クロームの持ってきたものを触りながら、ナナリーは問いかける
日本独特のものだというそれは、細長い棒の先に飾りがついていた。

「これは何ですか?」
「簪」
「かんざし?」
「着物とか浴衣を着た時に髪につける飾り」

クロームの言葉に、ナナリーは昔着せてもらった着物の事を思い出す。
7年前、スザクが兄を驚かそうと親戚のお古を貸してくれたことがあったのだ。

「着物は知ってます。日本の伝統的な服なんですよね」
「日本…」
「どうかしましたか?」
「ナナリーが日本って呼んだから。皆エリア11って呼ぶのに」
「日本は日本です」
「ナナリーはブリタニア人なのに…差別…とか無いの?」
「私、日本人のお友達もいるんですよ」
「友達…」
「国籍って関係無いと思います。私とクロームさんも友達ですし」
「友達…」
「はい」
「ありがとう」
「何でお礼を言うんですか?」

本当に不思議そうにナナリーは聞いた。

「私と友達になってくれたから。私、ナナリーと友達になれてよかったよ」
「私もクロームさんと友達になれて嬉しいです」

2人は幸せそうに微笑んだ





STAGE 14  さらわれたクローム






「ナナリーってルルーシュ・ランペルージの妹なんだよね?」
「そうですよ。私とお兄様は実の兄妹です」
「あんまり…似て無いね」

クロームの言葉にナナリーは少し驚いた。
自分と兄がそんなに似ていないとは、思っていなかったから。

「そう…ですか?」
「あんまり似てないと思う」
「私にはよくわからないです」

「でも、ルルーシュ・ランペルージはナナリーに優しいね」

そう言ったクロームの声はとても優しかった。

「えぇ、お兄様は昔から優しいんです。お兄様は私の全てなんですよ」

ナナリーは誇らしげに言った。
彼女にとって兄は、優しくて、大好きで、誰よりも大切な存在なのだ。
兄が同じように自分のことを大切に思ってくれていることもわかってる。

「全て…」
「はい。全てです」
「骸様と似てる」
「骸様?」
「うん、私とも…!?」
「クロームさん?」

突如クロームの身体に緊張が走った。
目の不自由なナナリーは何が起こっているのかわからず心配そうに彼女の名を呼ぶ
けれど、クロームは答えなかった。代わりに、ドアの方に向かって言う。

「誰?」
「クロームさん?どうしたんですか?」
「誰?」
「クロームさん」
「誰なの!?」

クロームがナナリーを庇うようにドアとの間に立つ。
ナナリーは何故彼女がそんなことをするのかわからなかった
目が不自由なナナリーは、他の感覚が人より敏感になっている。
だから自分達以外の者が近くにいれば、姿が見えずともわかるはずだった
なのにクロームは、まるで誰かがいるように叫んでいる。


突如、大きな音と共に風が舞い込む。

「女が2人…?」

ドアが開くと同時に、今まで無かった人の気配が現れた。
低い男の声に、ナナリーは驚く。

「ナナリー、危ないから私の後ろにいて」
「ですが…」
「危ないっ!」

何かがぶつかる金属音と、クロームの息を呑む声が響く

「こいつを防ぐとはたいしたもんだ。流石はボンゴレ10代目、霧の守護者の忠臣、クローム・髑髏」
「私を知ってるの?」
「どうやら間違いないようだ」
「誰なの?」
「さぁ、誰だろうなっ!!」
「誰であろうとも、ナナリーに近づけさせない!!」

クロームがなにかを地面に突くと、男が驚いたような声を上げた

「何が起こっているのですか?」
「大丈夫。ナナリーは何も心配しなくていい。でも、絶対にそこを動かないで」
「流石は六道骸の忠臣だな。だが、この程度の幻術じゃ俺は倒せないぜ」
「…」

ロクドウムクロという名に、ナナリーは兄が初めてクロームに会った時のことを思い出す。
あの時兄も、幻術がどうのと言っていなかっただろうか。
でも、幻術?

「誰であろうと、負けない」

クロームの三叉槍が風を切る。何も無かった場所から、生き物の気配がした

「これは…」
「これは幻術じゃない。本物の蛇。」
「へ…び…」

恐怖を感じたナナリーを安心させるようにクロームは優しく言った。

「大丈夫。この蛇は私達には何もしない。私達の敵に攻撃するだけ」
「…」
「行って」

(敵…?)
クロームの声が聞こえたかのように、蛇は地を這う音を立てて男のいる方へ向かっていく。

「仕方ない」
「匣っ!!」
「ボックス?」

鍵が開くような音の後に、蛇達の呻き声と電気の走るような音が響く。

「狐…」
「俺の匣の電気狐だ」
「…」

クロームは三叉槍を強く握った。

「クロームさん」
「大丈夫。私がナナリーを護るから」
「この状態で護るとはよく言えたものだな。そこの少女はよっぽどボンゴレにとって重要みたいだ」
「貴方には…関係ない」

クロームがさっき以上に緊張しているのが伝わってくる。
一体何が起こっているのか、ナナリーにわかるはずも無かった

「それは残念だ。だが、俺も時間が無い。決めさせてもらうぜ」
「させない」
「プラズマショット!!」

突然、土砂降りの雨が降るような音がした。

「っ…」
「うがぁっ!!」

男の悲鳴が聞こえ、何か…おそらく男が、倒れた。

「何をしたんですか?」
「電気狐を身体につけてたから雨を降らせて感電させたの。上手くできて良かった…」

感電という言葉に、ナナリーは焦る
相手がマフィアだとわかっていない彼女は、男のことが心配になった

「じゃぁ、この人はどうなるんですか?」
「ナナリー、私の前に出ちゃ駄目!」
「プラズマショット!!」

「えっ…」

それは一瞬の出来事だった
何かが当たる鈍い音がして…クロームの苦しそうな声が、聞こえる

「うっ…」
「クロームさん!?」

「に…・」

「クロームさんっ!!」

クロームは車椅子に覆いかぶさるようにしてナナリーを庇った
何か固い物が勢い良くぶつかり、クロームはその度に苦しそうな声を出す。

「に…げて…」

「クロームさん!!」

「ナナ…リ…にげ…」

クロームがうずくまったのがわかり手を伸ばす。
だが、車椅子に乗っているせいで届かない。

「やってくれたな。まさか雨を使って感電させるなんて思ってもみなかったぜ」
「何で…どうしてこんな事するんですか!?」
「勿論ボンゴレの関係者だからだ」
「ボンゴレ?」

男が直ぐ傍に来たのがわかる。
言葉の意味はわからないが、クロームを護ろうと届かない手を必死に伸ばした

「あんたも関係者なんだろ?一緒に来てもらおう」
「だ…め…」
「クロームさん!!」
「まだ意識があったのか。だが止めときな。今ので骨の2、3本はいっちまったはずだぜ」
「…っ!そんな…」
「それ、でも…護る…」

クロームがナナリーを庇うように立つ。

「たいそうな忠誠心だな」
「クロームさんっ!!」
「逃げて…骸、さま…と、ボス…に」
「出来ません!!」
「SOS団…いる…」
「クロームさん!」
「行って…ナナ、リー…」
「っ…」
「おねが…ナナリー…」
「っ…はい」

男が何を言っているのか、ナナリーにはわからなかった。
クロームの傍にいたかった。
だが、自分がいても足手まといにしかならないこともよくわかっていた。

だから彼女はSOS団へと急いだ。
そこに行けばきっと、クロームを助けてらえるから。