「おやおや、僕達は休みかと思っていたんですが」 「暇潰しくらいにはなるね。来なよ」 「な、何だ、あいつらは!?」 「ミルフィオーレファミリーブラックスペル、野猿と」 「太猿だ」 ツナが扉の奥に消えた後、突如現れた男に驚く。 奴らは大きな釜を持ち空を飛んでいた。 人間が…空を… 「ふぅん。なら僕…」 「僕が行きます。君はルルーシュ・ランペルージでも護ってなさい」 「嫌だよ。何で僕がこんな奴を護らなきゃいけないの?君がやればいいでしょ」 「嫌です。それに、ボンゴレに頼まれたじゃないですか」 「君が、でしょ」 「君が、です」 「…」 「…」 「おい、2人共…」 「何だかわかんないけど行くぜ!!」 「黒鎌!」 「「…うるさい」」 六道と雲雀恭弥が敵の姿すら見ずに攻撃を弾く 「なっ…」 「苛つきますね」 「本当にね」 「雑魚は雑魚らしく大人しくしているべきです」 「草食動物は地べたを這いなよ」 「ルルーシュ・ランペルージを護りながら戦うのって非効率的だと思いません?」 「ワォ。珍しく意見があったね」 「ぇ、お前達何を…」 嫌な予感がした STAGE 17 匣 「なら、行きますか」 「僕があの偉そうな奴を殺る」 「なら僕は少年の方を」 「おぃ、ちょっと待て!!」 俺を無視し、勝手に話を進めていく六道と雲雀恭弥に静止をかける。 「何ですか?うるさいですね」 「お前達は俺を見殺しにする気か!?」 「見殺し…ですかね?」 「っ…!!」 いつの間にか六道骸の手に握られていた三叉槍の槍の部分が鼻先に突きつけられる 当たってはいないが、かなりギリギリだ。 確か前にも似たようなことがあった。あれは男女逆転祭りの時だったはずだ。 「勘違いしないでほしいですね。僕はボンゴレの守護者であって、君のじゃない」 ツナ相手には絶対見せないであろう六道の裏の…いや、恐らく真の顔を見て、俺は言葉を失う。 恐怖。 絶対的な力の差を感じさせられ、身体か竦んで動けない。 「雲雀、恭弥…」 助けを求めるように名前を呼んでも少しだけこちらを振り返っただけで、それ以上何かをするわけでもない。 「君は目障りなんですよね。ここで殺してしまっても良いんですが…」 「っ…」 「そうするとボンゴレが怒るんですよね…」 六道が溜息をついて槍を下ろす。 ツナの存在が俺を救ってくれているというのは大袈裟ではない。 六道も雲雀恭弥も簡単に俺を殺せる。奴らがそうせず、本意に反しつつも俺を一応は護ってくれる(らしい)のはツナがいるからだ。 六道も雲雀恭弥もツナには逆らえない。 だから俺は今ここにいる。 そう、よく考えれば俺はツナに護られてばかりじゃないか。 直接的にも、間接的にも。 「ツナ…」 今もツナは一人で戦っている。 クロームを助けるために。 クロームが捕まったのはナナリーを庇ったからだ。 その時俺は何をしていた? ナナリーの危険にも気付かずに…。 「邪魔だよ」 「ぐはっ…!?」 いきなり雲雀恭弥にトンファーで吹き飛ばされ、頭を思い切り地面にぶつけた。 「な、何する…」 「おやおや。ルルーシュ・ランペルージを助けるなんて君らしくないですね」 「煩い」 「助け…る?」 冗談じゃない。 打ち所が悪ければ死んでいたかもしれない。 六道骸が無言で槍で指した地面は抉り取られていた。 「っ…」 「あーあ、当て損ねちまった。雲の守護者が邪魔しなきゃ黒髪の奴は死んでたのに」 「雲の守護者が庇うなんて予想外だからな」 「ですって、雲の守護者さん」 「煩い」 「クフ」 「俺を…助けてくれたのか…」 「沢田綱吉が言ったからね」 「ツナが…」 「てやっ」 「ちっ…」 「うわっ!?」 今度は六道骸の槍で宙に放り投げられた。 腰をしたたかにぶつける。 「おい、助けてくれるならもう少し優しくしてくれないか!?俺はお前達とは違うんだ」 「僕は君が嫌いだと言ったはずです。