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「ツナさん!!」

大人しい少女というイメージがピッタリのナナリーが慌てた様子でSOS団にやって来た。
何故部員でもない俺がSOS団にいるかといえば、骸に無理矢理連れてこられたからだ。
当然のことだけど、ヒバリさんはいない。
いたらいたで怖いからいなくて良いんだけど…。

「あれ、クロームと遊んでるんじゃなかった?」

クロームも半強制的に骸にSOS団の部員として任命されていたが、今日はナナリーの家で遊ぶのだと言っていた。
骸もそれについてどうこう言っていなかったから、思った通りナナリーに何かする気は全く無いようだった。
というか、多分興味が無い。

「クロームさんが大変なんです!!」

クラブハウスからこの部室棟までは結構距離がある。
動揺して、呼吸が乱れているナナリーを落ち着かせよう冷蔵庫の中に入っているミネラルウォーターをコップに注ぎナナリーへと手渡した。

「飲んで。落ち着くから」
「は、はい」

ナナリーは水を飲み干すと、お礼を言ってコップを返す。
骸はその間一言も言葉を発さずにただじっとナナリーを見ていた。
その視線は俺達に向けるものとは全く違う。

「それで、何があったの?」
「く…クロームさんが…攫われました」

その言葉にコップは俺の手から離れ、床で割れた。
俺はその音をどこか遠くで聞いた気がした。








STAGE 15  突入








その後、俺はスポーツ同好会で思い思いに楽しんでいたお兄さんと山本を大急ぎで呼びに行った。
その間に独自風紀委員として風紀を守る為にトンファーを振るっているであろうヒバリさんを骸が携帯で呼びつけた
普段なら絶対に咬み殺されるが、ヒバリさんは戦えると喜んで来てくれた。
山本達を呼んだ後、担任の先生に連れて行かれた獄寺君を呼んだ。
獄寺君は直ぐに携帯に出てくれて、緊急事態だと伝えたら直ぐに来てくれた。
煙草の事で注意されていたらしく、電話の後ろで先生の怒鳴り声が聞こえたが…聞かなかったことにした。
犬と千種には未だに動揺しているナナリーを落ち着かせる為、傍にいてもらっている。

「これで揃ったね」

霧、雲、雨、嵐、晴。

六道骸、雲雀恭弥、山本武、獄寺隼人、笹川了平。

ボンゴレファミリー10代目の守護者で、今現在日本のアッシュフォード学園を拠点としている幹部5人。
俺をあわせて6人がSOS団に終結した。

「簡単な説明は聞いたと思うけど、クロームが攫われた」
「相手は誰なんですか!?」

直ぐに獄寺君が聞き返す。
獄寺君はボンゴレに喧嘩を売るなんて許さないと、さっきから熱くなっている。

「わからない。ナナリーの話だと、雷がどうとか…」
「マフィアなのか?」
「多分。匣って言ってたらしいから。でも、どこのマフィアかまでは…」

直ぐに情報は集まらない。

イタリアにいるならともかく、ここは日本で、今はブリタニアの植民地だから。

「そんなの関係無い。1つ1つ日本にあるアジトを破壊していけばいいだけだよ」
「そんな事をしたらクロームの命が危険です」
「僕には関係無い」
「雲雀恭弥…」
「止めんか、2人共!!」

戦える事を喜ぶヒバリさんと、態度には出さないけれどクロームをかなり心配している骸が対立するのをお兄さんが止めてくれる。

「敵の正体と目的がわからない今動くのは危険だけど、敵がボンゴレ殲滅を考えているならクローム救出は早いほうが良いと思う」
「同感です、10代目!!」
「そうだな」
「うむ、賛成だ」
「それが得策でしょうね」
「…」

ヒバリさんは何も言わなかったけど、皆が賛成してくれたから俺は続きを話す。

「敵は俺達がこの学園の生徒だって知ってる。もしかしたら今度は大人数で襲撃されるかもしれないし、
 敵と接触したナナリーをこのまま1人にするのは危険だと思う。学園待機組とクローム救出組にわけよう」
「それは極限に良い案だな!!」
「僕は救出組ね。まさか、待機組なんて言わないよね?」
「ぁ…はい」

ヒバリさんの迫力に押されて思わず頷く。
戦える事をかなり楽しみにしている今のヒバリさんを待機にしたら後が怖いしな…。

「10代目、俺も救出組が良いっす!!ボンゴレに喧嘩売った奴をダイナマイトで果たします!!」
「僕も救出組です。クロームは僕の部下ですからね」
「ツナ、俺も救出組が良いんだけど」
「俺も急救出組希望だ!!」
「ぇ、みんな救出組なのー!?」

