朝、学校に行く準備をしていたときだった いつもなら鞄の中にあるはずの筆箱が無かった 「…あれ?」 学校に置いてきた?いや、昨日ルルさんの家で宿題を教えてもらった時にはあったはずだ 「…そういえば、持ち帰った記憶無い…」 時計を見る。授業が始まるまでには時間があった 今から行ったら迷惑かな… もうクラブハウスを出ているかもしれない。 代わりのペンがあれば良かったんだけど、イタリアから必要最低限のものしか持ってこなかったからそれも無かった やっぱり駄目元で行ってみようと、鞄を持って部屋の扉を開いた STAGE 21 マオ ルルさん達が使っている部屋の呼び鈴をならすも、誰かが出てくることはなかった やっぱりもう行ってしまったのだろう 申し訳ないけど、ペンは獄寺君か山本に貸してもらおう 教室に向かおうと背を向けた時、突然扉が開いた 「え!?」 開いた扉はルルさん達の部屋のものだ 人の気配は無いから中から開けたというわけではなさそうで、多分帰ろうとしたときパネルに触れてしまったのだろう 鍵をかけてなかった…? ルルさんや咲世子さんがかけ忘れる様には思えないけど、よっぽど急いでたのかな? クラブハウスはそれなりに人の出入りがあるからこのままだと危ないかもしれない ルルさんに電話しようと携帯を取り出した 「え…電池切れ?」 …はぁ。俺ってなんで肝心なときにへまするんだろう。 番号はわかるから、電話さえあればかけられるけど… ドアの外からランペルージ家の中を見る 部屋の真ん中に据え置きの電話が置いてあるのだ 勝手に入るのは気が引けるけど… すみませんルルさん!! 部屋に入って電話に手を伸ばすが、届く前にそれは止まった 机の上に、見覚えのある少女の拘束された写真が置かれていたのだから 「なに…これ…」 まさかこの前クロームを連れ去った奴等の残党が今度はナナリーを…? 全員片付けたから大丈夫だと思ったのに! 写真を握りしめる とにかく今はナナリーを助けるんだ 手掛かりはこの写真だけ …そう、これだけだ なのに置いてあったのは俺の部屋じゃなくルルさんの家 …ボンゴレを狙った犯行なら、何故来るかわからないこの部屋にあった? なにか可笑しい 「…!!」 その時窓の外で何かを押す青年が、視界の片隅に一瞬だけ目に入った 「ナナリー!!」 何かを押していた、それだけしか分からなかったが超直感がナナリーの車椅子だと告げる 死ぬ気丸を飲み、炎の推進力で男のいた方向に飛び出した 男は人目につかない森の中を移動していたが、死ぬ気の炎で森を突っ切った為直ぐに見つかる 上空から見止めた姿は、思った通り拘束されたまま車椅子に乗せられたナナリーで 怒りで頭に血が昇るが、男を刺激しては不味いと気を落ち着かせ少し離れた場所に着地した 「初めましてツナ。驚いたよ、まさかこんな早く見付かっちゃうとはね。でも今日は1人?君の騎士様は一緒じゃないのかな?」 …騎士、だと? 「…ナナリーを返せ」 「ほら、いつも君の側にいて、僕を牽制してた騎士様の事だよ」 俺の側にいて牽制してた騎士…? 「…骸?」 骸は気付いてたんだ、俺を狙ってる奴がいるって。 だからコイツは俺に手を出せなくて、ナナリーを使って誘き出そうと…!! 身体中に巻かれた包帯と紫のサングラスが目を引く男は大袈裟に手を振った 「違う違う!僕はマフィアじゃないし、君のことなんてどうでもいいんだよ。」 「…だったら何故ナナリーを攫う」 男の言うことを信じる気は無い わざわざマフィアじゃないと言う時点で、関係者だと言ってる様なものだ 「面倒くさいなぁ、違うって言ってるのに。関係無いのは君の方。まあ人質としては君もナナリーも同じくらい価値があるみたいだけど?」 「だったら俺がなる。