγを連れてまいりました」
「下がれ」

大広間に、まだ幼さが消えないがしっかりとした声が響く。
ミルフィオ−レファミリーNO.2、現NO.1であるユニの声が。
γを連れてきたホワイトスペルの男は、彼女に見られないように彼を睨んだ後、大広間を出て行った。 

「ユニ様、電光のγ、只今帰還いたしました」

跪き、述べる。
大広間の奥の壇上の1番上にたった1つだけある椅子。
そこにユニは座っている。
座って、γをじっと見ていた。







STAGE 20 姫と騎士








ユニは何も言わず、ただまっすぐにγを見つめている。

彼女の許しがないうちは顔を上げることが出来ない。

数秒、あるいは数十秒程度の沈黙だったのかもしれない。

それでもγはユニがまた白蘭に操られているのではないかと疑ってしまう。

白蘭に操られ、人形のようになった彼女は彼女ではなかった。

滅多に喋ることはなくなり、笑顔なんて見れなくなった。

そこにいるだけの只の人形になってしまった。

その時のことを思い出し、γの背中に寒気が走った。

「γ」
「はい」

永遠にも感じられた沈黙の後にユニが口を開く。

それは先程ホワイトスペルに向けたミルフィオ−レのボスとしてではなく、ジッリョネロファミリーのボス、ユニ姫としての優しい声だった。

「無事で良かった」
「姫…俺は約束を守れなかった…」
「約束?」
「ボンゴレリングを姫に差し出すという約束だ」

γは頭を下げたまま悔しそうに言う

「…γ、私はそれを望んではいません」
「姫?」
「ミルフィオ−レはボスの白蘭を失い、入江も怪しげな研究に従事しています。今のミルフィオ−レには、混乱と不安が広がっている。
 ボンゴレリングは争いの種。私達がそれを手に入れれば、ボンゴレとの全面戦争は避けられなくなるでしょう」
「…」
「白蘭無き今、亀裂が入っているミルフィオ−レを私が全て纏められるとは思いません。
 それでも、ミルフィオ−レはもう私達のファミリーです。ホワイトスペルもブラックスペルも護らなければいけません」
「姫…」
「γ、私に力を貸してくれますか?」
「ブラックスペルだけじゃなく、ホワイトスペルも護る事が姫の望みなのか?」
「はい」

初めて会った時と変わらないユニの笑顔。
優しく、慈愛に満ち、力強さを秘めている。

「ユニ様」
「…」

γはユニの傍へ行き、彼女の手を取り跪いた

「私はユニ様の望みを叶える為に、貴女のお役に立つことを誓いましょう」

そう言って手の甲に口付ける

「騎士みたいですね、γ」
「俺は姫の騎士だ。俺は絶対に姫を裏切らない」

「…」
「姫、貴女と共に…」
「…本当に騎士みたい」

ユニが笑う。
長い間凍てついた表情をしていたのが嘘のように。
優しい、暖かい笑顔で。














「くそっ…沢田綱吉…」

ヒステリックにパソコンのキーを叩きながら、入江が叫ぶ。

「白蘭さんを…白蘭さんをあんな目にっ!!」

マフィア間で【白蘭が倒された】というのは有名な話だった。
でも何故か、白蘭を倒した相手は知られてはいなかった。
黒の騎士団が麻薬取締りを行った際、一緒に捕まったという噂が立つほどに。
一般人に倒された情けないボスという噂はあっという間に広まり、ミルフィオーレは非常に危うい立場になっていた

だが、入江は気付いていた。
白蘭を倒したのはボンゴレファミリー10代目ボス筆頭候補、沢田綱吉である事を。

「くそっ、許さない。許さないぞ、沢田綱吉!!」

ミルフィオーレなどどうでもいい。
だけど、白蘭サンに対する仕打ちは許さない


不気味な機械の数々に囲まれながら、入江は狂ったように叫んだ。