「っ…京子ちゃ…」 小さく呟かれる名前に胸が痛む どうして気づかなかった? ツナは笹川のことだけを、お兄さんと呼んでいたのに 亡くなったという笹川の妹。 7年前―それはスザクと出会い、俺とナナリーが故郷に捨てられた年 その意味するものはただ一つ ツナの大切な人を殺したのは…こんなにもツナを苦しめるのは、ブリタニアだ。 「ツナ、俺は…」 ブリタニアを、ぶっ壊す STAGE 11 宣戦布告 優しく、そっと髪の毛を撫でる 段々と落ち着いてきたツナは顔を上げると控えめに俺の胸を押した 離して欲しいという意思表示だろう 本当は嫌だったが、そこは素直に腕を下ろした 「すみません…取り乱して…」 申し訳なさそうに俯くツナに胸が締め付けられる 「謝るな。頼って欲しいと前に言っただろ?」 だから気にするなと言ってもツナはすまなそうにするだけだった 「…戻りましょう。急に出てきちゃったから、みんな探してるかも」 「!だが…お前…!!」 心配をかけないよう、精一杯笑ったのだろう。今にも泣き出しそうなその笑顔はとても見ていられなかった そんな状態で戻れば、自分を押し殺してもっと無理をすることなど考えなくても分かる 「駄目だ!今はまだ」 「ボンゴレェェェ!!」 思わず掴みかけた腕は、割って入った六道によって宙に浮く 「…骸?」 「こんな人気の無い場所で何してるんですか!?それもこの男と2人きりなんて!!」 俺への文句をまくし立てる六道はピチピチのウエディングドレスを身に着けていた ドレスを着ている俺の言うことでは無いが、場違いにも程がある。 せめてサイズくらいは合わせるべきだろう。似合わないどころの騒ぎではない あまりに無神経で、怒りがふつふつと沸いてくる 「おい!六…」 「え?何、お前自分で着たの?」 「そうですよ!こうなったら僕が婿入りして沢田骸になります!!」 「はぁ!?」 怒鳴りつけようとした時だった あんなに元気の無かったツナが、少し楽しそうに笑ったのは 「何言ってんのお前!?しかもそれピチピチだし!!」 「君に合わせて作ったんですから仕方ないでしょう!!気になるのでしたら完璧に着こなした僕の姿を幻覚で見せ…」 「それはそれで嫌だから遠慮します」 「クフフ…照れ屋さんですねえ。」 「違うから!!」 六道と話しているツナは、迷惑そうにあしらいつつも顔には笑顔が戻っていた。 さっきまでの泣きそうな笑顔なんかとは、違う笑顔。 安心したように顔をほころばせた六道に、ただふざけてここに来たわけでは無いと気付いた 「僕のことより君こそなんて服着てるんですか!!可愛い!可愛すぎます!!襲われたいんですか!男は皆狼なんですよ!?」 「いや、そんなこと考えるのお前しかいないから」 「まさか誘ってるんですか!?」 「どうしたらそんなポジティブに考えられるんだよ!!」 六道の瞳は愛しいものを見るように柔らかくて、コイツは本当にツナを好きなのだと思い知らされる 無意識に拳を作った 俺だって、ツナのことを… 「とにかくその格好は危険すぎます。赤ずきんちゃんは狼に食べられる話なんですから!!」 「いや、そんなこと言われても…」 「こんなこともあろうかと僕が用意した衣装から2番目にいいものを持ってきてあります!あ、1番はこのドレスですよ。なのでこれに着替えてきてください!」 「…制服?」 「日本の黒曜という中学の制服です。年齢から言えば高校のものがいいのでしょうが、デザインが気に入ったのでね。クフ。」 「これほんとに日本の制服?なんか明らかにカスタマイズしてあるよね?制服なのにへそ出しって…」 「可愛いでしょう?」 「今の服のままでいいです」 「駄目です!