それでいいだろう」 「駄目だよ、マフィアともめるの面倒だし。まあ確かに最初は君を人質にするつもりだったけど? 僕の大好きなC.C.を奪った泥棒猫に同じ思いをさせてやろうと思って。 でも君には怖ぁい騎士様がいるみたいだから、どのみちルルの願いは叶いそうにないし。」 シーツー?それに… 「ルルさん…?」 「へぇ、君何にも知らないんだ。僕が正体を喋ったら、ルルはどんな顔をするだろう!」 男が楽しそうに手を叩くと、怯えた様にナナリーの肩が揺れた 何かを言いたそうにしているが、口を覆う布がそれを許さない 「ああ違うよ。ナナリーの思ってる秘密とは別な方だから。」 男はナナリーが脅えている原因が分かるのか、そんなことを口にする …弱味を握られてる? 本当に、この男の狙いが俺じゃなくてルルさんだとしたら… 「だから最初からそう言ってるじゃないか」 「だったら、何で…」 なんだ、何かが可笑しい 俺は声に出してない 昔まだ俺がリボーンと会ったばかりの頃は、読心術でよく心を読まれた だけど今は違う。修行を積んで、相手がそれを使っても解らないようにすることができる なのに…どうして? 「さあ?ご想像に任せるよ」 …今はそんなことを考えてる場合じゃない。一刻も早くナナリーを助けるんだ。 尋問なんて、後でいくらでも「出来るかな?」 「…どうやら考えるだけ無駄なようだな」 「さあどうだろう?それよりさぁ、ほんとにいいの?」 「……」 聞くだけ無駄だ。炎を手に集めると、男に向かって突っ込んだ X−BURNERはナナリーを巻き込む可能性があるから使えない それに、リングの力を使わずに倒さなければならない 学園でリングの反応があったと敵に知れたら、俺がアッシュフォードにいるとバレて、生徒の皆を余計な危険にさらしてしまう 「おっと!危ないなあ」 …! 攻撃の軌道が読まれていたのだろう 男は俺とは真逆の方向へと飛んで回避した 「これで全力じゃないなんて怖いなぁ、ルルが欲しがるはずだよねえ」 厄介だ これじゃ攻撃が当たらない 「だけどさ、いいの?君が関わったらこの娘死んじゃうかもよ 京子ちゃんみたいに」 キョウコチャンミタイニ 「ルルは恨むだろうねえ。たった一人の妹を君に殺されたんだから」 『助けて…ツナくん…』 「ほんとはさぁ、お兄さんも思ってるんじゃないの?」 『ツナ。笹川がお前を助けたんだぞ』 「お前のせいで、京子は死んだって」 『!ツナくん危ない!!』 「被害者を気取ってルルに慰めてもらったんだ。いいよね〜、自分を責めれば周りが違うって言ってくれて。だから君はいつもそうしてるんだろ?」 「違う!!」 「違わないよ。だったらなんで骸を拒絶しない?本当にまだ京子ちゃんが好きならはっきりそう言えばいいじゃないか」 「何度も、俺は…!」 「誰も特別にしないだけだろ?骸自身がどうとは言わない。骸に嫌われたらと思うと怖いんだよねぇ。 そんな君でも好きって言ってくれる人がいると安心するから。その中途半端のせいで骸がどんなに傷ついてるかなんて考えもしないんだ」 「違う!俺はっ!!」 違う違う違う違う!! 「こんな男のせいで死んだなんて京子ちゃんはさぞかし無念だったろうね」 「や、め…」 「人殺し」 きゃあぁぁぁ!! いや…お兄ちゃん!! ツナ…くん…? 助けて…ツナくん… 「う…うわぁぁぁ!!」 「なんだよ大声だして…ッチ、気付かれた。」 京子の遺体は、運び出せなかった 笹川がお前を助けたんだぞ お前が気に病むことはないんだ 君はいつまで逃げてるの 僕が彼女を忘れさせてあげます 「じゃあね。」 「違う…俺は…そんなこと…」 男がナナリーを連れて遠ざかる 止めなくちゃ、止めなければ駄目なのに 連れて行かれるナナリーの姿が京子ちゃんと重なって、手を伸ばすことができなかった |