乾いた音が響くのと同時に右頬に痛みが走った



TURN 2 偽りの友情




「ロロをおいてくるなんて、どういうつもりですか!?」

目の前には大粒の涙を流すツナが立っていて、俺は現状が理解できなかった


「落ち着け沢田…」
「だって!今バベルタワーにはテロリストが…!」

ヴィレッタが宥めるが効果は無く、ツナは俺を睨み付ける


どうしてだ?
どうしてこんなことになった?


数時間前、C.C.と再会した俺は本当の記憶を取り戻した


ナナリーのこと、ゼロのこと、そしてツナのこと

ナナリーの居場所は分からない

そしてツナは「今日初めて会った弟の友達」でしかなくて


…くそっ!!


ここ1年で何が起きたのか訳が分からない
そしてそれがあの男、ブリタニア皇帝の仕業だと思うと腹立たしくて仕方無かった


落ち着け。

今はナナリーとツナが最優先だ。


ナナリーは行方不明
ツナもあの様子だと記憶を書き換えられている可能性が高い

そしてそれはツナと俺の関係がバレているということ

付き合っていることを隠してたわけじゃないから当然だ

だが、ツナの恋人がただのルルーシュ・ランペルージではなくゼロだとしたら話は変わってくる


そんな人物を生かしておく理由は1つしかない

人質だ


俺の記憶が戻ったと知れたら、ナナリーだけじゃなくツナも危険に晒される



ツナは強い
だがその力も、俺のように忘却の彼方に仕舞われていたら…?


「ツナ…!」


一刻も早く無事を確かめたい
そう思いC.C.に後を任せ学園へと走った俺に待っていたのはツナの平手打ちだった


「ロロはお兄さんが心配で着いていったのに、そのロロをおいてくるなんて…!!」

「…なっ!?」
【お兄さん】と、ツナは確かにそう言った


前は…俺の本当の記憶にいるツナは、ルルさんと呼んでいたのに


記憶が無いんだ
わかっている

けれどその言葉は棘のように突き刺さる



「…っ!!」
「待て!どこに行く!!」

走り出したツナを止めると、先程より強い視線で射ぬかれた

「バベルタワーですよ!早くしないと…」
「あそこは既に崩壊している!さっきニュースで見ただろう!!」
「けどロロはまだそこにいるはずです!!」


ロロ、ロロ、ロロ
ツナの口から出るのはその名ばかりで、俺の心は酷く醜い感情で支配される

今のツナにとって、俺はただの【ロロの兄】でしかない

「落ち着け沢田!あそこに行くのは危険だ!!」

「でも…!!」

「まずは連絡を取ってみろ!無事かどうか確かめるのはそれで十分だろう!!」

ヴィレッタが言うと同時に携帯を取りだし偽りの弟に電話をかける

早くしなければツナがかけてしまうからだ

俺の知らないところでツナがアイツと…ナナリーの居場所を奪い、ツナの隣にのうのうと居座るアイツと話すなど許せない

それに元々ゼロの演説中に掛けるつもりだった
イレギュラーはツナの行動
どうしてお前が偽物の為に涙を流す?
どうしてお前が俺をそんな目で見る…!!


少しコールしただけで電話は直ぐに繋がった



「ロロ、大丈夫か!?」
『兄さん!?』

わざと心配そうな声色で告げる

ロロの声が聞こえたのか、ツナが嬉しそうに顔を上げた

そんな当たり前の仕草が、酷く俺を苛つかせる

「良かった、連絡が取れないから心配したんだぞ。無事なんだな?安全なところにいるのか?」

『…兄さん、今どこにいるの?』
「何言ってるんだ、お前こそ…」

ヴィレッタが携帯を取り上げる
それは計算道理
そうでなくてはアリバイ工作の意味がない
違っていたのは、その携帯をツナへと渡したことだった

「ロロ!」

『綱吉!?』

「良かった!本当に良かった…!!」

『…なんで綱吉が兄さんの携帯に?』

これ以上会話させるのは危険だ
何より俺が許せない
ツナから携帯を奪おうとしたが、先にヴィレッタがそれを奪い取った

「ロロ、私だ。」
『ヴィレッタ先生!?』
「この男がお前を心配して煩くて仕方無い。ルルーシュはもう学校に戻ってるぞ。お前も早く戻ってこい」
『!?…はい』

ヴィレッタは通話を切ると、「これで安心したか?」とツナに言いながら俺に携帯を渡す


「…俺、ロロを迎えに行ってきます!」
「!駄目だ!!まだ交通規制がしかれて…」
「走るから大丈夫です!!」
「待て!ツ…!!」

思わずツナと呼びそうになって言葉に詰まる

今の俺は【ロロの兄】
ツナを【ツナ】と呼ぶわけにはいかない

「っ…………待て!!」

だからと言って綱吉と呼ぶのも憚られて、とにかく制止の言葉を叫ぶもツナには
聞こえなかったのか、その背中はどんどん小さくなっていく

「待っ…!!」
「ルルーシュ、お前は補習だ」
「…先生はロロが心配じゃないんですか」
「沢田に任せておけば心配無いだろう」


ああそうだ
ロロの心配なんて無い
心配なのはツナただ一人

…くそっ!!

偽物が、俺の大切なものを奪っていく