「ロロー!!」

名前を呼ばれて振りかえる

その声は酷く焦っていて、いつもの彼らしくなかった



「どうしたの?綱吉」


「聞いたよ!お兄さんとバベルタワーに行くって…本気!?」


「うん。運転手としてね」


「でもあそこは非合法の賭博場があるって噂が…!」


「大丈夫。それに兄さんが心配だから」



沢田綱吉



僕の監視対象の1人で、かつで兄さんの恋人だった男



「…お兄さんって、生徒会副会長だっけ?」


「そうだよ。危ないことしないように着いていくだけだから」


「なら、いいけど…マフィアが出入りしてるって話もあるから気を付けてね」





けれど今は只の学生で僕の“トモダチ”





理由は簡単。監視がしやすいから。





綱吉は1年前、ゼロと共にブラックリベリオンに参加しその記憶を書き換えられた。





残っている記憶は次期ボンゴレファミリー10代目ということ、そしてあと1年でイタリアに帰らねばならないという2つ





それ以外は全て偽り―

大切な女性を亡くしたことも、ゼロと恋人同士だったことも、反逆の可能性となる全ての記憶は彼の中から消去されている



「そんなに心配しなくても…」



大丈夫だと言いかけたとき、思っても見なかった声がした



「ロロ!リヴァルがヴァレッタ先生を引き付けてるから今のうちに…友達か?」





兄さんだ





「うん。じゃあ綱吉、兄さん来たから行くね。」



「あ、ロロ!…気を付けてね。」



兄さんと綱吉を会わせるのはまずい



何が切っ掛けで記憶が戻るか分からないから





僕は急いで兄さんの元へ向かうと、逃げるようにその場をあとにした









TURN 1 サイカイ







「さっきの奴、友達か?」





バベルタワーに向かってバイクを走らせていると、兄さんが唐突にそう言った





「そうだけど…どうして?」



今の兄さんと綱吉にとってはさっきが初対面の筈なのに、そんなことを気にするなんて。



…まさか、記憶が戻った?



だとしたら、殺さなくっちゃ。

ハンドルを握る拳に力を入れる

だが帰ってきた答えはなんでもないものだった



「いや、ロロの友達の話って聞いたことなかったからさ。ちょっと驚いたんだ」




「なにそれ。僕にだって友達くらいいるよ。」



「だよな、安心した。仲いいのか?」





安心?なにが?

どうして兄さんが僕に“トモダチ”がいると安心するのか分からない





「うん。兄さんも知ってるでしょ?六道先輩。」



「ああ、同じクラスだからな。」



「その先輩の好きな人なんだ。いっつも休み時間の度にクラスに来てビックリだよ。けど綱吉も満更じゃ無いみたい」



満更じゃ無いという言葉に、苛立たしげに兄さんが反応した



「…そうか」



「どうしたの兄さん、六道先輩が綱吉を好きだと何か都合が悪い?」





昔、兄さんは六道骸と綱吉を取り合ったと報告書に記されていた





だからカマをかけてみる



記憶が戻ってないなら、六道骸と綱吉がどうなろうと何も思わない筈だから。





「まさかクラスメイトがストーカーだとは思わなかったからさ。驚いたんだよ」





「ストーカーって…」



「休み時間の度に会いに行くなんて立派なストーカーだろ。そのうち家まで押し掛けるんじゃないか?」





「寮の部屋にはよく来るって困ってたよ」





「おいおい、そんな奴に満更でもないってその友達大丈夫なのか?」





「あははっ…確かに」





「まあいいさ…それより会長から差し入れ貰ったんだ。食べるか?」





これで綱吉の会話は終わり





思ったよりあっさりしていて、僕は兄さんの記憶は戻っていないんだと判断する





そのままパンにかぶりつくと、バイクが横に逸れて兄さんの咎める声が聞こえた





「だって、兄さんが…」



「そっか、ごめん」







そのまま話は移り変わって、綱吉のことは完全に話題から消し去られた



























「いいだろう、何故なら…私はゼロ!世界を壊し、世界を創造する男だ!!」



数時間後、兄さんがこの会話を憎々しく思い出すなんて夢にも思わずに