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『愛しています』









嫌だ











『好きです』









聞きたくない









『愛しています』









俺の中に、入ってこないで











「はっ…はぁ…」





桜の木の下にうずくまる



以前ルルさんと一緒に訪れた時は満開の桜が咲いていたけど、今は緑の葉をつけていてあのころの面影は全く無かった。











「…っ」











まるで俺の心を表しているようで、背筋が凍りつく





嫌だ





忘れない。絶対に。























俺には、京子ちゃんだけいればいいのだから



























STAGE 23  皇暦2010年8月10日

























あれは、よく晴れた日のことだった









ブリタニアという国と外交問題でもめているとか、その国の皇子様とお姫様が留学してきたとか、





そんなこと、あのころの俺たちにはまるで別世界のことのようで、いつもと変わらない普通の夏休みで。









そんな遠い世界のことよりも、リボーンの無茶な指導をどうのりきるかとか、京子ちゃんに告白するぞ!とか、そっちのほうが俺にとっては大問題だから。







まさかあんな日がくるなんて考えも付かなかった。

















「え?イタリアに?」



洗濯物を干しながら母さんが言った一言に目を丸くする



「ええ。なんでも急に決まったらしくって…直ぐ戻るとは言ってたんだけど。」



リボーンがイタリアに戻った。



そりゃあもともとイタリアに住んでたんだし、里帰りくらい普通にあるだろうけど。



あの家庭教師が宿題も出さずにどこかに行くなんて、よっぽどのことが無い限りありえないはずだ。



出会ってまだ半年もたってないのに、濃すぎる日常はそんな考えを生むのには十分で。









急な召集か何かあったのかな…?





まさか、ボンゴレファミリーに何かあったんじゃ、と頭をよぎる



…いやいや、俺はマフィアになる気なんて無いからボンゴレに何がおきようと関係ないし!!



それより数日でもあの家庭教師から解放されたということを喜ぼう。













数ヶ月前、リボーンが家庭教師としてやってきてからというもの俺の生活は一変した。



ずっとあこがれていた京子ちゃんと友達になれて、お兄さんとも仲良くなった



友達が居なかった俺は、誰かと遊べることが嬉しくて、それが大好きな京子ちゃんならなおさらで。



だからリボーンには感謝してるけど、このとき9歳の俺はマフィアになるのも厳しすぎる家庭教師も嫌だった。











「じゃあ、俺遊びに行って来る!!」



「いってらっしゃい。車に気をつけるのよ~」







母さんの言葉に返事をすると玄関を飛び出す。



待ち合わせはいつもの桜の木の下で。



あたりまえになった約束に、嬉しさがこみ上げるのを止められない。





















「ツナくん!」





俺が付いたときには既に京子ちゃんとお兄さんがいて。急いで走ると京子ちゃんが微笑んだ





「そんなに急がなくてもいいのに」



「だって…待たせちゃ…悪いから…」





息を切らせながら言うと、「極限だぞ沢田!」とお兄さんが両手を空に掲げる





「今日はお兄さんも一緒?」



「俺は今からトレーニングだ!終わったら極限混ぜてくれ!!」











「じゃあ後でな!」とお兄さんは極限という言葉がふさわしい走りでどんどんと遠ざかっていく。







「ふふっ」



「?京子ちゃんなんだか嬉しそうだね」



「さっきね、ヒヨコみたいな可愛いい鳥と遊んでたの。真っ黒な男の子が呼んだら行っちゃったけど。ツナくんにも見せたかったな。すっごく可愛かったんだよ。」



「へぇ…鳥かぁ。」



京子ちゃんと鳥のペアを思い浮かべる。



きっとすごくかわいくて、絵になるんだろうなぁ。



けど…真っ黒な男の子?誰だろう…ちょっと気になる。



話したりしたのかな…もやもやとした気持ちが生まれて、少し俯いた





「じゃあ、今日はなにして遊ぶ?ツナくんは何がいい?」



「!…えっと、京子ちゃんは?」



「私はおままごとがいいな。ツナ君が旦那様で、私がお嫁さんなの!」



「え!?」





京子ちゃんが俺のお嫁さん…!!