助けてもらっただけでも感謝しなさい。それにしても…バレてますね」 「何がだ?」 「君が足手まといで弱点って事をですよ」 「っ…」 「さて、どうしましょうか…」 「勿体ぶってないでさっさとやってよ」 「え〜僕がやるんですか?君だって出来るじゃないですか」 「君の役目でしょ」 「はぁ…わかりましたよ」 首から下げていた鎖についた指輪を六道が服の中から取り出した。 似たような物を見たことがある。 ツナが大切だと言っていた指輪。 無くすと殺されるという…。 指輪を鎖から外し、指につける。 インディゴ色の炎が灯ると同時にどこからか霧が立ちこめた。 「何だ!?」 「君は邪魔なのでそこにいなさい。いきますよ、雲雀恭弥」 「僕に命令するな」 一瞬にして2人は敵の間近に迫り、それに気付いた相手が攻撃を仕掛ける。 雲雀恭弥はトンファーで敵の飛び道具を弾き返し、六道は三叉槍で敵の鎌を受ける。 「っ…」 俺は何も出来ない。 この間ツナが血まみれで戦っていたときも、今も。 「ぐっ…調子に乗るなよ、ボンゴレの守護者っ!!」 鎌が降り下ろされる。 それも2人は平然と受け流す。 「つまらないな」 雲雀恭弥がトンファーで敵を吹っ飛ばし、六道もそれに続いた。 「弱いですね。これで終わりです」 六道の背後に突如巨大な蛇が現れて敵に向かっていく。 終わりだと思った時、女の悲鳴が洞窟に響いた。 「この声…」 「野猿と太猿は随分と雲と霧の守護者に苦戦してるみたいだな」 「どういう意味だ?」 「何故クローム・ドクロが大人しく捕まっているか疑問に思わないか?」 「…」 「あれは捕獲、拷問用の匣だ。匣にも色々なタイプがあるのは知ってるだろ?あれは後から炎を継ぎ足せる物の変異型でな。 捕獲対象のあらゆるエネルギーを強制的に引き出して炎に変換して吸い取る」 「なっ…」 「そうやってじわじわと捕獲対象を死に追いやる」 「お前っ…」 「クローム・ドクロを捕まえてから約5時間…あの傷の具合からするとそろそろだな」 「離せ…」 「ん?」 「クロームを離せ!!」 「そいつは出来ない相談だ。まぁ、お前らの持つボンゴレリングと交換ってなら構わないけどな」 「そんなのダメに決まってるだろ!!」 「じゃぁ交渉は決裂だ」 「…」 「始めに言っただろ。俺に勝てたらクローム・ドクロは解放してやる」 「…本当に?」 「あぁ」 「なら、やってやる」 洞窟内に響いた悲鳴に俺だけでなく、六道も驚く。 「クロームに何をしたんです?」 蛇は敵に触れる寸前の所で止まっていた。 「あれは匣兵器の力でな」 「俺達に下手に危害を加えるとあの女を殺すぜ」 「僕には関係ない。死になよ」 「駄目です、雲雀恭…」 『やめろ!!』 六道の静止を無視し、敵に近付いた雲雀恭弥はツナの声に動きを止めた。 だが、ツナの姿はない。六道のつけている通信機からその声は発せられていた 「ボンゴレ…」 「僕の邪魔をするつもりかい、沢田綱吉」 『俺達はクロームを助けに来たんだ!!』 「それが何?僕には関係ない」 『駄目だ。これは…命令だ』 「…」 「…ボンゴレ、今γといかいう奴と戦ってるんですか?」 『ああ』 「そっちはどうです?」 『…倒す。だけど…』 「クロームですね」 『そうだ。先に何とかしないと』 「わかりました。それはこちらで何とかします」 『任せた』 「聞いていましたか、雲雀恭弥」 「…」 「ボンゴレの命令ですよ」 「…」 「雲雀恭弥」 「…わかったよ」 六道と雲雀恭弥が構えた。 敵は自分達が攻撃されないと踏んでいるのか、武器を構えつつも余裕がある。 そうだ。 クロームを人質に取られている以上、六道も雲雀恭弥も何も出来ない。 雲雀恭弥なら何かしそうな気もするが…。 「わかってますね」 「わかってるよ」 鬱陶しげに雲雀恭弥が答えた。 「では、頼みますよ」 「…」 「しょわっ!!」 