そうだった。
皆じっとしてるのが苦手だったんだ。
あぁ、俺の馬鹿。
どうすんだよ。

「10代目っ!!」
「ツナ」
「沢田っ!!」
「ボンゴレ」

「う~…獄寺君と山本は待機組!!」
「10代目がそう仰るならわかりました。ですが、こいつと一緒は納得できません!!」
「ははっ。また俺と一緒だな。まぁ、仲良くしようぜ」
「ざけんなこの野球馬鹿!!」

獄寺君はしぶしぶ、山本は簡単に納得してくれたけど、この2人だけを待機組にするのって危険だよな…。
「お兄さんもここに残って2人の喧嘩を止めてください」
「わかった。極限にまかせろ!!」
「お願いします」
「うむ」

お兄さんがいてくれるなら獄寺君と山本が喧嘩しても大事には至らないだろう。
残る問題は…。

「骸、お前は救出組だけど、くれぐれもヒバリさんと揉めないでくれよ」
「それは難しいお願いですね」

クフクフといつもの調子で骸は笑う。
非常事態だってわかってるのか、こいつ。

「頼むから。ヒバリさんもお願いしますね」
「…」
「…骸、犬と千種に俺達が帰ってくるまでナナリーの事頼める?」
「言っておきましょう」

視線を合わせようとしないヒバリさんはいつものことだから仕方が無い。
犬と千種に任せておけばナナリーは平気だ。
何だかんだ言っても結構面倒見が良い2人だから。
それに、万が一敵が再度攻めて来ても今度は守護が3人も直ぐ傍にいる。
ナナリーは大丈夫だ。

「今から10分後に行動開始だ」

そういえば、ルルさんは?ナナリーについてて欲しいのに…。
携帯を取り出し、電話をかける。
呼び出し音の後聞こえてきたのは揚力の無い機械音声だった

「ボンゴレ?」
「…出ない」
「こんな時に誰に電話ですか?」
「ルルさんに」
「何でルルーシュ・ランペルージに電話する必要があるんですかっ!?」
「骸、うるさい」

ルルさんの名前が出るとすぐこれだ。
今までのマフィアの幹部の顔をしていた奴と同一人物だとはとても思えない。

「大体なんで君があんな男の携帯の番号知ってるんですか!?僕という者がありながら君はルルーシュ・ランペルージと・・・」
「友達だからだよ。それと、俺はナナリーがまだ動揺してるから傍にいて欲しいと思って電話しただけだから」
「あぁ、そうでしたか。僕とした事が早とちりでしたね」
「お前の場合はいつもだけどな」
「それも君を想うが故ですよ」
「…骸、俺は前に言ったよな。俺は誰かを特別視する事は無いって」
「えぇ。彼女が死んだその時から君は特別を作らないようにしている。それが出来ているか否かは別問題ですが」

痛い事を言う。
でも、俺にこういう事を言うのは骸がイラついている証拠だ。

「骸、俺は…」
「時間だよ」
「ヒバリさん…わかりました。獄寺君、山本、お兄さん、学園の方は頼みます」
「任せてください!!」
「ツナも頑張れよ」
「極限任せろ!!」
「じゃぁ俺達も行こう」

俺達はSOS団を後にした。





広い学園を門に向かって走る。
子供の頃の俺は、彼女にすら走る速さで負けていた。
今はもうそんなことは無い。
俺の記憶の中で色褪せることのない思い出となっている少女。
記憶の中の少女は永遠に少女のままで、俺は…。

『クフフ、クフフ、クフフのフ~』
「!?」
「…」
「おや?」

突然鳴り出したこの場にそぐわない奇妙で奇怪なメロディーに、思わず俺もヒバリさんも足を止めた。
この曲は聞いたことがある。
確か骸がヒバリさんの誕生日パーティで歌った自作ソング…。

『踊らせてあげますよ、霧のカルネヴァーレ』

空気を切る音がして、ヒバリさんが骸にトンファーを振るう。
骸は器用にそれを避ける。

『純粋で美しい世界になれば~』

「何ですか、いきなり」
「その着歌気持ち悪いから止めてって言ったでしょ」
「この曲の素晴らしさがわからないなんて、君も大した事ありませんね」
「死になよ」
「ちょ、2人共やめてくださいっ!!」

