あれ?何で最初に年齢違うことに気づかなかったんだろう。
もしかして俺は、2年後も全く成長していないというのだろうか。
なんかちょっとショックだ。



標的4 傷



お風呂が沸いたというので、L.L.を浴室へ連れて行く。
俺が先に入るように言われたけど、L.L.の着てる服は獄寺君のダイナマイトを受けてボロボロだし、血もついてるので、母さんが心配するという理由で納得してもらった
「使い方わかる?異世界にも風呂あるよな?」
「大丈夫だ」
「じゃああとで着替えとタオル持ってくるから入ってて。」
俺の服じゃ…入らないよな。
仕方ない。大変申し訳ないけれど父さんの服を着てもらおう。
…加齢臭とかしないといいな。

箪笥の奥にしまわれた服は、加齢臭じゃなくて防虫剤のにおいがした。
うん、まあ、加齢臭よりはましだろう。それにしてももっとましな服はなかったのか。
そもそも父さんの服があんなに沢山残ってたのにも驚いた。
蒸発した相手の服なんか棄てちゃえばいいのに。まあ、とってあったから今は助かるけど
脱衣所の扉を開けて服を置く
さっきまでL.L.が着ていた服は綺麗にたたんであって、その上に定期入れのようなものがおいてあった。
…L.L.の、だよな
それは随分と古びていて、かなりの年月を経たもののようだった。
L.L.って、18くらいだよな…?なんかこれ、もっと長い間使ったような感じするけど…
もしかして、家族の形見かもしれない。随分前に亡くなったと言っていたし。
気になったけれど、勝手に見ていいものでないことは確かなので、そのまま脱衣所を出ようとした
「そうだ、タオル…」
来客用の、どこ仕舞ったっけ?
上の棚にあったような気がしてあけてみると、案の定白いタオルがそこにあった
問題は、それが高い位置にあるということ。
「よっと…」
背伸びをしてタオルを引っ張る
もう少しで取れそうという時、ずるっという音と共に、全てのタオルが滑り落ちた
「……はあ」
いくらなんでもこんなにいらないっての。
仕方なくタオルを拾って畳んでいく
あーもう面倒くさい。
次のタオルを手に取ろうとすると、横にあの定期入れが落ちているのに気づく。
タオルが落ちた衝撃で、服の上からずれたのだろう
「……」
元にあった位置に戻すだけだ。
そう思って手に取ると、何かが中から零れ落ちた
慌てて拾い上げる
「……鶴?」
ピンクの折り紙で出来た鶴だった
何か大切なものなんだろうか
入れおそうと定期入れを開く
二つ折りタイプなので、真ん中に挟めていたのだろう
「これ…」
定期を入れる場所に入っていたのは、古びた2枚の写真だった
L.L.と車椅子の少女が寄り添って、その周りに同じ服を着た人が集まっているものと、俺にそっくりの人物とL.L.が2人で映っている写真
どちらも服装は同じものだから、きっと学校の制服だ
「これが、俺…」
でも、どうして。
とても古い写真なのに、L.L.の姿は今と変わらないままだった
写真を見つめていると、湯船からあがる音がして我に返る
鶴を仕舞うと急いで定期入れを元の場所に戻した
直ぐに扉が開いて、湯気であたりが熱くなる
「ツナ!?」
「ご、ごめん…バスタオル拾ってたら時間かかちゃって。まあ男同士だし別に…」
そこまで言って、言葉が止まった
「その傷…」
L.L.の胸には、刺されたような大きな傷跡が残っていた
「…昔、ちょっとな」
「ごめん…」
俺が勝手に写真を見たから時間をロスして、L.L.が見られたくないであろうものを見てしまった
途端に罪悪感が押し寄せる
「気にするな。それよりタオルを貸してくれないか?さすがに恥ずかしい」
「なんでだよ」
男同士だから恥ずかしがることないんだけど
もしかして傷を隠すためかな?と思いなおし、タオルを渡す。
けど俺の予想は外れてL.L.はそれを腰に巻いた。謎だ。
「服、ここにあるから」
「ありがとう」
「父さんのだから趣味悪いけど我慢しろよ。防虫剤くさいのも」
「貸して貰えるだけありがたいから、別にいい」
それはたぶんどんな服か見てないから言えるんだと思う
「じゃあ俺部屋戻ってるから」
L.L.が服のデザインに気づく前に、逃げるように脱衣所を後にした