「甘いな」 「苛つきますね」 「…」 雲雀恭弥と六道は仕掛けられる攻撃を防いだり、いなしたり、牽制で武器を振るうだけで、決定打には至らない。 「クローム…」 「…」 そうだ。 クロームが人質にとられていなければ2人もツナも本気で戦える。 目の前の敵2人に雲雀恭弥と六道が実力で負けているとは思わないし、ツナだってこいつらのボスの白蘭とかいう奴に勝っている。 「まったく…嫌になりますねっ!!」 「…」 「雲雀恭弥」 「…何?」 俺の言葉に返事を返した雲雀恭弥は相当苛立っているのがわかる。 「リ…リングと死ぬ気の炎について知りたいんだが…」 「嫌だ」 即答だった。 「そ…そこを何とか…」 「そんなに知りたいなら、そこのパイナップルにでも聞けばいいよ」 「なっ…苛ついてるのは僕も同じなんですからあたらないでください」 「煩い」 「じゃあ六道…」 「僕も嫌です」 「なっ」 「君にわざわざ教える理由がありません」 「頼むっ!!」 「…」 「どうしても今知りたいんだ!!クロームを助けるのに必要な事なんだ!!」 「…雲雀恭弥」 「今更だよ」 「…平気ですか?」 「誰に向かって言ってるの?」 「クフ。ルルーシュ・ランペルージ、この借りは大きいですよ」 そう言いながら六道骸は黒く笑った。 爆発音。 轟音。 金属の触れ合う甲高い音。 雲雀恭弥が敵2人を相手に戦っている。 その雲雀恭弥に護られる形で俺と六道骸は話をしていた。 指輪、匣、死ぬ気の炎 黒の騎士団の情報網を使っても得られなかった重要な情報を六道骸は話す。 勿論、全てを語っている訳ではないだろうが。 マフィア界のトップシークレットともいえるほどの重要な秘密。 それを俺は今得ている。 確証はないが、六道骸は俺がゼロだと疑っているのだろう。 だからこそ、ツナに接する俺を最近は特に警戒する。 六道と接するようになって、徐々に理解してきた。 こいつはツナをとても大切にしている。 ツナが本当に嫌がることはしないし、ツナに仇なす者を決して許さない。 ツナの為なら自らを悪とすることも厭わないだろう。 そういうところは似ているのかもしれない。俺もナナリーの為なら、どんなこともするのだから。 「ルルーシュ・ランペルージ、聞いてますか?」 「聞いている」 「君が言い出したんですからね」 「わかっている。それで、敵のボスが使っている匣だが…」 六道骸…ツナに本気で惚れているのは間違いない。 だが、茶化して好きだの、愛してるだのは言うくせに、本気で言う気配は全く無い。 それには笹川の妹が関係しているんだろう。 「匣が特殊型なので、正確な事は言えませんが…」 「あぁ」 俺はツナに彼女の話を聞いた。 だが、六道の方が詳しく知っているのかもしれない。 俺の知らないツナの過去を六道は知っている。 マフィアとして生きてきたツナ。 「注目するのは…」 「そこを攻略できれば…」 正直、羨ましいと思う。 六道は、俺よりずっツナに近い場所にいる。 俺とツナの関係は只の友達。 それ以上でも、以下でもない。 だが、六道とツナはそんな簡単な関係ではない。 「特殊型の攻略は…」 六道が、ボンゴレファミリーの仲間が羨ましい。 俺がもし、ツナともっと昔に出会っていたら、ツナの助けになれただろうか? ツナの苦しみを癒せただろうか? ツナにもっと近付けただろうか? 時間を戻すことなど出来ない。 過去を変えることなど出来はしない。 だが、もしも俺がツナともっと早く出会っていたら、俺を狂わせるほどの…油断すれば溢れ出しそうなこの感情を制御する方法が…。 「…そうか」 「何です?」 「これだ!」 「だから何…ちょ、何するんですか!?」 六道がつけている通信機を無理矢理奪い取ると、ツナへと呼びかけた。 「ツナ、聞こえるか、ツナ!?」 その時の俺には、ツナの役に立ちたいという思い以外無かった。 |