このままだと僕が狼になっちゃいます!!」 「お前がかよ!」 六道骸 いつもいつも、ふざけた奴だと思っていた 本気なのか冗談なのか分からないアピールをして だけどそれは、もしかしたら全部ツナの… ツナの為、なのか…? 「とにかく着替えてきてください。そうしないなら誘ってると見なして部屋に連れこみ…」 「わかったよ!着替えるから!!」 「クフフ、着替え終わったら1番に見せて下さいね!」 「嫌だから。すみませんルルさん。部屋に戻ります」 「あ、ああ…」 そう言うとツナは振り返らずに寮へと駆けていく 姿が見えなくなった瞬間に、六道愛用の武器の先端が喉元に向けられた 「ボンゴレに何をした」 あまりに一瞬の出来事に、現状を理解出来たのは目の前が霧に覆われてからだった 武器は変わらず向けられたままで六道の姿だけが霧に包まれるたと思うと、六道は女装では無くいつもの制服に戻っていた 「…随分と着替えが早いんだな。手品か?」 「今質問しているのは僕ですよ」 殺気を隠すこと無く向けならが、六道は俺を睨み付ける チリッと喉元に痛みが走った 「答えろ。ボンゴレに何をした!?」 「…何も、と言ったら?」 喉元にあったはずの刃が、いつの間にか真横に刺さっていた かすったのか、頬から血が流れ出す 「よくもそんな戯れ言を…!!」 やはり、そうだ 六道はツナの様子に気付いて、だからわざとあんなふざけだ格好をして、ツナの気を紛らわしたんだ いつ殺されても可笑しくない状況なのに、やけに冷静に考える自分がいる いざとなったらギアスがあるから?違う。 「ククッ…ハハ…」 「何が可笑しい!」 思わず盛れた笑みが、六道の気に触ったようだ 「俺はお前の様には出来ない」 「はぐらかすな。僕が聞いてるのはそんなことではありませんよ」 「そうだな、聞け。教えてやる。 俺は、ツナが好きだ」 酷く不快そうに、六道は顔を歪めた 「今更何を…」 「俺だけ言わないのはフェアじゃないだろ」 そう、簡単なことだ 俺はツナが好きだ だから悲しんでる姿なんて見たくない だけどもし泣いているなら、涙を拭うのは俺でありたい 「フェアじゃない?笑わせる!君が僕と同等だとでも?」 「思ってるさ。俺はお前に負けてると思ったことなんて一度も無い」 俺は六道の様にツナの気を紛らわすことはできない だけど、俺には俺のやり方がある 「お前にツナは渡さない」 「…よくそんな口がきけますね。自分の立場を理解してるんですか?」 今、六道の武器は俺の真横にある コイツにかかれば、今すぐ俺を殺すなんて簡単なことだろう 「わかってるさ。お前が俺を殺せないことも。」 「随分余裕ですね。」 「俺を殺せばツナが悲しむぞ。」 「ハッ!自分が特別だとでも思ってるんですか?」 「思ってないさ。だが、ツナのことなら俺だって少しはわかっているつもりだ。ツナは知り合いが死んだら、それが特別な相手じゃなくても悲しむ。そうだろ?」 悔しそうに六道が顔を歪める 六道はツナを悲しませることは絶対にしない コイツは、六道は分かってるんだ ツナがまだ笹川の妹を想ってることを 本気で告白したら、拒絶されるということを だから、わざとふざけて接している 拒絶されたくないから ―傷つけたくないから 「お前もツナが好きなんだろ?」 だが、それではずっと変わらない ツナはずっと悲しいまま、過去に囚われたままになる 「そうですよ。僕はボンゴレを愛しています。君などよりも、ずっと前から」 俺は知ってる 自ら動かなければ、新しい道は切り開けないということを だから、俺は― 「時間は関係ないが…まあいい。どちらがツナの特別になれるか、お手並み拝見と行こうじゃないか」 お前の為に 世界を壊す |