俺の言葉なんて全く聞いていない骸とヒバリさん。

『君が願い請うなら~』

「まったく、誰ですかね」

ヒバリさんの攻撃を紙一重でかわしながら、骸がポケットから携帯を取り出す。

「骸、ヒバリさん、いい加減に…」
「クローム」
「ぇ…」
「…」

骸の言葉に、俺とヒバリさんは動きを止めた。

「えぇ、わかりました。いますよ、彼も」

電話相手が何を言っているのかは聞こえない。
でも骸の様子からして良い話では無いことは確かだ。

「向かいますよ。ですから…」
「…」
「…」
「わかってます。では」

電話を切る音がして、骸が携帯をたたんだ。

「骸、今の誰だった?」
「クロームを攫った奴からです。ゲットーの並盛洞窟に来いと」
「並盛洞窟?そんなのあったっけ?」

全く覚えていない。

「あるよ」

間髪入れずにヒバリさんが言った。

「流石雲雀恭弥。並盛に対しての執着は人一倍ですね」
「煩いよ」
「えっと、じゃぁ案内を頼めますか、ヒバリさん」
「…わかった」

ヒバリさんはかなり不満そうだったけど一応は承諾してくれた。

「でも、何で敵は骸の携帯に電話してきたんだろう?」
「クロームの携帯には僕と犬と千種以外の番号は入ってませんからね。他にかけられなかったのでは?」
「あぁ、そういう奴らだったな、お前達って」

ボンゴレに所属しつつも、独自に動く骸とその部下。
それはヒバリさんにも言える事なんだけど。

骸は未だにマフィアを恨んでる。
マフィアの殲滅を考えて、世界を滅ぼそうとしてる。
骸の過去を考えればそれは仕方の無い事なんだろう。
でも、そんなことしてほしくない。

「行くよ」
「はい」
「えぇ」

ヒバリさんの言葉に気持ちを入れ替える。
今はクロームを助けることだけを考えるんだ。
俺達はまた走り出した。
そんな俺達を見ていた人物がいるなんて…その時は全く気付かなかった。











指定された洞窟に辿りつき、その大きさに驚く。
確かにここなら人気もないし、奴らが好んで使うのもわかる気がする。

「随分広そうな洞窟ですね。ヒバリさんはこの洞窟知ってるんですよね?」
「古代文明の遺跡って話があるけど、それを調べに行った調査隊が皆返ってきたらおかしくなってて調査は打ち切られたから
 本当の所はわからないよ。中は相当広くて、天然の迷路らしいけど」