「いや?」



「ううん!!全然!!いいよおままごと!それにしよう!!」



「よかった!じゃあ準備するね。」





京子ちゃんはあらかじめ持ってきていたおもちゃを広げ始める。





おもちゃのおわんや箸など様々で、まるでおままごとじゃなくこれが本物の世界だと錯覚してしまいそうになる





京子ちゃんとそうなれたら、どんなに幸せなことだろう









「できた!じゃあ、まず…」







京子ちゃんの声と同時に、頭の中で何かが響いた













「…え?」











突然、爆発音の様な音と共に、爆風が吹いてきて体が吹き飛ばされそうになる












「きゃぁ!!」

「京子ちゃん!!」







急いで京子ちゃんの腕を掴むと桜の木の後ろにひっぱった





「大丈夫!?京子ちゃん!!」



何が起こったのか分からないけど、とにかく京子ちゃんの無事を確認しようとするも、腕の中の彼女は呆然と一点を見つめていた











「うそ…お兄ちゃん…?」









その呟きにはっとして後ろを振り向く

















お兄さんの走っていった方向が、跡形も無く消し飛ばされていた













「お兄ちゃん!!」



「京子ちゃん!危ない!!」





走り出そうとした京子ちゃんの腕を掴む





「離してツナくん!!お兄ちゃんが!」



「今向こうに行ったら…!?」




また頭の中に何かが響く





反射的に京子ちゃんを突き飛ばすと、爆音と共に体が吹き飛ばされた











「ツナくん!!」





京子ちゃんの声が聞こえる。







浮遊感にさいなまれながら下を見ると、俺たちが居た場所の直ぐ近くに、紫色の大きなロボットのようなものが沢山集まっていた















…なんだよ、アレ!?













「…っ!!!」





「ツナくん!!」





地面に体が押し付けられる





吹き飛ばされて、落ちたみたいだ





「ツナくん!大丈夫!?ツナくん!!」



京子ちゃんが駆け寄ってきて、泣きそうな顔で俺を覗き込む



彼女の後ろで、紫色が動いた







「…!」







京子ちゃんを助けなきゃ







死んでも死にきれない!!
























何が起きたのか、自分でも分からなかった














「…ツナ、くん…?」



















ただ京子ちゃんを助けたくて、護りたくて













「大丈夫。君は俺が、護ってみせる」













死ぬ気弾を撃たれたわけでもないのに、額に炎が宿るのを感じる











体が軽くて、これなら、京子ちゃんを護れると思った













「下がってろ」











京子ちゃんを桜の木の後ろに隠すと、紫色に突っ込んでいく











大きさの割りに機動力も保持していて、弾丸以外にもなにか武器の様なものを発射してきてなかなか近づくことができない













「…くそっ」











なんとかかわして1つ、また1つ戦闘不能にしていくも数が多すぎる。











「…っ!」











さっき受けた傷が痛んで体制を崩す





弾丸が肩に当たって、そのまま地面に叩きつけられた







「…ッ!!」







銃口が向けられる。ダメだ、俺が死んだら、京子ちゃんが、殺される。











ダメだ、俺が、倒さなきゃ









「ツナくん!!」













目の前の敵に拳を向けたとき、たった1人の、彼女の声がした

































「きゃあああああ!!」























「…え?」





















京子ちゃんの、苦しそうな声が聞こえる

















すぐちかくで。俺の、すぐ後ろで。



















振り向けば、ゆっくりと倒れる赤に染まった大切な人



















彼女の後ろには、もう一機の紫色の機体があった



















本来ならば、俺が当たっていたであろう場所に



























「京子、ちゃん…?」























するりと、彼女の身体は俺の手をすりぬけて、そのまま地面に崩れ落ちる























「京子ちゃん!!」



















紅く、紅く。赤い色が愛しい人を染めていく























「京子ちゃん!京子ちゃん!!」





「ツナ、くん…」

















京子ちゃんの身体から血があふれ出す























まるで命が流れ出しているようで、必死に彼女の身体を抱きかかえた

















「京子ちゃん!しっかりして!!京子ちゃん!!」







「ツナくん…怪我、してない…?」





「俺より、京子ちゃんが!!」





「ツナくん、無事…?」





「京子ちゃん!?」













京子ちゃんは目を開けているのにその視点は定まってなくて、背筋が凍りつく













「俺は大丈夫だよ。京子ちゃんが、助けてくれたから…!」







「よか…た…」





「!京子ちゃん!!」















掴んで欲しいというように、京子ちゃんが震える手を差し伸べる





迷わずその手をとると、しっかりと包み込んだ











「ツナくん…お願い…」









「京子ちゃん!嫌だ!京子ちゃん!!」









「お兄ちゃんを…助けて…ツナ君…」









「助けるから!!俺が!!だから…京子ちゃん!」

















「つっ…くん…」























ゆっくりと瞳が閉じられる

















「京子、ちゃん…?」





























掴んでいた手がすりぬけて地面に叩きつけられた

























「きょうこちゃん…?嫌だ、ねえ、目を開けてよ。京子ちゃん、京子ちゃん!!」























視界がかすむ





必死に彼女の身体を揺さぶるのに、まるで眠っているかのように反応が無くて。





信じたくなくて、信じられなくて。ただただ必死に京子ちゃんの身体を抱きしめる







視界の隅で、銃口が向けられるのを感じた



















―――京子ちゃんを、護らなきゃ