その言葉に恐怖を感じる。
天然の迷路って法則が無いから難しいって昔テレビで見た気がする。

「俺、迷路とか苦手なんだよなぁ」
「大丈夫ですよ。僕がついてます」
「骸がいてもなぁ…」
「酷いですね。これでも迷路は得意なんですよ」

骸に苦手なものがあるほうが考えられないんだけど。
ヒバリさんもだけど。
あ~、ルルさんも無さそう。

「迷路なんて壁に手をつけて歩いてれば出られるよ。鬱陶しくなったら壊せばいい」
「ここ洞窟なんですけど!?」
「関係無いよ」
「また無茶苦茶言ってるし-!!」

洞窟を壊すなんていくらヒバリさんでも…やりそうだけど。

「何か言った?」
「ぃ、言ってません!!言ってませんからトンファーしまってください!!」
「…」

チラつかされたトンファーに怯えて謝れば、不満そうな顔をしながらもしまってくれた。
これからクロームを助けに行くのにボコボコにされたら困るし…

「はぁ…骸?どうしたんだ?」

何かを考えているような骸に声をかければ何でもないという返事が返ってくる。

「行きましょう」

骸の言葉で俺達は洞窟へと脚を踏み入れた。




暫く歩いたところでヒバリさんが足を止めて後ろを振り向いた。
骸も止まって後ろを振り向いたから、俺も同じようにする。

「いつまで隠れてるつもりなの?」
「クフフ。バレバレですよ」
「?」

2人が少し離れた岩陰に向かって言っている言葉の意味がわからなくて、首をかしげた。

「ふぅん。出てくるつもりはないんだ」
「なら、引きずり出してあげます」
「ぇ、骸!?」

骸の物騒な言葉を俺が止めようとしたけれど遅くて、岩陰から悲鳴が聞こえた。

「クフフ」
「ちょ、誰に何したんだよ!?」

俺は骸を睨むが、骸は相変わらず澄ましたままだ。

「安心してください。死んでませんから」
「殺しは駄目だっていつも言ってるだろっ!!」
「…」

甘いと骸の視線が言っている。
それでも俺は誰も殺したくない。

「…で、どうするの?」
「あぁ、そうでした」

骸が指を鳴らすとどこからとも無く大蛇が現われる。


「へ…蛇ーっ!!」
「畜生道のスキルは人を死に至らしめる生物の召還。忘れましたか?」
「いや、忘れてないけどさ…忘れたくても忘れられないし…」
「クフ」

骸は相変わらずニコニコと笑っている。
対する俺は嫌な過去を1つ思い出す。
骸と初めて会って、戦った時の事を。

「で、誰なんだよ」
「君もよく知ってる奴だよ」
「?」

骸の代わりにヒバリさんが答えてくれる。
俺が知りたいのは名前なんだけどな・・・。
そんなことを考えていたら蛇が俺達の方にゆっくりと戻ってくる。
口に咥えられている人が何か叫んでる。

「止めろ!離せ!!」
「ぇ、この声…」
「…」
「クフッ」

蛇がさらに近づき、暗い洞窟内でも顔が判別できるようになる。

「ルル…さん?な、何でここにいるんですか!?」

蛇に咥えられていたのはルルさんで、必死に蛇から逃げようとしているけどそれは無理そうだった。
骸の蛇だし。

「彼、僕達の後をつけてきたんですよ」
「学園からずっとね」
「ぜ…全然気付かなかった…」

本当に全く気付かなかった。
俺がクロームの事以外考えていなかったのか、ルルさんの気配の消し方が上手かったのか…。
いや、まさかルルさんが気配の消し方上手なわけないし。

「君はもう少し自分の立場を自覚をした方がいいと思いますよ」
「うっ…」

言葉に詰まる。
何も反論できない。

「僕は強い君と戦えれば何でも良い」
「君は本当に戦闘マニアですね!!少しは彼の心配をしたらどうなんですか!?」
「何で僕がそんな事しなくちゃいけないの?」
「大体君は…」
「えっと、何でルルさんはこんな所にいるんですか?しかも、学園からつけてきたって…」

いつもの口喧嘩をはじめた2人を無視してルルさんに尋ねる。

「血相を変えてどこかに走っていくから気になって…すまない」

ルルさんが本当に申し訳無さそうな顔をしている。
多分ルルさんは俺達の事を心配してくれたんだろう。
ルルさんのその気持ちが嬉しい。

「ここまで来たなら仕方ないです。ルルさんも一緒に行きましょう」
「何でですか!?僕は認めませんよ!!」

瞬時に骸が俺の前に現われた。
いつもの事だけど、骸のルルさんに関係する事の反応の速さは異常だと思う。

「骸、今までヒバリさんと喧嘩してたんじゃ…」
「それはそれ。これはこれです」

「はぁ…。こんな怪しげな所をルルさん1人で帰らせるわけにはいかないだろ」
「ルルーシュ・ランペルージなら大丈夫ですよ」

いやいや、危ないから。
その根拠の無い自信はどこから出てくるんだよ。

「お前、本当にルルさんのこと嫌いだよな」
「当然です」
「当たり前みたいに言うなよ」
「俺は…」
「ルルさんは何も心配しなくて平気ですから。ヒバリさんも良いですよね?」
「僕の足を引っ張らなければね」
「俺が護るから平気です」
「納得できません!!何で君がルルーシュ・ランペルージなんかを護るんですか!?護るなら僕にしてください!!」
「なんか…」

間髪いれずに骸が叫ぶ。
俺が骸を護る必要なんてどこにも無いんだけど…。
強いし。

「骸、ルルさんに失礼な事言うな」
「いいえ、この際だから言わせてもらいます!彼は…」
「骸、いい加減にしないと強制的に黙らせるからな」
「君はそんなにルルーシュ・ランペルージの事っ…ボンゴレ?」

ハイパーモードになった俺を見て骸が慌てる。
でももう…遅い。

「骸、頭を冷やせ」
「ぐっ…」







「六道はどうするんだ?」

地面に倒れている骸を眺めながらルルさんが言う。

「大して力を入れてないから気にしなくて平気です」

ニッコリと笑いながら言った。
ルルさんの顔が少し引きつってるのは気のせいだと思う。

「…」
「さぁ、ヒバリさんにルルさん。先に進みましょう」